イタズラよりお菓子―7
ここはどこだろう?
目覚めた私は座敷牢みたいなところに入れられていた。
幸いにも手足は縛られてない。
……怖くない。怖くなんかないよ?
立ち上がって鉄格子を掴んで揺らしてみたけれど、当然ビクともしない。
「……」
選択肢その一。
みんなが助けに来てくれるまで大人しく待つ。
そもそも私にすらここがどこか分からないから却下。
選択肢その二。
自力でここから出る。
後で色んな方面からすっごく怒られるかもしれないから、とりあえず保留。
選択肢その三。
アノ人を呼ぶ。
一番選びたくない選択肢だけど、背に腹はかえられない。でもやっぱり保留。
どうしよう。選択肢が不穏か絶対イヤなのしか残ってない。
私がウンウン唸って考えていると、傍にあった階段を誰かが下りてくる音がした。
「あら、本当に捕まえられたのね。私、あのお屋敷に何故か入れなくなったからどうしようかと思ってしまったわ」
「せりしゃん」
現れたのは自称・綾芽の婚約者様だった。
「最近綾芽さんがちっとも私に会いに来てくださらなくなったのは貴女がいたからなのね。ずるいわ?綾芽さんを一人占めだなんて。だから、私、考えたのよ。貴女がここにいればいいじゃないって」
「あやめはこないよ?」
「いいえ。来るわ?」
何かしらの根拠があるのか、瀬里さんは自信満々に応えた。
私は綾芽を呼び出すための人質ってわけですか。
むぅ。綾芽、来るな来るな来るな~。
届くか分からない念を必死に送ってみた。
自称・私のパパさんよ。
たぶん聞こえてるだろうし、居場所も知ってると思うけど、綾芽には言わないで!
そんでもって助けてください! お願いします!!
「お嬢様、綾芽殿が参られました」
「あら! うふふ。やっぱり来てくださったのね」
……アノ人を信用した私が馬鹿だった。
階段の上から声をかけられ、瀬里さんは頬に手を当てながら上へ戻って行った。
代わりに私をここまで連れてきてくれおったおじさんが下りてくる。
「……おじしゃん、きらいよ」
「うん。ごめんなぁ?」
「あやまったってゆるしません! おなかすいたの。おかし、かえして」
気絶する前まで持っていたお菓子入りの袋がなくなっている。
あれは! 私の! ものだ!
正当なる返還要求に応えてもらうことを所望いたします。
「あー、それなんだけどなぁ」
「なに? たべたか!? たべたのか!?」
先程よりも鬼気迫る私の様子に、おじさんは若干引いている。
「い、いや、食べてなんかないよ! ちょっとこれからまた移動しなくちゃならないんだ。だから、その後に渡すよ」
「いどう? あやめのとこいくの?」
「……いや。俺の主人のところさ」
「しゅじん? せりしゃん?」
「いや。君のお父上もよく知ってる人のところだよ」
「えー?」
お母さん、だといいなぁ。
と、思ったけど、それはないってことはすぐに分かった。
「へ、へへへ蛇ぃぃぃぃっ!!」
お母さんも私も大の蛇嫌い。
おじさんの姿が大きな蛇に変わった時、これはないなと理解。
鉄格子を上手くすり抜け、身体に巻きつかれた時にはもう。
全身が鳥肌で覆われ、掻きむしりたくなってくる。
とりあえず一言。
良く知らない人からお菓子はもらいません!
同じく、知らない人外からもです!!