本当は怖い賑やかなお祭り―11
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神様の力ってやっぱり便利だよねー。
行きたいところに道を繋げれば迷わず行ける。
土石流の跡をなんとか元に戻し、みんなで綾芽達のところまで移動した。
んん?
おおっとー?
地面に横たわる人や縄で縛られてる人。
みんな見たことない人達ばっかりだから、きっとここの町の人なのかな?
あ!
綾芽発見!!
少し離れた所にこちらに背を向けた綾芽と、それから海斗さんと夏生さんの姿もあった。
こちらに気づいた二人にしーっと指を口に当てて、そーっと綾芽の背後に忍び寄る。
タイミングを見計らい、勢いよく飛びつ……
「綾芽っ! ……んっ!」
……けなかった。
酷い。避けるなんて酷い。
しかも襟首掴むなんて、首締まるやつやん!
「あー堪忍なぁ。襲われる思ったんでつい」
「気づいてたくせによく言うぜ」
「なにっ!?」
気づいてた、だって?
姿消せば良かったー!
……あ、でもあんまり力を使うなって約束だったや。
なんか色々使っちゃったけど、言わなきゃ分かんないよねー。
……黙っとこ。
「どうせ力使ったんだろ? 薫に宿の厨房で何か作らせるか」
「へへー」
ばれてらー。
「……んん?」
「どーしたよ」
夏生さんが言うことはありがたいし、いつもならそうなんだけど。
なんか今回、あんまりお腹空いてないかも。
おにぎりとか食べてたからかな?
「お腹あんまり空いてないから大丈夫。薫くん、怒るだろうし」
こんな時間に!って。
前も怒られたしなぁ。
私は同じ轍は二度踏まぬ女だからね。
学習できる子だから、うん。
「空いて、ない?」
「ちっともか!?」
「え? ちっともかって言われると、そりゃ少しは減ってるけど、我慢できないほどじゃないかなー。へへっ。力を使ってもお腹空かなくなったって成長したってことかな?」
千早さまー!
すごくない!?
特訓の成果出てますよー!
ブンブンと神様達と離れたところに立つ千早様に手を振ると、怖い顔で睨まれた。
ちょ、調子にのってごめんなさい。
み、みんな怖いってば。そんな睨まないでよ。
りゅ、劉さーん!
癒しの劉さんはいずこへー!?
視線に耐えきれず、されどどこかに行く気にもなれず。
仕方ないから自分の目を塞ぐことにした。
「おい、これ大丈夫なのか?」
「分からぬ。見立て通りだとまずい」
「全くまずいように見えねーんだけど。冥府の神さんなんだろ? 寿命が縮んでるかどうか分からねーのか?」
えっ!? じゅ、寿命? 縮むっ!?
誰がっ!?
「分からぬわけでもないが、コレは見えぬ」
「……まぁ、気持ちは分からんでもないが」
物騒すぎる会話が耳に入ってきたんですけどー!
「誰の寿命が縮んだのっ!?」
「……俺だ」
「……まったくなー。神さんとこに一人で乗り込んでったって聞いた時は肝が冷えたぜ」
なんだ、そういうこと。
冗談かぁー。
冗談にアノ人いれちゃったらダメだよ。
なんでも本気に聞こえるんだから。
「もう一回聞いてもかまへん? ほんまお腹空いとらんの?」
「うん! 明日の朝ご飯なにかな?」
あ、でも、あるのかな?
こんなことになっちゃってるし。
帰るよねー。絶対。
まだまだ来たばかりなのに、残念だけど仕方ない……と、諦めなきゃいけないってのは分かってるけど。
もう少しみんなとゆっくり旅行したかったなぁ。