表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ひよっこ神様異世界謳歌記  作者: 綾織 茅
奥底に眠る記憶の残骸
202/310

奥底に眠る記憶の残骸―9





『だいじょうぶ?』

『……うん』



 小さな男の子が、さらに小さな男の子に手を差し出している。


 気のせいか、その二人は帝様と綾芽にどことなく似ていた。




 ◇◆◇◆



「……お、起きたな」



 目を開けると、海斗さんが夏生さんと向かい合って何か紙に書きつけていたところだった。


 寝たまま視線を彷徨わせた。


 けれど、一緒に戻ってきたはずの姿がどこにも見当たらない。



「あやめっ!?」



 かけられてた毛布をはねのけて飛び起きた。



「どうどう。あいつなら今」

「なんや。やっと起きたん?」



 向こう側から襖が開けられるのと、私が開けようと手を伸ばすのと、ほぼほぼ同時だった。


 部屋に入ってきた綾芽は手に盆を持っている。その盆の上には美味しそうな俵型のおむすびがこんもりと乗せられていた。海苔の良い香りも鼻をくすぐっていく。



「めちゃくちゃお腹の虫さん鳴ってたで」

「ありゃ虫じゃなくて、もはや猛獣だよな」

「これは自分からのご褒美や。……ほんまおぉきに」



 美人が放つ本気の微笑みに、どう反応して良いかとっさの判断ができなかった私の背を、綾芽に続いて入ってきた薫くんが押し入ってきた。そして、薫くんに続いて巳鶴さんに劉さんも。



「食べないの? 珍しくそこのやる気なし人間が自ら厨房に立ってたみたいだけど?」

「た、たべるっ! たべるよっ!?」



 薫くんが一つおむすびを摘んで口に運んだ。塩加減がどうのと綾芽に文句を言っている。


 慌てて綾芽と夏生さんの横に座った。それから、私もおむすびを一つ手にとって、周りに座る人達の表情を見た。



 ……うん、うん。みんな笑顔。良いことです。



 催促してくるお腹の虫に、私は褒美と称されたおむすびを満足するまで提供し続けた。






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ