長いものには巻かれるべしー6
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※?? side※
「……」
「……」
「……」
「……?」
ジーッと見つめられること数十秒。
カクンと首を傾げると、向こうも鏡のように同じように首を傾げる。その瞳は大きくどんぐり眼で、少しの混じりも許さないというような黒曜の輝きを持つソレに映るのは自分。少しも目をそらそうとせず、ただただ見つめてくるだけ。
……か、可愛い!神っていうより、これは天使だわ!
茜から連絡が来た時は夏生さんが許可を出すはずないって思ってたけど。だって、あの夏生さんどころか、綾芽や海斗、薫達上位の人間だってこの子に甘いっていうじゃない。
でもまぁ、勅命なら仕方ないわよねぇ。
んっふふふ。
「……おねぇちゃま? ……おにいちゃま?」
「……」
誰にやってもらったのか、クルクルお団子頭が左右に揺れている。
これはもう、あれよね!?
机に手をついて立ち上がり、クルリと踵を返した。
「あっ」
「……」
確か、部屋にまだ端切れが残ってたはず。こんな時のためにってとっておいて正解だったわ。
「……おこっちゃった?」
「大丈夫大丈夫。あの人、いつもあぁだから」
「きっと何か思うところでもあったんだよ」
出てきた部屋からこんな声が聞こえてきたけど、葵達が上手くフォロー入れててくれるから大丈夫よね。
怒るなんてこと、あるはずないのに、なんでそんなこと言うのかしら?
そもそも、最近鳳さんが忙しくてなかなか一緒に例の場所行けないから寂しかったのよねぇ。西の状況を考えれば仕方ないといえば仕方ないのかもしれないけど。
でもまぁ、いいわ。似たような存在が向こうからやって来てくれたんだもの。せっかくの趣味友を奪った西にはいつかそれなりの報復をって誓ってるし。
そうだ!
この際だから溜めてたやつも全部使っちゃおうかしら。こんな機会がそう何度もあると思えないものね。
……うーん、腕がなるわぁ!!
「そこの回廊を凛さんが無表情で鼻歌混じりにスキップしてたんだが」
「おい、誰かあの人に人間には表情ってもんがあることをいい加減教えてこいよ」
「とっくに教えとるわ」
「なんで変わんねぇんだよ」
「……凛さんだから、だろ」
「これでも一人十回一日ノルマこなしとーけんね。ばってん変わらんとはもう仕方なか」
「無駄骨じゃねぇか」
※?? side end※