本当は怖い賑やかなお祭り―4
「夏生さん、私はどうすればいいですか?」
「その前に、だ。丁度いい。なぁ、人柱にされようとしてる人間の居場所、分からねぇか?」
夏生さんがアノ人に目をやった。
アノ人はそんな夏生さんに手を差し出す。
当然夏生さんは眉を片方だけ動かした。
「なんだ? この手は」
「我が自ら動くのは妻と娘のためのみ。他はどんなものでも対価を寄越してもらうのが神の理よ」
「……分かった。巳鶴さん、例のブツを頼む」
「えぇ。ここでは渡せませんから後程必ず」
「その言葉、ゆめゆめ忘れるな」
アノ人はそう言うと、机の上に広げられた地図に細い指をツーっと走らせた。
そしてある一点で止まらせた。
「ここだ」
「……そうか」
そこは山の麓にある神社だった。
欲しくないものを自分の家に持ってこられて神様もさぞかし困っていたはずだ。
その行為は畏敬の念を持ちすぎるが故の不埒な行いと言った方が正しい。
過ぎたるは及ばざるが如しとはこのことだ。
先人もいい事を言ってくれている。
「実は違うとかナシだからな?」
「ふむ。我は生憎と社の地下で木枠で囲われ、手足を縛られるという人間を人柱以外で見たことがない」
「じゃあ、こいつで間違いねぇ」
見つかったのはいい事だ。
うん、とっても。
……でも。
ねぇ、私のお仕事は?
せっかく頑張って戻ったのに、やっぱりナシでとか嫌だからね!?
「なにぶすくれてんの?」
「そんなこと、あるよ」
「あるんだ。で? どうしたのさ」
「私、頑張ったのに、みんなコノ人ばっかり頼ってる」
「当たり前でしょ。どう考えてもその方が早いんだから」
「むぅ」
面白くない。じーつーに面白くない。
とはいえ、呼び出したのは私で、早く解決しなきゃいけないっていうのも分かってる。
だから薫君に文句タラタラ言うだけで、後はすっぱり諦め……た、つもり。
「安心しろ。お前にはお前の役目がちゃんと用意してある」
「ほっ」
「適材適所です。頼みましたよ?」
「なーんだ。了解ですっ!」
おじさん達も温か……いやいや若干生温かい目で見てる?
「ちょっと。分かってると思うけど、ホントに危険なことじゃないでしょうね?」
「んなこたぁねぇよ。それに、俺達に父親までついててどうやって危険になるってんだよ」
「……あいっかわらずの自信ね。まぁいいわ。乗りかかった舟だもの」
「駄目です」
「……なによ、まだ最後まで言ってないじゃない」
「どうせ何か手伝わせろと言うんでしょう?分かってます。駄目です」
さすが黒木さん。
分かってるー。
瑠衣さんはグヌヌと口ごもる。
ほら、やっぱり正解だ。
うんうん。それには私も賛成だね。
瑠衣さん。そんなお顔しても駄目なものは駄目なんです。
自分のことは棚に上げるのが私、とってもお得意なの。
今度は瑠衣さんが不機嫌になり、黒木さんの背に拳を何回か入れていた。