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ひよっこ神様異世界謳歌記  作者: 綾織 茅
湯けむり道中は珍道中
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湯けむり道中は珍道中―5






 結局そのお店を出たのはそれから二時間も経った頃。


 荷物は全て東のお屋敷に送ってくれるってことで話がついた。



「さ、次に行くわよ!」



 着て脱いでを繰り返していただけなのに、なんだかすごく疲れた気がする。


 一方の瑠衣さんは変なスイッチが入っちゃったのか、さっきのお店でだって桁がおかしい買い物をしたのに迷いもなく次へとお店を物色し始めた。



「やっぱり温泉って言ったら浴衣よね。湯冷めするとまずいから、綿入り半纏も買っておこうかしら」

「えっ」



 普通の服と違って呉服は高い、気がする。


 お金持ってる人との買い物って怖い。



「もうそろそろお昼ですし、お昼にしませんか?」

「雅ちゃんもお腹空いたでしょ?」

「すいてます!」

「足も疲れたんじゃない?」

「つかれてますねー」



 瑠衣さんが目をパチパチと瞬きをさせ、再び手に持っているマップに目を落とした。



「雅ちゃん、何が食べたい?」

「んっと……」



 ……あ。



「これー」

「ん?」



 贅沢な悩みだっていうのは分かっている。


 だけど、薫くん達のご飯をいつも食べてると、たまにものすごくジャンクなものが食べたくなる。



 あ、みんなの味に飽きたってわけじゃないから!


 今日の夜ご飯、カレーがいいですってリクエスト合戦に参加してくるぐらい好きだから!!



「こういうの、食べさせて良いものなんですかね?」

「健康には良いとは言えないわね」

「ですよね」

「だいじょうぶ。おなかいたくなったことないから!」



 お母さんはポテトの油が駄目みたいで、たまーに食べた時でもすぐお腹痛くなってたけど、私はそんなことなかったもの。


 綾芽もそういうのは厳しいみたいで、食べそうな雰囲気してるのに全然食べないし。



「ね~。おねがいします」



 瑠衣さんの服を摘んでジッと目を見つめた。



「ここでいいの?」

「そこがいいー」



 ポテトでしょ? ナゲットでしょ?


 あと、バーガーでしょ?



 向こうの世界と違うのは、ロゴがMじゃなくてWってところ。


 後は大体メニューは変わらない、と思う。


 友達と出かける時にたまーにこっそり食べるくらいしか機会がなかったから、どんなメニューがあるのかは正直怪しいけど。



「二人はそれで足りるの?」

「あ、そっか」

「僕達は何でも大丈夫です。足りなかったらそれこそ追加で頼むんで」

「右に同じく」



 そっか。そうだよね。


 私にとってはお腹いっぱいになる量でも、大人の男の人の食べる量はそれこそ桁違いだもの。


 絶対足りない。



「うーん、と」



 あ、分かった!



「おひる、やっぱりここじゃなくていいです」

「え? どうして?」

「あのね、かえりにあやめにおみやげでかってかえるの。それで、おひるはべつのとこにしましょー」

「綾芽へのお土産?」

「あい」



 劉さんか子瑛さん辺りも可だよ?


 だって、分けてくれそうだもの。ムフフ。


 薫くんや夏生さんや巳鶴さん辺りは栄養偏らせすぎだって怒るだろうからダメ。


 ……うん、やっぱり綾芽へのお土産が一番だ。



「まぁ、いいわ。じゃあ、どこにする?」



 みんな好き嫌いがないからか、どこでもいいという意見に落ち着いてしまう。


 これでは一向に決まらない。


 こういう時は!



「めをかくしてちずをなぞりながら、ここっていったところです!」

「オッケー。じゃあ、雅ちゃんが決める人ね」

「せきにんじゅーだいですね。わかりました。いきます!!」



 ギュッと目をつむり、瑠衣さんが差し出すマップに指を()わせる。



「ここっ!」



 目を開けて指した所を見ると、中華のお店だ。


 美味しそうなエビチリの写真が載っている。



 うんうん。なかなか無難なチョイスじゃないですか?


 しかも、ここ、お昼はバイキングになってるみたいだから、葵さん達でも十分満足できるよね。



 空いているかはさておき、とりあえずお店は決まった。



「ここに行くには……こっちですね」

「雅ちゃん、疲れてない?大丈夫?」

「だいじょーぶ。ありがとう」



 実際に歩いたのはそう距離はないし。


 うん、問題はありません。



「疲れたらいつでも言ってね。抱っこするから」

「ありがとー」



 茜さんの次は葵さんにも気を使われてしまった。


 そんなに疲れてますオーラ出してた? 私。


 顔に出るって言われるからなぁ。



 でも、どーしてももう歩けなくなった時はその……お願いします。



 葵さんがパンフを見ながら道を確認しつつ、お店に向かっていく。


 私達はその後をくっついて行った。





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