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ひよっこ神様異世界謳歌記  作者: 綾織 茅
思わぬ時期の里帰り
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思わぬ時期の里帰り―3

 



 久しぶりに家族で囲む食卓。足すことアノ人とオネエさん。


 アノ人は本当はいつも食卓にはいたそうだけど、私には見えていなかったからノーカンだ。



「それじゃあ、雅、お誕生日おめでとう」

「ありがとー!」



 透おじさんの乾杯の合図で私達はグラスを合わせた。


 私が持ってるプラスチックコップの中身はもちろんファ○タのグレープジュースです。


 ちゃんと綾芽達とのルール守ってる私。お酒は二度と飲みません!



「それにしても母娘ねぇ。貴女の小さい頃にそっくり」

「そんなに似てるの? ちょっと興味あるわぁ」

「あら。ウフフ。それなら小さい頃のアルバム持ってきますね?」

「ちょっ、お母さん!? いいから!」



 席を立つおばあちゃんに、お母さんは手を伸ばした。


 けれど、それをひらりとかわし、おばあちゃんはふすまの向こうに消えていく。



 私を膝の上に座らせているからそれを追えないお母さんは、とても変な顔をしてアノ人の方を見た。


 気づいているだろうにフイッとそらされる視線。


 お母さんの表情はしばらく百面相だった。



「雅。こちらの蛇神様とお友達にならせていただいたって?」

「あい。ねー」

「ねー」



 ひいおばあちゃんが一瞬カッと目を見開いた気がするけど……き、気のせいだもんねー。



「蛇神様のお心変わりに感謝して、末永く親しくさせていただきなさい。親しい仲にも礼儀ありですよ。くれぐれも礼を失することがないように」

「はいっ」



 ふぃ~。

 ひいおばあちゃんってば、怖い~。



「お母さん、あれー、ハンバーグ」

「……あっ、うん」



 奥の方にあったハンバーグを指差して、目の前の皿に移してもらった。


 おばあちゃん特製のデミグラスソースがかかっていて、お店で食べるのとかよりも私はこのソースで食べる方が好き。


 切り分けると、中から香ばしい匂いと共にジュワッと肉汁が染み出してくる。


 思わず出てくる唾を飲み込み、ソースがかかった部分を一口。



 ……し~あ~わ~せ~。


 今日も今日とてウマウマです!



「そうだ。雅に誕生日プレゼントを渡さないといけないね」

「プレゼント!」



 プレゼント用意してくれてたの!?


 おじいちゃん、ありがとう! 大好きっ!



「これなんだが、気に入ってくれると嬉しいな」

「デジカメ?」

「あぁ。雅、いいかい? お前のお父上や蛇神様、そしてお前以外は皆人間だ。つまり、年齢順を考えずとも当然お前よりも先に逝ってしまう。だから、そのデジカメでお前が残しておきたいものを残しなさい」

「……」



 そっか。……そう、なのか。


 神様の娘ってことは、ソウイウコトなんだ。



「……父さん。それは後で渡そうって言っただろう?」

「えっ! 後でって、今が後じゃないのかい?」

「どう考えても空気を悪くしてるだろう?」

「えっ、あっ! あぁ、雅! すまなかったね!! 早く渡してあげたくって、つい!」



 透おじちゃんが、そしてみんながおじいちゃんにジトリと恨めしい視線を向ける。


 それを見て、おじいちゃんはさらに顔を青ざめさせた。



 おじいちゃんから貰ったデジカメを見下ろし、電源を入れる。


 使い方は使いながら覚えることにして。



「おばーちゃん、はやくもどってきてー」



 襖を開けて、まだアルバムを探しているんだろうどこかの部屋にいるおばあちゃんに聞こえるように叫んだ。



「はいはーい。お待たせしましたー」



 戻ってきたおばあちゃんの手を引っ張って元の位置に座らせる。



 よし、みんな揃った。



「雅?」



「はい、みんなこっちむいてー」



 はい、オッケーです。


 えぇっと、シャッターボタンは……ここだ!



「いちまいめー」



 記念すべき写真一枚目は大好きな家族の写真。


 これは最高の誕生日プレゼントだね!



「雅ちゃん、それ貸してちょーだい」

「え?」

「それであなたはこっち」

「うわっ」



 オネエさんがデジカメを私の手の中から攫っていき、もう片方の手で私を抱き上げてお母さんの膝に乗せた。



「家族水入らずの写真に自分が写ってないんじゃ意味ないでしょ? えっと、ここよね? この丸いの。これを押せばいいんでしょう?」

「うん! そう!」



 やったぁ! ありがとう、オネエさん!



 オネエさんに撮ってもらった写真。


 みんな笑顔で写ってる。……アノ人以外。


 折角写るなら笑ってよ! もう!!



「雅、その……」

「おじーちゃん、ありがとう! とってもうれしい!!」

「そ、そうかい? 良かった」



 これならきっと、ずっと先にたとえ一人ぼっちになっても、この写真を見れば大丈夫。


 私の頭を、お母さんがそっと撫でてくれた。




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