本当は怖い賑やかなお祭り―2
「さっきから人聞き悪りぃこと言いやがって。部屋の代表だけ残って後は帰れ」
夏生さんの言葉におじさん達はそれぞれの顔を見合った。
それからはまるであらかじめ決めていたかのように行動が素早かった。
もちろん出て行く人にはこの部屋以外で集まっていることを話すのが禁じられた。
うーん、今度こそお座布団が足りないねぇ。
持ってくる? あ、いらない?そう。
残ったのは十人ほど。
それでもお部屋が広いから狭くは感じない。
「で、話を戻すが、例の行方不明事件についてだ。さっき、おそらくこの土地の神が俺達に明後日行われるこの土地の祭りで捧げられる人柱を未来永劫なくせと言ってきた。行方不明の奴はおそらくその贄になっていると思われる」
ここまではいいなと言う夏生さんに、コクコクと頷くおじさん達。
理解が早くてなによりだ。
「そこで出番なのが彼女です」
「はいっ!」
そこっ!
ここでっ!?とか言わない。
「彼女にはこの地の神が降りたことにして、贄を一晩先にどこか場所を指定して移させます。その際、その方の身柄を保護、運んできた者達の確保を行います」
「はい」
「なんでしょう?」
「それだとこの件が終わった後も神を下ろせる少女としてこの土地の人間から狙われませんか?」
「えぇ。素性が分かれば、ね。要はどこの誰か分からないようにすればいいんです」
ん? 巳鶴さん、私、変装でもする?
「雅さん、元の姿に戻れますか?」
「ほっ!」
出た。
巳鶴さんお得意の無茶振りぃ~。
自分でもなんで戻ったのか分からない一回こっきりなのに、それは出来っこないですってば。
でも、巳鶴さんは諦めなかった。
「雅さん、いいですか?」
人差し指を立て、巳鶴さんはすごく真剣な表情でそう言った。
私もスッと背筋が伸びる。
周りの人達はただじっと黙って聞いている。
「これは貴女にしかできないすごく重要で大事な任務です」
「にんむ」
「これを失敗することは行方不明者の命の危険が高まるということにも繋がります」
「きけん」
「これは貴女に課せられた特別な使命なのです」
「しめー」
「やれますね?」
「……やりますっ!」
そう言われたら頑張るしかないじゃんかっ!
「雅ちゃん、本当に大丈夫なの?」
「はいっ」
瑠衣さんが心配して私の両手を包み込んできた。
とても温かくて優しい手だ。
でも、大丈夫っ!
だって私、やればやれる子ですもん!!
でも、とりあえずさすがに一人で戻るのは無理。
前に戻った時のアレは火事場の馬鹿力的なアレだもの。
と、なると、だ。
誰かに手伝ってもらうなり、助言をもらうなりしないといけない。
これに関して一番元に戻る方法を知っていそうなのはあの人ということはこの術をかけた本人なんだから間違いない。
今何をしているか分からないけれど、とりあえず呼んでみよう。
……やっぱりオネエさんや千早様じゃダメかなぁ?