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十九話 VS筋翼人2

 リールの指先から放たれる光の雫。それらはそれぞれ異なる速さで大きさを増していく。

 それは親指から始まり、人差し指、中指、薬指、小指と並んでいる順番に綺麗に少しずつ大きくなっていき、それは一定の大きさになるとそのまま零れ落ちるかのように地面に落下しだした。

 リンゴほどの大きさの雫は自由落下の最中にも大きさを増し、地面に着こうとする頃には子供の頭程度まで肥大化する。

 そしてその光の玉が、地面に完全につく前にリールは再び叫んだ。


「【愛の弾丸(ヒーリングシュート)】ォッ!」


 ドゴドゴドゴドゴドゴォオッ!!

 掛け声と共にリールは光の玉を順番に五連続で蹴り飛ばす。

 それらは弧を描き、先ほどブレイバスが放った【破壊散弾(ブッコロシブレイズ)】に呑まれ、土砂交じりで地に伏せている筋翼人(バーディアン)達のほうへ飛んでいく。


「なに……?」


 自分の頭上を通り過ぎる五つの流星を見送りながら、ジークアッドが怪訝に呟く。

 放たれた光の玉が筋翼人(バーディアン)達に命中すると、それはやはり対象の全身に浸透するように筋翼人(バーディアン)達の身体を光らせた。


「リール殿! どういうつもりだッ!」


 先ほど自分と相対している筋翼人(バーディアン)に放った際は、衝撃により相手を怯ませる援護射撃だったという認識も出来る。

 しかし、今回のソレは明らかに敵の勢力を復活させる行為である。

 ジークアッドの叫びに対し、リールは真っすぐな瞳を向け答えた。


「私たちは筋翼人(バーディアン)さん達と戦いに来たのではありません。それはジークアッド将軍も同じのはずです。ユニバールの皆さんが防戦をしてくれている。ブレイバスが私たちの危険を減らしてくれている。それならば私は一番傷ついている人から順番に癒し、互いの狂気を静めます。皆さんスッキリすれば絶対また話し合いも出来ますからっ!」


 そこまでキッパリと言い切り両手でガッツポーズをすると、リールはすぐに戦いのほうへ目を向け直す。


「勝手な事を……!」


 ジークアッドは歯ぎしりをし、視線をリールから【愛の弾丸(ヒーリングシュート)】を喰らった筋翼人(バーディアン)達のほうへ向ける。

 回復した敵勢力が、再びこちら側に敵意を向け襲い掛かってくる事に備えてである。

 しかし、ジークアッドの警戒とは裏腹に、すでに回復を終えた筋翼人(バーディアン)達は、座り込んだまま困惑した顔で、あるいは悔しそうな情けなさそうな顔で周囲や自分の傷ついていたはずの身体を見渡している。


「……むぅ」


 ジークアッドは再び周囲の様子を観察しなおした。

 矢が飛び交い刃や鈍器がぶつかり合う乱戦の中、互いに傷つき倒れていく者は次々と出て行っている。

 空の上ではシュンツと筋翼人(バーディアン)数人が空中戦を広げており、その中シュンツに斬り落とされている筋翼人(バーディアン)もいた。

 しかしそんな中リールが一瞬一瞬最善最適な動きで立ち回り、筋翼人(バーディアン)には先ほど見せた【愛の弾丸(ヒーリングシュート)】を、自軍の兵士には光る手で触ったり殴ったりしながら近距離回復魔法をかけて回る。

 ──爆発音がした。門の下でブレイバスが今度は天然の城壁となっている山の一角を破壊し、その衝撃でまた筋翼人(バーディアン)達も飛び回り、何人かは逃げ切れずダメージを受けた。そんな中ブレイバス自身も相手の石弓の弾丸を腹部に喰らいよろめいた。


「【愛の弾丸(ヒーリングシュート)】ッ!!」


 するとまたもリールが光の玉を複数そちら側にとばし、恐ろしい精度でブレイバスと筋翼人(バーディアン)達にヒットさせている。


「ひょえ~……ブレイバスさんすげえ! ……けど、リールさんもっとすっげぇ!!」


 ジークアッドの隣に、空で筋翼人(バーディアン)と空中戦をしていたシュンツが降りてくる。


「シュンツ殿! 君たちはいつもこんな戦い方をするのか?」


「い、いや~! 実はオレもちょっと前にリールさん達と同行するようになっただけなんで、一緒に戦うのは今日が初めてなんスよね! いやはやビックリッスわ!! 流石はオレの……」


 狂気と憎悪が渦巻く命の奪い合い、一度(ひとたび)火蓋が切られれば、その渦は留まることなく大きくなる。

 仮にどちらかの勝利で戦いが終わったとしても、失われた者の数だけ悲しみと憎しみは生まれ、それらは復讐、報復といった形で連鎖し、更なる戦いを生む切っ掛けとなる。

 ────それが凶器をもつ者同士の乱戦、のはずだった。

 しかし傷つき倒れ、そしてその場で癒された者からは狂気は消え失せ、その様子を目の当たりにした他の兵士たちも次第に戦う手を止めていく。


 しばらく続いた戦いは、死者を出すことなく憎しみを増させる事なく、静かに終結していった。


「……ふぅ」


 戦いが終わるのを確認すると、リールは額の汗を拭いながら息を吐く。

 しかしすぐに再び身を走らせ、軽傷の兵士たちの治療に回りだした。


「なんと……」


 この呟きは、まだ破壊されていない岩山の上から筋翼人(バーディアン)の指示をとっていたバドの口から洩れたものである。

 両勢力はざわつきながらも互いに距離を取っていく。

 その中でもう、武器を構えようという者など誰もいなかった。


 複数個所を破壊し回り、いつの間にか姿を消していたブレイバスが、瓦礫の下から血を流している筋翼人(バーディアン)を担ぎながら姿を現す。


「おーい! テメェら全員呆けていないでこっちも手伝え! まだ下に何人かいる!! 多分まだ誰も死んでねえ! だが忙ねーとヤベェかも知れねえ!!」


 ブレイバスのその言葉に、一同はしばし沈黙。

 一番早く動いたのは最初に【愛の弾丸(ヒーリングシュート)】を喰らった筋翼人(バーディアン)。急いで瓦礫のほうへ走っていく。

 次いでそれに続くように他の筋翼人(バーディアン)が瓦礫に群がっていく。

 残ったユニバールの兵士たちも、互いに顔を見合わせると次々とそちらに駆けていった。


 そして先ほどまで殺し合っていたはずの、人間と筋翼人(バーディアン)一丸となった合同の瓦礫除去作業が始まった。

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