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ひよっこ神様異世界謳歌記  作者: 綾織 茅
長いものには巻かれるべし
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長いものには巻かれるべし―8







※ 夏生 side ※



 ……何をやってんだ、あのバカは。



 その間にも増えていく、SNSのいいねとリツイート。


 当然のように見回り中のはずの綾芽のアイコンが早くも表示されている。他にも稽古中のはずの奴らのアイコンまでポコポコと増えていく。


 黙って見ていると、とうとうスクロールしなければならなくなった時、プツリと自分の中の何かが弾け飛んだ。



「……てめぇら、携帯見てる暇があんなら見回り行かすぞこの野郎ぉどもっ!!」



 障子を開け放ち、道場の方へと声を張り上げた。



 ピコン、とまた一つ音が鳴る。


 見ると、俺の部屋で茶を(すす)る巳鶴さんのものだった。




「……」

「どうせ凛が何の前触れもなく着せ替えたんでしょう。彼女はただただされるがままにしていた結果だと思いますよ」

「……はぁ」



 そうだろうが、そうじゃなく。


 あぁ、今日もまた胃が痛い。



「それよりも、勅命とはいえよく許可しましたね」

「ん? ……まぁな。なんだかんだ言ってあいつはよくやってる。それにどんな状況下になるか分からん以上、陛下とあいつをセットにしておいた方がいい」

「確かに。あの子に何かあればお父上が出てこられるでしょうし、人外の方々とも繋がりができたようですからいざとなれば機転を利かせてくれるでしょう」

「まぁ、保険だからそういう状況がないに越したことはないがな」

「……ふふ」

「なんだ?」

「いえ、あなたも随分と丸くなったと思って」

「は?」

「さて、私は離れに戻りますね」

「あ、ちょっ、おい!」



 巳鶴さんはさっさと仕事場である離れに行ってしまった。



 俺が丸くなった?


 今の会話でどこにそんな要素があったんだよ。



 さらに増えていく、いいねとリツイート。


 しばし画面を見つめた後、そっと指を伸ばした。




 やりかけていた書類仕事に戻るために画面を裏返し……



「おい」

「うおっ!」



 背後というよりももはや息がかかりそうな位置でこえをかけられ、思わず体がビクッとなった。


 断じてびびったんじゃない。驚いただけだ。



「先程見ていた写真を我にも」

「……頼むから気配を消して背後に立たんでくれ」

「消したつもりはない。早くしろ」

「ったく。直接撮りに行きゃいい話だろうが」

「あれは我がいると途端に不機嫌になる」

「自覚はあんだな。……っと、今更だが敬語に直した方がいいか?」

「別に構わん。言葉など、意思疎通が図れれば問題ない」

「ならこのままいかせてもらうぜ。……ほらよ」

「うむ。感謝する」



 打ち出してやった写真を大事そうに懐にしまい込む雅の父親の姿を見ていると、なんだか妙に物悲しくなってくる。



 娘にあんな態度取られれば死ぬとかなんとか誰かが言ってやがったな。


 子持ちの小林か? いや、育休申請出した藤沢だな。


 今にも死んじまいそうな顔して言うもんだから、直属の上司の海斗まで加勢して申請押し通しやがった。



「おい」

「今度はなんだ?」



 チビの写真ならそんなに数持っちゃいねぇぞ?


 その手の話なら、世話係の綾芽か、巳鶴さんに頼んでくれ。



「龍脈を探せ」

「は? ……おい、ちょっ、待て!」



 意味深な言葉を吐いた後、すぐに消えちまった。



 龍脈? 龍脈って、あの龍脈だよな?


 それを探せ?



「おい、誰かいるか?」

「ここに」



 隠密の一人が俺の言葉にすぐ呼応した。



「チビの父親が龍脈を探せだとさ。手分けして新たな龍脈が現れていないか、すでに分かっている龍脈に異変が起きてないか探れ。人数が足りなきゃ他のところにも応援を出してもらうよう要請する」

「はっ」



 とりあえずは東だけで探ってみるか。


 だがなぁ、これで人間の言うことなら根拠を提示されるまで信用ならねぇが、神さんの言葉とあっちゃ……なにかあるのは間違いねぇだろう。



 ……はぁ。


 巳鶴さんに胃薬の補充を頼むっきゃねぇな。



※ 夏生 side end ※




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