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ひよっこ神様異世界謳歌記  作者: 綾織 茅
修行は本場の土地で
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修行は本場の土地で―5






 たっぷりとティータイムを堪能したレオン様はご機嫌だ。足取りがとても軽い。

 そのまま私と千早様を目と鼻の先にある自分の課の建物の中ではなく、別の課、裁判から刑の執行までを司る第四課の建物へと連れ歩いた。


 丁度仕事に一区切りついたという副官の人に案内され、最終的に着いたのは大量の蔵書が棚に所狭しと並べられている部屋だった。



 ……すっごい量だなぁ。なんて書いてあるのか分からないものばっかりだけど。



 ズラリと並んでいるその量たるや世界一大きいと言われる図書館でも敵わないかもしれない。実際そんな図書館を見たことはないけれど、そう思えてしまうほどの量についあんぐりと口を開けて上を見てしまう。



 その背表紙に目を通していくレオン様は、まさかとは思うけど、何がどこにあるのか把握、してる?



 そんなレオン様に千早様は全く反応を見せないから、これは別にこの人にとっては珍しいことではないのかもしれない。この、人間界にも聖職者として(おもむ)いている表向きは外交、裏ではどんな些細なものすら収集する諜報を司る第五課の頂点に君臨する人には。



「あ、あったあった」



 目当てのものを見つけたらしいレオン様は本を二冊、手を伸ばして上の方の棚から引き抜いた。



 そのままレオン様は入り口とはまた別の扉からどんどん進んでいってしまう。追いて行かれないようにと頑張って走ると、とても広い部屋に辿(たど)り着いた。


 部屋の奥にはとても大きな机が置かれている。机の両脇にはかなりの書類の山が積み上げられていた。



「……レオンか。少し前にコリンから連絡があって、例の吸血鬼達の一件の首謀者一味が第四課(うち)に護送された。いつものように私が裁断する前に尋問するか?」



 細フレームの眼鏡をかけた生真面目そうな銀髪の男の人が、椅子に腰かけてカリカリと一心不乱にペンを走らせている。



「うーん。するけど、それは他に任せるよ。それよりも、セレイル。これ、借りていくよ」

「……あぁ。今日中に返してくれれば構わない」



 セレイルと名を呼ばれた男の人は一瞬顔を上げ、レオン様が顔の横に掲げた本を見てまた顔を下げた。


 その間、動かしている手は止まらず、見ている間だけでも書類の束を確実に片づけていっている。



 ……この書類、今日中に見終わるつもりなら絶対大変だよね。


 かなり忙しそうな時に来ちゃったんじゃないのかなぁ。



「もちろん今日中に返しに来させるよ。じゃ、行くよ」

「は、はいっ」



 くるりと踵を返し、レオン様は部屋から出ていった。


 私がいるってこと、気づかれているかどうかは分からないけど、一応お辞儀をしておこう。



「しつれーしました!」



 入れ違いに入ってきたさっき道案内をしてくれた副官さんがバイバイと手を振ってくる。


 それに笑顔で振り返し、先に行ってしまったレオン様と千早様の後を追いかけた。



 ほんの少し遅れて出ただけなのに、気づくと遥か向こうに行ってしまっている二人になんとか追いつき、隣を歩くレオン様を見上げた。



「レオンさま、こんどはどこにいくの?」

「次は君もよく知ってる人のところだよ」

「え?」



 私がよく知っている人? 誰だろう?


 その言い方だと、少し前まで一緒にいた潮様や奏様は違うよね。


 うーん。



 ……うん。分かんない。考えるのやめた!


 どうせ後から分かるんだし。



「まぁ、黙って歩いてついて来てくれればいずれ分かるよ」

「はぁい」



 そのままレオン様は第四課の建物を出て、右へ曲がり、スタスタと足早に歩を進めた。


 確か、ここに来た初日に千早様が教えてくれたけど、この先は第三課。第三課のカミーユ様達が普段仕事や日常生活をしている建物がある。


 初対面の時からずっと恐さが(まと)わりついているカミーユ様のいる建物には正直あまり近寄りたくないけど、これも仕方ない。レオン様にはついていかなきゃならないんだから。


 それでもやっぱり、人間っていうものは自分が嫌なことはなんとか後に後に回したいと思ってしまうもので。


 尻込みして足の歩みが遅れた私は、立ち止まって待っていてくれたレオン様に抱き上げられた。



「ここで逃げちゃダメだよ」

「……あい」



 しっかりばっちりバレていた。




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