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ひよっこ神様異世界謳歌記  作者: 綾織 茅
羨ましきかな兄弟愛
82/310

羨ましきかな兄弟愛―1






◇◆◇◆




 慣れない所で眠れない……なんてことはなく、ぐっすりスヤスヤ眠って、起きたら薫くんのお師匠さんの桐生さんの美味しいご飯。最高です。


 子供に見えることをいいことに、ゆるふわ卵のオムライスにケチャップで星を書いてもらうという暴挙に打って出てみた柳雅、十六歳。ここで食を楽しむことに邁進(まいしん)しております。ちなみに、某お屋敷の皆には年齢詐称(さしょう)だとよくどころか最近毎日最低一回は言われますが、決してそんなことをしでかした覚えはございませんのであしからず。

 


「いい食べっぷりとはこのことだな」

「まだたべれゆよ?」

「口の中に入れてる時は喋るな」

「あい」



 桐生さんがカウンターに(ひじ)をついてこっちを見てくる。


 桐生さんは料理人さんじゃなかったらおしゃれなバーの店長さんやってそうな雰囲気がある。今も黒いサロンを白いワイシャツに合わせてバッチリ着こなしているんだもの。いわゆるワイルド? ダンディー? よく分かんないけど、そんな感じ。


 そんでもって、ここでも料理長さんは絶大な権力を誇っていた。かっこわら。



 そうそう。東では私専用の特等席ならぬ特別椅子が作られてたけど、帝様の思いつきで突然やってくることになった南にその椅子はない。


 必然的にお部屋で食事をとることになるかと思いきや、そんなことはなく。



「……あー」

「……」



 贅沢(ぜいたく)にも南のNo.2……凛さんのお膝が私の椅子だ。



「ちぇ~。俺達が全部お世話するって決めてたのに」

「葵、なんであの時グー出すんだよー」

「そんなこと言ったって、茜だってグー出してたじゃん」

「葵がグー出しそうな顔してたから」

「え? 俺のせいってわけ?」

「……」

「……」



 おう? なんか向かいに座る葵さんと茜さんから険悪ムード(ただよ)ってきてる?



「けんかはダメよ?」

「……喧嘩なんかしてないよ?」

「うん、大丈夫。心配いらないからね」



 そうは言っても、なんだかギクシャクしてるのが丸分かりなんですけど。


 そりゃあ、二人で勝つためには二人とも同じ出し方をしなくちゃいけないだろうけど。


 どっちかが勝てばそれで良かったんじゃないのかなぁ?





 南のお屋敷滞在中の私の部屋である凛さんのお部屋で、私と凛さん、帝様と橘さんが集まって食後のお茶を飲みながら寛ぐことになった。



 さてはて。一体どうしたものか。


 葵さんと茜さんの二人の兄弟喧嘩は単なる口喧嘩では終わらなかった。桐生さん達は二人のことは放っておけって言うけど……ギクシャクしてるのを見るのは何か嫌だ。



「いーしやーきぃーもー」



 ……うーん困った困った。



「おいもー」



 どうしようかな?



「おいもはぁーいかがですか?」



 えぇい、気が散る!



 障子をスパーンと勢いよく開け



「おじちゃまー! ひとつくださーい!」



 ……橘さん、えーって顔しないでよ。


 美味しいでしょ? お芋。



 部屋から出てすぐの縁側をそのまま下りて、門へ向かう道をまっすぐ走った。



「こら、お待ちなさい」



 橘さんに呼び止められ、立ち止まって振り返った。



 お金なら、ちゃんと綾芽達からお小遣いとしてもらってるよ? 何かが急に起きても大丈夫なように、胸元のポッケに千円札を入れてる。これが一回部屋に戻ってからだと焼き芋売りのおじさんはあっという間に行ってしまっていただろう。


 こうしておこうと思った時の私、偉い!



 ……あ、そっか。



「たちばなしゃんもたべる?」

「いえ、私は……あっ、こらっ!」



 違うなら私は行くよ。


 だって、早く行かなきゃ焼き芋売りのおじちゃん行っちゃうんだもん。



「焼き芋とな」



 今度は興味をひかれたらしき帝様の声。


 門の外まであと少しという位置で帝様に足を止められた。



「……ん。おいしぃーよ」

「橘。あれを」

「いけません。何が入っているか分からないものを陛下の口に入れるなど」

「芋を焼いているだけであろう? 食べてみたい」

「たべたいなぁ」



 帝様と私の両方向からジッと見つめられる橘さん。


 深い溜息をついて私の横を通り、門の外へ出て行った。



 私と帝様。ご満悦です。




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