表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ひよっこ神様異世界謳歌記  作者: 綾織 茅
○○喧嘩は犬も食わない
40/310

○○喧嘩は犬も食わない―2

 



「……月見?」

「あい」



 買い出しに行っていた薫くんの帰宅を待って、綾芽と海斗さんと一緒にご報告。


 やっぱり、うちの料理長だからね。


 お団子を作ったり、里芋とかを準備しなきゃいけない以上協力してもらわねば。



 買ってきた材料を大きな業務用冷蔵庫の中に入れつつ、薫くんは話を聞いてくれている。



「月見、ねぇ」



 あんまり気乗りしなさそうに見えて、さりげなく薫くんは調理台の下の小麦粉の量をチェックしてくれていた。


 さすが“おにいちゃま”だ。



「作るにしても、関東風? 関西風? それともどこの?」

「えっと?」



 そんなに種類があるの?


 絵とかではみんな白くてまん丸よね?



「色んな種類があった方がおもろいし、色んな味が楽しめるんやないの?」

「ぜんぶで!」



 クフフ。今からよだれがジュルッと出そう。


 あわよくば、試食段階でつまみ食いなんかできちゃったりして!



 上から複数の生温かい視線を感じるけど、気にしない気にしない。



「団子だけってわけにもいかないから別のも作るけど、酒は大量にいりそうだね」

「おぅ! 美味いので頼むぜ!」

「海斗、僕が出してるので美味くない酒なんかあるわけないでしょ」

「選りすぐりのってことだ」

「君達の酒を買うにも経費ってもんがあるんだからね? 上等な酒で美味いものが飲みたいならもっと働いて、上に必要経費をもっと出させるようにして」

「わ、分かってらぁ」



 おっと。海斗さんに結構な角度で切り込みが入りましたね。


 それでも反論する海斗さんはさすがなかなかの手練れです。


 ……若干涙が……汗ですか?



「小麦粉を使うには圧倒的に量が足りないから、どうせなら新しく白玉粉を買って、そっちで作るよ。……もう一回買い出し行かなきゃ」



 買い出し、とな?



「わたし、おつかい、いく」

「は?」



 いや、は?じゃなくって。


 おつかい、私行くよ。


 言い出しっぺだしね。



「無理でしょ。迷子になるのが目に見えてる」

「そんなことないよー? ちゃんとできる」

「その根拠のない自信は一体どこから……なに?」



 肘で合図を送り合った綾芽と海斗さん、それからそれに巻き込まれた薫くん。


 離れたところで三人、顔を寄せ合って密談をし始めた。



「初めてのおつかいっちゅうヤツやろ。えぇやん、させたっても」

「なに言ってんのさ。人数分の白玉粉なんてチビ一人でなんて無理でしょ」

「配達にしてもらえばいいんじゃね?」

「迷子になったりしたらどうするのさ」

「そこはほら……な?」

「それでえぇやろ?」

「……はぁ。まったく」



 密談と言っても名ばかりで大半が聞こえていたけれど、肝心な部分は聞き取れなかった。


 深い溜息をついた薫くんはポケットからメモ紙とペンを取り出し、サラサラとペン先を走らせた。



「はい。これが買い出しのメモね」

「ありがとーごじゃいましゅ」



 良かった。


 薫くん、絵はいわゆる画伯だけど、字はそれなりに上手い。


 しかも全部平仮名で書いてくれるっていう優しさっぷり。


 ……ありがたい。ありがたいけど、なんだかなー!?



 メモを見ると、定番の白玉粉、里芋、あんことある。


 それと……絹豆腐?



「かおるおにーちゃま、おとうふも?」

「そう。豆腐を一緒に入れて混ぜると冷めても硬くならないんだよ」

「へぇ~」



 さすが料理人!


 豆知識が豊富ですね。



「それから、これが地図ね」

「……あ」



 でた! 画伯!!


 下手に建物を絵で書こうとするから余計分かんない地図になってる……。



「あ、ありがとー」

「貸してみ」



 顔がピクピクしてたのに気付いたのか、綾芽が横から地図をかっさらって行った。



「……これがいつも行ってるコンビニで、ここがよく遊んでる公園。この通りをまっすぐ行けば業務用スーパーがある。里芋と絹豆腐はここで買うんや。それから白玉粉とあんこは瑠衣はんとこや。この前行ったお店に行けばえぇんやけど、覚えとる?」

「おぼえてるー! パフェがとーってもおいしかったとこー!! たしかね、ここ、かな?」

「そうや。よぉ覚えとるな」

「んふふ~」



 褒められちった~。


 頭、撫でてもいいのよ?



 買ってもらったウサちゃんリュックに、メモとお金が入ったカエルのがま口財布を入れて。


 地図は一応手に持っていくことにして。



「一緒にオヤツとジュースも入れとくから、お腹が空いたらそれを食べたり飲むんだよ?」

「あい!」



 ……オヤツは何かなぁ~っと。


 ふむ。たまごボーロですね?


 ありがとうございます。いただきます。



「迷子になったら?」

「ちかくのひとにスーパーどこですかってきく!」

「瑠衣はんのお店の名前は?」

「んっとね、かんみどころ、すい~」

「変なヤツに会ったらどうすんだ?」

「やってよし……じゃなくて、おおごえあげる!」



 ふざけただけよ? 薫くん。


 そんな怖い目で見ないでよ。



 ほら、バッチリですやろ?


 自分、これでも出来る子ですもん。


 ……まぁ実際は私、女子高生だからだけどね~。



「じゃあ、健闘を祈るぜ」

「あい! いってきましゅ!」



 玄関前で綾芽達に向かってピシッと敬礼。


 海斗さんだけが返してくれた。


 海斗さん、好きよ? そのノリの良さ。



 では、いざ、行ってまいります!


 まずは業務用スーパーへレッツゴー!!




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ