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七話 騎士団試験の自己分析

「よし! ではこれで筆記試験は終了だ! 午後から2階、訓練所にて面接を行う! それまでは自由だが時間には遅れないように!」


 筆記試験終了の時間になると、試験官の声が狭い部屋に響いた。

 試験を終えた人々が前から順に退出していく。クレイも一息つき軽く伸びをした後、その例に漏れず部屋を後にした。


 扉をくぐり人混みに紛れてロビーまで歩くと、そこには緑髪の見慣れた少女が座っていた。

 相手もこちらに気付くと、やはり見慣れた動きでパタパタとこちらに近づいてくる。クレイは足を止め、その相手が近づいてくるのを待った。


「クレイっ、試験どうだった?」


 尋ねられると、クレイは少し気が抜けたような、しかし笑顔で答えた。


「リール、ここで待っていたのか。ああ、筆記は余裕だったよ」


 そう言うとリールはいっそう笑顔になり話を続けてきた。


「へー、さっすがっ! どんなのだったの?」


 それを聞かれてクレイは試験内容を振り返る。そして、『試験』とも呼び難いあまりの内容を思い出し、軽く苦笑した。


「なんというか、最低限の常識や教養の確認と、騎士になる意気込みについて、みたいな内容だったよ。アレは誰でも問題ないだろうさ。ただ心理テストみたいなのもあったからね。それで地雷回答踏んでなければいいけど」


「地雷回答?」


 突如クレイの口から発された聞きなれない言葉に、リールは思わず聞き返す。


「絶対に答えてはいけない回答、ってものもあるのさ。例えば『貴方は人生で一度でも嘘をついたことはありますか』という質問だと、印象よくする為に『NO』って答えたくならない?」


 尋ね返すクレイにリールは人差し指を顎に当て視線を天井に向ける。

 それはリールが癖になっている考え事する際の動作だった。


「そうだねー。……でも生まれてから一度も嘘ついたことないなんて、そんな人いるのかな?」


「おそらく歴史に残る聖人くらいじゃないかな? まぁまず存在しないからね。だからここは素直に『YES』と答えとかないと嘘つきと見なされて、それだけで試験落ちちゃうのさ」


「えー、そんなのあるんだっ。でもそれクレイは全部わかったんでしょ?」


「まあ、正直に答えておけば問題はないはずだからね。でも他にも裏の事情なんかで騎士としては欲しくない思想の人材を、そういった問題を忍ばせて弾いている可能性だってあるかも知れない」


「へー、色々あるんだね。考えて答えたほうがいいのか、何も考えず答えたほうがいいのか」


「まぁこれも色々本で調べただけのことだから、間違っていることもあるかも知れない。結局は素直に正直に答える事が一番だと思うよ」


 リールとクレイがそんな他愛のないやり取りをしている間に、受験者は出口へほぼ流れきっていた。

 そんな中、試験者最後の一人がゆっくりと姿を見せる。


「あ、ブレイバスもお疲れ、って……顔、真っ青だよ?」


 ブレイバスはこちら側に向かって来ようとしているだろう。しかし、あまりにおぼつかない足取りは真っ直ぐこちらに来ることは出来ず、フラフラと数歩歩いたかと思えば壁にもたれかかった。


「クレイ、リール……俺はもうダメかも知れん……」


 目の焦点が合っておらず、今にも泡を吹いて倒れそうなブレイバスに、何かを悟ったクレイが話しかける。


「ブレイバス、お前まさか……」


「何だよあの高度な学問テストはッ! 魔導師枠ってのは貴重な魔法が国のために活躍出来るかどうかじゃねーのかッ!?」


 ブレイバスは叫ぶ。そう、この男は最低限の常識と教養があれば誰でも解ける問題が殆ど分からなかったのだ。


「……」


 自分のことでもないのにクレイは頭を抱える。試験前まで気が滅入っていて、励まされていたのは自分のほうだったのに。

 しばしの沈黙の後、クレイとリールは顔を見合わせそれぞれ口を開く。


「あー、でも君の言うとおりだ。昼からは実技兼面接だろう? そっちでしっかりアピールすればきっと上手くいくさ。多分」


「そ、そうよ! ブレイバスは【魔法】強いんだから、それをちゃんと見せれば、試験官もおどろいていい結果になるよっ。きっと」


 やや無理矢理笑顔を作りながら、可能な限り良い方向へ思考を運ばせようとするクレイとリール。

 自分でも非現実的だと思い、思わず最後に要らない言葉を付け足してしまう。


「ぐうう……一応『嘘はついたことないか?』みたいな問題には『ない』のほうに〇つけて良い奴アピールはしておいたが、どれほど効果があるだろうな……」


 その言葉を聞くとクレイとリールは完全に真顔になり、再び顔を見合わせた。


「最速の伏線回収だったね、クレイ」


 リールのつぶやきが耳に入らないくらい憔悴したブレイバスは、壁に頬擦りをしながらズルズルと沈んでいき、地面で寝込んでしまった。

 その様子に、何か声をかけようと一歩踏み出すリール。

 しかしかける言葉が見つからず、少し考えて「まぁ別にいいか」という結論に達し、視線をブレイバスから外して話題を変えた。


「そう言えばクレイ、さっき凄い人に出会って凄いもの貰っちゃったっ」


 クレイも同じ気持ちなのだろう。ブレイバスへの気遣いはそれ以上行わずリールのほうへ向く。


「え? 凄いもの?」


「うんっ、これ! 見て見てっ!」


 そう言って先ほどミーネから貰った首飾りを取り出した。宝石が放つ蒼い光がクレイの視線を奪う。


「『聖魔の守護石(ルシフィックオーブ)』っていうらしいよっ。なんだかとっても凄いお守りなんだってさっ!」


「へぇ……綺麗だね。いったい誰に貰ったの?」


 クレイはそう言いながら宝石を見つめた。何故か目を離せなくなるような、不思議な感覚に陥る。


「うん、それはね────」


 ────リールが言いかけた時、突如凄まじい地鳴りとともに視界が大きく揺れた。

 突き上げるような揺れが三人を襲い、思わず倒れそうになる。


「きゃあっ!!」

「なっ!?」

「うおッ!!?」


 叫び声を上げる三人。城の装飾物が落下し、廊下に並ぶ鎧は倒れだす。色々な物が派手な音をたて、城のあちこちでも悲鳴のような声が響く。


(地震か! このままじゃマズイッ!)


 いち早く冷静になったクレイはリールの手を引っ張り、ブレイバスのほうへ駆け寄る。寝込んでいたブレイバスもすぐに飛び起き、クレイの意図を察し行動に移った。こちらへ向かってくる。

 三人がまとまったところで、今度はリールの手を下に引っ張り無理やりしゃがませた。自身も身をかがめ、ブレイバスもしゃがんでいるのを確認すると、両手を上に掲げ叫んだ。


「【結界障壁(フォースシールド)】!!」


 障壁がクレイの手の平から広がっていき、それが曲線を描いて三人を包む。

 地鳴りは尚を止まることなく更に大きくなり、人々の悲鳴を掻き消していった。

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