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八話 大空勇翼鉱山

 シュンツの治療を終え、四人は時間通りのレアフレアと待ち合わせをしていた町外れにそびえ立つ一本木の場所に到着した。


「あれ? レアフレアさん、まだ来ていないのかな?」


 話ではこの日この時間に『待っている』と聞いていたので、誰もいない状況を不思議に思ったクレイは辺りを見渡した。


「みなさん! こっちです~!」


 するとどこからか聞こえてくるレアフレアの声。声と同時に一本木が揺れた。

 クレイは木の上を見上げると、太めの枝に座った褐色の肌の天使が薄着一枚を纏い笑顔で手を振っている。


「おまたせしましたレアフレアさん、いいんですか? 翼を出してて」


「クレイさん! いいんです~! これからもう山に行くんですから~!」


 レアフレアはそう言うと、枝の上で立ち上がり木から飛び降りた。

 真っ白な背中の翼を大きくはためかせる事で落ちる速度を大きく落とし、身体に負担を書ける事無く着地する。


「おう! じゃあ今日からよろしく頼むぜ筋翼人(バーディアン)のねーちゃん!」

「お仕事お休み取れましたよレアフレアさんっ!」


 降りてきたレアフレアに対し、手を上げ挨拶をするブレイバスとなぜか敬礼のようにビシッと手を額にそえるリール。

 そんな二人を見てレアフレアもまた右手は真っ直ぐ挙げ、左手は敬礼のポーズを決め返事を返す。


「ブレイバスさん! リールさん! ありがとうございますです! よろしくです!」


 そこでレアフレアはふと昨日まではいなかったもう一人の男を不思議そうに見つめる。


「え、えっと……?」


「あ、どーもッス! 自分、シュンツ・オードウィンッス!」


 レアフレアの視線の意味を理解したシュンツもやはりフレンドリーに挨拶をする。


「シュンツ、さん? あの、どこかでお会いしましたっけ?」


「へ? いやぁ、ははは! 初対面ですよ! 今回リールさん達に無理言って旅に同行させてもらう事になったんス! 俺もそこそこ腕には自信あるんでよろしくッス!」


 レアフレアは人差し指を口と顎の間に当て少し何を考えるそぶりをしたが、すぐにそれを止め返事を返した。


「そうなんですね! ではシュンツさんもよろしくお願いしますです!」


 全員が一通りの挨拶を終えたのを見計らってクレイが口を開いた。


「さて、鉱山麓までは馬車を手配してあるから、まずはそれに乗ろうか」


◇◇◇◇◇


「さて、移動といえばなんかいつも馬車に乗っている気がするな」


 馬車に揺られる中、ブレイバスが突如一人でそんな事を呟いた。


「何を言っているんだブレイバス? そんなに日常的に乗っている訳でもないし、長距離移動の時なら当たり前だろ?」


「いやまあそれはそうなんだが」


 リールはそんな意味のないやり取りはとりあえずほおっておいて、隣に座るレアフレアに話かける。


「レアフレアさんっ、レアフレアさんのお父さんってどんな人? レアフレアさんすっごい元気だから、病気になる前はやっぱり元気な人なのかな?」


「私の父はー、そうですね~、おっしゃる通り元気な人です! 元気すぎて病気の今でも無理して起き上がって大声出したりして周りを心配させちゃってます!」 


「へー! 私のお父さんも元気な人だから二人が会うと気が合いそうだねっ! あ、だから私とレアフレアさんもすぐに仲良くなれたのかもっ!」


「あははっ! そうかもしれないですね! リールさんありがとうございますです! 依頼相手がリールさんで良かったです!」


 女性二人が話に花を咲かせている所で、そこにブレイバスが横から入る。


「そんでねーちゃん、今からリールの魔法でオヤジさんの病気治しに行くわけだが、やっぱり絶対に治せるって保証はしかねるんだが、仮に、仮にだがそうなった時は他の筋翼人(バーディアン)から反感買ったりしねーか? 言っちゃなんだが筋翼人(バーディアン)は短気なイメージがある、俺と一緒でな」


「いやー私がちゃんと言いますのでそこは大丈夫だと思いますです! こんな急なお願い聞いて下さったお気持ちだけでも嬉しいのですから!」


 クレイ達が危惧していた要素の一つ、任務失敗の場合に筋翼人(バーディアン)から反感を買う可能性。

 元々明確な報酬を明示しているわけでもない任務なため、反感を買う事など逆恨みも甚だしいのだが、そこはよく知らない種族の相手。価値観の違いは多分にあるかも知れない。

 一応言葉を選んだブレイバスだったが、やはりやや配慮に欠ける物言いになっている。

 しかし元々ぶっきらぼうなブレイバスだからこそ、ストレートに聞いてもレアフレアの心証を悪くする事はなかったようだ。

 クレイはそのやり取りを横目で見てホッとした。


「俺、仕事で筋翼人(バーディアン)と何回かやり合った事もあったんスけどやっぱつよいッスからね~! いらないケンカが無いなら安心ッス!」


 安心と確証持って言えるのであれば、もはや護衛に+αとして連れてきたシュンツがいる理由は全くないのだが、クレイはそれを口に出すことはせずに皆と一緒に適当に笑った。


「あ~! それでは皆さん見えてきましたあの大きなお山が目的地です!」


 レアフレアのその言葉に一同は前方に視線を向ける。

 そこにはラムフェスでもユニバールでも見た事が無い、遠目からでも自然の緑色は殆ど見えず、固い土や岩の色であろう赤茶色を主体とした巨大な禿山がそびえ立っていた。

 レアフレアは立ち上がると、この馬車のガイドさんであるかのように手を広げ大声でその山を紹介する。


「ようこそです! 私達筋翼人(バーディアン)の国、大空勇翼鉱山(スカイディアヘイム)へ!」

ブレイバスの突然の呟きは作者が思ったことです

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