幽霊の正体見たりなんとやら―13
「どうしても言わぬと言うならばそれもやむなし。存分に永遠に続く生を生きるがいい」
「お、お待ちください! お話しますっ!! お話しますからっ!」
口の猿轡は解かれても身体はまだ拘束されたまま。
院長先生の顔は流れる涙やら鼻水やらで大変なことになっている。
今思えば、私達に初め会った時のあの緊張っぷりはこの事がバレるのを恐れていたからだったんだろう。
「最初から大人しく吐けばいいものを」
「しろっていわれればしたくなくなって、するなっていわれればしたくなるものなんだって」
「誰が言ってたの?」
「かいとー」
分からんでもないよね。
でも、その理屈は使い所を間違っちゃいけない。
決して今ではない。
「雅ちゃん。いい? 貴女の単じゅ……素直さは美徳よ。そのまま大きくなりなさいね?」
「はいっ」
りょーかいです。
単純なのではなく、素直に生きます。
……都槻さん、言い直しても誤魔化されないからね?
「この病院には裏の顔がある」
橘さんに手を貸され、地面に腰を下ろした院長先生がポツリポツリと語りだした。
もう言い逃れることはできないとやっと悟ったらしく、その語りが止まることはない。
「表の顔はもちろん普通の病院だが、裏ではその……臓器売買をしているんだ。数十年前の当時の院長が始めたことで、私の代までずっと行われてきた」
「鳳」
帝様が鳳さんの方へスッと視線をやった。
それに鳳さんは視線を僅かに下に落として応えた。
「確かにその情報は流れてきております。ですが、どうやら当時の西の長とも癒着があったようで揉み消されていた跡が。現在も恐らく政治の上席が関わっているらしく、あと少しのところでいつも証拠を握りつぶされております」
「……ふぅ。適性を見るのを怠っていた父上達の責もある、か」
深い溜息をついた帝様は院長先生に話の続きを促した。
「臓器提供者に選ばれるのは大抵身寄りのない者が多い。逆に提供を受ける者は政財界の重鎮だったりその関係者がほとんどだ」
「後でリスト化して頂きます」
「分かっている。……普通の手術室で実行するには人目につく。それで目をつけたのが霊安室の地下の手術室だ。あそこは元々要人用のための手術室として作られていた。だが、機能するのは一年に数度。徐々に忘れられ、この臓器売買が始まる頃には当時の院長と僅かな職員だけとなった。格好の場所だ」
そうしてあそこで沢山の命が刈り取られ、恨みを持つ霊達にただ楽になりたいだけの霊達も引きずられ、今に至った、ってことね。
あそこにいただけでも相当な数だったから、犠牲になった人は本当はもっと多いかもしれない。
命を助けるべき医療従事者が、逆に命を奪うなんて言語道断だ!
「しりしよくでほかのひとのいのちをうばっていいわけがない!」
私がそう叫ぶと、院長先生は項垂れてしまった。
臓器提供を受ける人もする人も、お互いに合意があった上でされるべき行為なのに、それをお金だとか、地位向上だとか、そんなもののためにしていいなんてこと、あるわけがない。
なんでそんな簡単なことなのに気付かないんだろう?