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二十三話 同盟

 突如現れたウィングルとトーリィから知らされた敵襲。

 その報を聞くや否やガルグレンは東門の方へ身体を向け、翼を大きく広げた。

 が、


「む、ぐ……」


 勢いよく飛び上がるかと思えば、ガルグレンは苦痛の声をあげその場に膝まづいた。


「王! 無理を為さらずに!」


 その様子にバドが走ってガルグレンに近づく。


「ガルグレン様! 貴方の身体は病で限界です! 常人ならばとっくに死んでいるのですよ?! レアフレア様は我々が必ずお連れ致します! 東門の敵襲もすぐに……」


「何度も言わせるな、退けぃバド!」


 青い顔をし身体を小刻みに震わせるガルグレン。

 しかしその眼光はこの場の誰よりも鋭く怒気に満ちたものだった。



 敵襲の報をいち早く知らせるために飛んできたウィングルとトーリィも、ガルグレンの様子を見て内心後悔する。

 しかしその後悔はすぐに心の奥にしまい、バド同様ガルグレンに近づき、片膝をつきながら王を見上げた。


「バドの言う通りです、王、どうか安静にされて下さい。今からここの兵力を連れて私達は東門へ向かいます」


「我ら翼人王親衛隊【三勇士】にお任せを! 次に戻った時には必ず吉報をお届け致します」


 ウィングルとトーリィは真っ直ぐにガルグレンを見つめ、王の安静を進言する。

 しかし尚もガルグレンはそれらを無視するかのように空を見上げ、翼を広げた。


「【愛の癒し手(ヒーリングタッチ)】」


 ガルグレンの後ろから突如リールは相手の手を掴み、ガルグレンに癒しの魔法をかけた。

 その淡い光に筋翼人(バーディアン)達は視線をそちらに集中させる。


「この【愛の癒し手(ヒーリングタッチ)】では病までは癒せませんが、飛ぶのを妨げた痛みは和らげる事が出来ます。しばらくかけ続ければ東門の戦場に向かう事も出来るはず」


「リール殿!」


「ですがっ!」


 リールの言葉にバドが声を荒たげる。

 そのバドの声を静止するようにリールもまた声を大きくした。


「バドさん達は貴方の事を気遣っています。私としても大人しく安静にしてほしいですし、レアフレアさんもきっとそう言うでしょう」


「む……」


 リールはレアフレアから聞いた事は限られているが、その中から推測するに、この翼人王は自分の父に似ている。

 簡単に言うならば親馬鹿なのだろうと推測した。

 ならば、自分が父を思い通りに動かそうと思った時、どうすれば良いかをなぞる事にしたのだ。

 即ち、『正論を通しながらレアフレアの意思であるかのようや言い回しで健気さアピール』である。


「翼人王よ、皆の言う通りこの場は引いて頂けるのならば我々ユニバールも、筋翼人(バーディアン)と共にラムフェス軍の撃退に尽力を出しましょう」


 横から更にジークアッドが割ってはいる。

 ユニバールと筋翼人(バーディアン)の戦いを静めたリールの実績及び現在発揮している癒しの魔法。

 それに加え、ユニバールからの助力の進言まで加わり、その発言を筋翼人(バーディアン)もユニバール軍も受け入れるかのように静かに聞いている。

 立場の違う場の全員に正論と譲歩を交え説得されては、ガルグレンと言えど耳を貸さない訳にはいかなかった。


「……フン、そこまで言うのならば、貴様らに任せよう。バド、全体の指揮及び報告義務は貴様に一任する」


「は……ははっ!」


 こうしてユニバール、筋翼人(バーディアン)の連合軍は、王を除き、南門から東門への緊急移動を開始した。


◇◇◇◇◇


 バドを含む筋翼人(バーディアン)の8割が翼の機動力を活かし東門へ先行し、残りの2割を道案内に、ジークアッド率いるユニバール軍は徒歩で、ただし速足で進軍を開始した。


 そんな中、先程飛んできた筋翼人(バーディアン)の女性、ウィングルが走るリールの横に降り立ち、そのまま自身の足で並走を始める。


「貴女、リールっていったかしら?」


「あ、はい! リール・ケトラと言います! ウィングルさん! よろしくお願いします!」


「……貴女のような小柄な子がウチの王を止めるなんて、人間って凄いのね、びっくりしたわ」


「いえいえ! ウィングルさんだって筋翼人(バーディアン)さんの中ではスラッとしてますけども! 王様の親衛隊なんですよね! 凄いです!」


 走りながらも笑顔で頭を掻きつつ褒め反すリールに、ウィングルもつい表情が緩む。


「ありがと、筋翼人(バーディアン)は実力主義な所が他種族より強いみたいだから、私は女だからってナメられたくなくてね、その一心で腕を磨いてたら王の目に止まって親衛隊に選ばれちゃったわ」


 今から戦場に向かうというのに和気あいあいとした話を始める二人。

 そんな二人のやや後ろを走っているブレイバスがリールに声を投げ掛ける。


「所でリール」


「なに?」


「なんか俺さ、筋翼人(バーディアン)(おっさん)と戦ってる途中から記憶がないんだが」


「そう」


「それで、上半身がなんか砂だらけな上、口の中もジャリジャリするんだがなんでだ? あと後頭部も痛む気がする」


「さぁ、知らないし見当もつかない。そんな事よりブレイバス、今から向かう先にいるのって…」


 今までウィングルと顔を合わすために横を向いていたリールは、話題を変えるように言いながら前方に視線を戻す。

 リールのその言葉にブレイバスは表情を険しいものに変えた。


「あぁ、【竜聖十将軍】、らしいな……その中の誰かは知らねえが誰であろうと一筋縄じゃあいかねぇはずだ」


────【竜聖十将軍】

 現在地、勇翼大空鉱山(スカイディアヘイム)の北に位置する大陸最大の軍事国家ラムフェスにて、最高位の称号である将軍の名称。

 時として十万単位の兵を指揮する権利が与えられ、また将軍自身一人一人が一騎当千の実力者である。

 ブレイバス達も過去に何人かとは出会っており、敵としても味方としてもその圧倒的強さは十分に承知している。


「ウィングルさん、アンタが出会った東門にいる【竜聖十将軍】ってのはどんなヤツだ?」


 ブレイバスの言葉にウィングルもまた相対した相手の事を思い出したのだろう。

 冷や汗をたらしながら真剣な顔をし口を開いた。


「非常に大柄な男よ。身体だけならガルグレン王より大きいわ。……覚悟して頂戴ね」


 一息をおいてウィングルは続けた。


「本人からの豪快な自己紹介によると、【剛竜】ザガロス・ガイザードというらしいわ。アイツは……強すぎる」


 ウィングルのその言葉に、ブレイバスは大きく目を見開いた。

『二章 登場キャラ紹介 +イラスト紹介』

に 北城らんまる様 から頂いたファンアート(2枚目)を追加挿入しました!

よかったらそちらもご覧ください!

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