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ひよっこ神様異世界謳歌記  作者: 綾織 茅
怒るのも仕事のうち
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怒るのも仕事のうち―3

 


 急げ急げ急げーっ!!


 この変な人のせいで、思わぬ時間を食ってしまった。



 私の空いている右手は、やや前向き加減になっても離そうとしない変人さんが握っている。


 大人しくついてきてくれて助かってるよ。



「つ、つい……たー」

「一人きりで出かける散歩は楽しかったか?」

「……た、ただいまもどりました」



 門の所にいた門番さん達に声をかけ、屋敷の玄関の戸を開けた瞬間、私の声は尻すぼみになった。


 玄関の上がりかまちに腰かけ、足組みしている夏生さん。



 うわぁい。引きつり笑顔いただきましたー。



「で? どこをほっつき歩いてたかはその袋を見れば分かる」

「あい」



 えぇい! 私が悪かったんだ。


 おとがめはつつしんで受けようではないか!


 さぁ、焼くなり煮るなりしてくれぇい!



 ……やっぱり、できればお説教三十分コースでお願いします。



 夏生さんは変人さんをチラリと見て、あごをクイッとさせた。



 訳すと、誰だ、こいつは。ということですね?


 了解です。



 てのひらで変人さんを指し示し、お口は紹介の準備万端に開いたのに



「……」



 で、結局のところ、誰なんだっけ?


 変人さんです?


 そんな紹介したら、間違いなく夏生さんから絶対零度の眼差しを頂けちゃうかもしれない。


 ……ブルルルルッ あっ、悪寒が。



「この者はお前が世話になっている人間か?」

「え? あい。そーでしゅ」



 変人さんは眉を器用に片眉だけ上にあげ私に尋ねた後、ズイッと私の前に出た。



「我が娘が世話になった。連れ帰る故、挨拶に参った」

「は? 娘?」



 ちょっと待て。


 いかん。リハーサルというものをすべきだった。



 違う。 違うんだよ、夏生さん!


 この人、お父さんじゃないから! 絶対違うから!



 だからそんな冷ややかな目線を送るのはやめてください。


 ガラスのハートなんだよ、私。粉々になっちゃうんだよ。


 ……誰がだって? とか突っ込んだヤツ。後で倉庫裏に集合しようか。話がある。



 夏生さんはブルブルと首を振る私を半眼で見て、視線を変人さんに移した。



「違ぇって言ってるぞ?」

「うむ。久しぶりの再会に照れておるのだろう」



 どこからそんな妄想生まれたよ?!



 ……あーやーめー!! あやめさーん!!


 早く帰ってきてー。


 というか、この状況、誰でもいいから助けてー!!



「ちび、帰ってきたの?」

「かおるおにーちゃ!!」



 そんな願いが多少なりとも通じたのか、薫くんが奥からひょっこりと出てきた。


 目にも止まらぬ早さ…には程遠いけど、それなりの早さで靴を脱ぎ捨て、びゅんっと薫くんの背後に回る私。


 ぎゅっと薫くんの服を掴み、そろーっと顔だけ出す私を、薫くんは珍妙な生き物を見るような目で見下ろしてきた。



「なに? これ」

「知らん」



 夏生さん! ちゃんと状況説明お願いします! 


 超面倒くさいって顔に出てる!!








 つ、疲れた。


 なんとかここに至る経緯を夏生さんと薫くんに説明し終えた。



「それで、結局あんたは誰なの?」



 そうなのだ。そこなのだよ。


 私達が一番に確認すべき点は。


 しかし、問うても帰ってくるのは、私のパパさんだという頓珍漢な答えのみ。



 これはもう警察の御厄介ではなくて、精神科のお医者様のところへ連れて行った方がいいのかしらん。



「ただいま戻りましたよって……どないしはったん?」

「誰だ? こいつ」



 いつまでも玄関先で話していたものだから、仕事から帰ってきた綾芽と海斗さんにバッタリと鉢合わせた。


 二人も二人で、変人さんを除いた私達三人が何とも言えない顔で出迎えたのを見て、何かを悟ったらしい。



「とりあえず、中入りましょ。薫、お茶くれへん?」

「分かったよ。海斗は?」

「俺もよろしくー」

「了解」



 薫くんは助かったとばかりに引き受け、厨房へ引っ込んでいった。



「で? 君はなんでコンビニの袋なんて持っとるん?」

「……あ」

「ん?」



 いやん。怖ーい。


 ……はい、後でしっかり怒られます。


 結局綾芽に怒られるのかぁ。ハァ。



 んん? あれ?  


 これって私、骨折り損のくたびれもうけ……いやいやむしろ、くたびれ感増す材料自ら背負ってきた?


 ……今日の占い一位だったのに、ついてないわー。




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