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三十二話 VSラムフェス兵、夜狼人混合軍2

 クレイとレヴェリアが戦いを始めた頃、操られた二人の女夜狼人(ウェアウルフ)、ウェアリスとウルディはミザーの元へとたどり着く。


 前衛のブレイバスとエトゥは他の兵を相手に精一杯でミザーの元にはフォローに向かえない。


「う……あ……」


 ウェアリスが虚ろな目をしながらも、何かを訴えるかのように身体を震わせた。


「ウェアリス、ウルディ、許せ!」


 その様子をみてもミザーは、表情は自体は変えることなかった。しかししっかりと怒りと悲しみは先ほど以上に胸に秘め、【獣還(けものがえり)】を行い、人から獣人のものへの姿を変える。

 獣人となったミザーに、近くのジアンが瞳を光らせながら声をかけた。


「ミザーさん、あの二人! おかしいよ!」


「わかっている。しかし、ここは戦場であり二人は敵だ」


「そうじゃないよ! わからない? ミザーさんの直感で」


 出会ってさほど時間も立っていない人間の子供に、自身の直感の事をわかったように話させミザーはやや眉を潜めた。

 しかしその少年ジアンの様子も普通のモノではない。瞳を光らせたまま、真っ直ぐ無表情でウェアリスとウルディの胸辺りを見つめる。

 ミザーはその様子に口では説明できない謎の説得力を感じ、ジアンの視線の先を目で追った。するとウェアリスとウルディのみぞおちがうっすらと光っているように、ミザーの瞳には写った。

 それが何かはわからない、はずではあったが、それでもミザーは何故かどうすればいいかわかっていた。


「む……? あそこを攻撃すればいい、のか?」


 ミザーの言葉にジアンは答えない。そしてそうしている間に、先ほどまで痙攣していたウェアリスとウルディがミザーに向かって飛び掛かる。

 ウェアリスとウルディの鉤爪での突き。しかし本来の人格が拒絶しているのだろうか、その攻撃にはまるでキレがなく、獣人と化したミザーには容易く見切れるものであった。

 ミザーはそれら攻撃を最短の動きでかわし、両腕で相手のみぞおちに渾身の一撃をお見舞いする。

 ウェアリスとウルディは事切れるかのように崩れ落ちた。


「むう、倒れてしまったがこれで正気に戻るのか?」


 ミザーは自分の行動に違和感を持った。なぜ、ウェアリスとウルディのみぞおちに攻撃すれば【美麗幻想劇(マーベラスフルール)】による洗脳が解けるのか。なぜ自分はそれが直感でわかるのか。


「ジアンと言ったか。なぜお前にコレがわかった?」


 そしてそれらはジアンの一声が無ければ気付かなかっただろう。その疑問をジアンに投げかける。

 ここは戦場であり、今尚戦況は慌ただしく動いている。

 しかしそんな事はまるで関係ないかのように、まるでこの場の出来事ではないかのように、まるで日常の昼下がりの雑談か何かのように、ジアンはその場でゆっくりと口を開いた。


「ねえミザーさん、ミザーさんの直感は魔法みたいなんだよね? 僕も最近直感のような予知魔法に目覚めたんだ。つい最近だよ?」


「……」


「そしてこの森にきてから僕の魔法、凄く調子がいいんだ。それはきっと、本来の力が近くにあるからだったんだろうね」


 突如自身の魔法と相手の直感についてを話し出す初対面の少年(ジアン)。常識的に考えてそんな事をゆっくり聞いている暇などないのだが、ミザーには何故かそれが何よりも優先すべきものに思えた。


「エブゼーン将軍はミザーさんのその力を狙っている。彼は『力』を感知しているんだ。あの霧、嫌らしいくらいすっごい有能みたいだよ? クレイ達が今回の生贄(スケープゴート)に選ばれたのも、僕たち(・・・)の力が欲しいからさ。彼は知っていたんだ。僕の魔法(ちから)も、貴女の直感(ちから)も」


「そうか、お前は……」


「うん、そうみたいだね。そう言えばブレイバスも少し前に、他の人から魔法(ちから)を譲り受けたみたいだね。あれはああいう魔法らしいけど、僕らの場合はまたちょっと違う。僕はもう覚悟は出来たよ? ミザーさんはどう? 受け入れられる?」


 時が止まったかのような空間で続くジアンの問いに、ミザーはゆっくりと頷いた。


「……ああ、そうだな」



「それにしても数が多いなチクショウ!」


 雪崩れ続ける兵士にブレイバスは苦戦を極めていた。

 【破壊散弾(ブッコロシブレイズ)】連発による中距離広範囲攻撃である程度の相手は無力化出来る。

 しかしそれでもさばききれる量ではない。先ほどまではクレイやミザーの方から援護もあったが各々苦戦しているのだろう。今現在ソレは無く、更に相手からは正気の兵士の持つ弓矢による適切な援護射撃で、ブレイバスの動きは制限される。

 そして今まさに、土砂の左右から操り兵士がブレイバスに迫ろうとしていた。

 そこでブレイバスは大剣で地面を掘り起こす作業を止めた。手を顔面手前でクロスさせ、膝を曲げる事で重心をやや落とす。


(ガリオン達との戦いにリガーヴ将軍との戦い、そして今回か! 本日三回目だクソがッ!)


 胸中怒鳴りながらもブレイバスはその構えをすぐに解き、叫んだ。


「【破壊咆哮(ブッコロシブレイブ)】ッ!!」


 掛け声と共にブレイバスの身体から風が吹き抜けるようなエネルギーが放出された。

 ブレイバスがそれらの動作を行う間に既に操り兵士はブレイバスの眼前へと迫る。


(見えるッ!)


 しかし相手の攻撃をブレイバスは尋常ではない動きでかわし、大剣を最短の動作で振るい操り兵士を薙ぎ倒した。

 続いて飛んでくる矢も、数本まとめて大剣による薙ぎ払いで粉々に吹き飛ばす。


(やれやれ、どれだけ持つかね? 俺の身体は!)


 身体能力を爆発的に高める【破壊咆哮(ブッコロシブレイブ)】。しかしその代償は安くはなく、効果が切れた時、全身を痛みと虚無感が支配する。ましてや同じ日に複数回使用するのであれば持続時間はより短く、反動はより大きくなる。つまり────


(今回【破壊咆哮(ブッコロシブレイブ)】が切れたとき、俺は周りに圧殺されちまうな!)


 そこまで分析するとブレイバスは大剣をより強く握り締め、迫りくる敵の群れに飛び込んだ。


「だったらその前にテメェら全員ぶっ飛ばすッ!!」


 言葉とは裏腹に、ブレイバスは覚悟を決めていた。自分はこの場で死ぬかも知れない。しかしその時までに一人でも多くの敵を倒せれば、残りはクレイやリール達が何とかするかも知れない。

 いつも自分は真っ直ぐだった。いつも自分は愚直だった。それをクレイが立ててくれる。それをクレイが補ってくれる。

 いつも自分は間違っていた。いつも自分は傷ついていた。それをリールが叱ってくれる。それをリールが癒してくれる。

 ならば命尽きるその瞬間まで、自分は自分のあるままで行くべき!


「オオオオオオオオオォッ!!」 


 その想いを爆発させブレイバスは大剣を振るう。

 ────しかしその大剣が相手に直撃する一瞬前に、横からすごい勢いで等身大のナニカが飛んできた!

 そしてそのナニカにより前方の操り兵士はことごとく薙ぎ倒される。


「な!?」


 ブレイバスは困惑する。倒れた兵士達を見ても、やはり兵士以外は倒れていない。そして同じ方向から再びモノが飛来し、先ほどと同じく操り兵士を薙ぎ倒した。

 二撃目でようやく飛んできたモノがなんなのか、ブレイバスは認識した。操り兵士達を薙ぎ倒したソレもまた、操り兵士自身だったのだ。

 そしてその飛んできた方向へ目をやると────


「よう、待たせたな」


 そこにいたのは筋肉隆々の緑髪の大男、ブレイバスとクレイの師にしてリールの実父ゼイゲアスが、こちらと同じく操り兵士達の群れを単身で相手にしていた。


 物量で轢き殺す勢いで迫りくる操り兵士を、ゼイゲアスは何でもないかのように腕力でせき止め、拳の一撃で片っ端から撃退し、そして適当な一体を掴んだかと思えばこちらに向かって遠投していたのだ。


「もいっちょ行くぜッ!!」


 三撃目の援護射撃(・・・・)がブレイバスに迫る兵士達を更に薙ぎ倒す。それによりブレイバスに迫る脅威はもはやほぼ無くなっていた。


「先生! 危ない!」


 ブレイバスが叫んだ。突如現れた超人(ゼイゲアス)を脅威と認識したエブゼーン親衛隊達が、ゼイゲアスに向かって矢を放ったのだ。


「ああん? 効かねーよ」


 凄まじい速度で迫る複数の矢を、ゼイゲアスは適当に操り兵士(拾った盾)で受ける。


「おらよッ!」


 そしてそのまま操り兵士(その盾)を弓隊の方へ遠投した。

 その人間砲撃は弓矢と変わらない速度で木の上で陣取る弓隊に直撃し、エブゼーン親衛隊はバラバラと木の上から落ちて行った。


「さぁてこの糞面白ぇお祭り、勿論俺も混ぜて貰えるんだろうな?」


 肉体一つであっという間に戦況を一変させたゼイゲアスに、半ば死を覚悟したブレイバスは勢いのやり場を完全に失った。


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