イタズラよりお菓子―8
あわわわわ。
呑気に気絶なんかしちゃってるうちに、なんだかすごい所に来ちゃったみたい。
「さぁさ。たーんとお食べ」
「ふおぉぉ~!」
柔らかい布団に転がされていた私が起きてすぐ目にしたのは、美人なオネエさん?のドアップのお顔でした。
だってどさくさ紛れに触ってみたお胸なかったもの。
あっても私、女の子だからセーフだもーん。
しかも添い寝つき。
そんなオネエさんに抱っこされ、私は今、大広間で歓待を受けている。
うむ、よきに計らってくれたまえ。
……じゃなくてっ!
「しらないひとからたべものもらっちゃダメなのよ」
「あら〜。そうなの?なら大丈夫ね。私、あなたのこと、これっくらいの時から知ってるもの」
いやいやいや、嘘だね!
だってそんな豆粒みたいなの、赤ちゃんだってそれの何十倍……かどうかは分かんないけど、あるもんね!
「わたしはしらないからダメ」
「まぁ!母親に似て頭固いのねぇ。もっと柔軟に生きなきゃ」
柔軟に生きてる結果がアノ人なら私は頭が固くていい。
それに、だ。
アノ人もお母さんも知っていて、人間に化けれる大蛇に主人と呼ばれるこの人はやっぱり……。
「せーっかく私好みの外見になるまで待ったってのに、なーんでまたこんなちみっちゃい姿になっちゃったんだか」
「やーめーてー」
後ろから両頬を指でプニプニ。
そしてやっぱり例の神様か!
幼女趣味は神様的にアウトです。
だから即刻お屋敷に戻してー!……ください。
うーん。いよいよもってアノ人くらいしか助けに来れそうな人がいなくなったわけですが。
困ったものです。
私のお腹の虫ちゃんは!
グギュルルゥウォォン
「……今の音……」
「ちがうよ?わたしじゃないよ?」
目の前に餌をぶら下げられてる気分だけど、食べちゃダメ。
ヨモツヘグイって言う恐ろしい例もあることだしね。
食べたら最後、ここから二度と出れませんなんてオチ、絶対ヤダ!!
「遠慮することないのよ?ほら、美味しそうでしょ?」
「……いらないっ」
「どうして?ほら、毒なんて入ってないわよぅ?」
「…………い、いらないよっ!」
「そぉお?すっごく美味しいのに。ほら、あー……んー!美味しいわぁ」
オネエさんはたくさんある料理の中で手近にある魚の煮付けを自分の口に運んで見せてくる。
む、むきーっ!!
いいもんね!薫くんのご飯の方が絶対美味しいから!
「なかなか強情ね。今の姿じゃ食指が動かないんだけど、このまま逃げ切られるのも癪なのよねぇ」
「オネエさん、わたしおんなのこよ?おとこのこじゃないの。だからバイバイしたいな」
「あら、なんで?私、こんな形と口調してるけど、好きなのは女の子よ。それに、あなたは私のものってあなたが生まれた時から決まってるのに」
「き、きまってない……とおもいます。だって、わたしはわたしのものだもの」
「……母娘揃って神に意見するなんていい度胸だこと」
ゾワッと、背筋を冷たいものがつたっていく。
オネエさんが先程までの陽気で明るい雰囲気とは真逆のソレを醸し出し始め、私は無意識のうちに両腕を抱えていた。