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五話 騎士団試験に挑む者達

「うわー、おっきいねー」


「おー、見渡す限りの人だな。みんなここに住んでんのか」

 

「こりゃ迷子になったら森より大変そうだね。また違った方向性で」


 長旅が終わり、王都に着いた3人は辺りを見渡していた。

 普段の行動範囲が孤児院のある森と歩いて半日の小さな村、後はたまにゼイゲアスに連れられて少し大きめの町まで行く位の3人にとって、この街並みは見慣れない光景である。

 まだ遠くにあるというのにそれでもなお圧倒的大きさの城、見渡す限り賑わう商店、絢爛豪華な建築物、そして辺りを埋め尽くす圧倒的な人、人、人。 いまだ遠くにあるというのに、ここからでも分かる城の圧倒的大きさ、意気揚々と賑わう商店街、絢爛豪華な建築部、そして辺りを埋め尽くす圧倒的な人、人、人。


「……」


 その光景に、好奇心より先に何か不安を感じる。安心できる拠点が欲しくなる。

 

「まずは宿を探そう。試験は明日の朝だしね」


「おう、宿はどこだ? クレイ」


「はーい、着いてくね? クレイ」


 クレイの提案に賛成する二人。宿の探索に関しては完全に人任せなようだが、その反応にも慣れた口調でクレイは答えた。


「城下町の地図によると……あっちかな? 多分20分くらいの距離だと思うけど」


「おう、任せたぞ、クレイ」


「はーい、流石だね、クレイ」


「普段からそれくらい素直で大人しいと、僕やゼイゲアス先生も楽なんだけどね」


「でもお父さんがいたら私、もっとはしゃぐよ? クレイ」


「先生がいれば、なんかあっても何とかしてくれそうだしな! お前もそれ位頼られる男になれよ! クレイ!」


「そいつは頼りなくて申し訳ございませんね」


 クレイは突っ込むかわりに皮肉をこめて返し、宿に向かおうと地図から目を離すと同時に一歩踏み出す。


 その時、目の前の人影がある事に気付き、とっさにそれを避けようとした。しかし間に合わず結局人影にぶつかりバランスを崩し、倒れる事となってしまう。クレイらしからぬミスだった。


「きゃっ! クレイ、大丈夫?」


「何やってんだよクレイ! あー、すんませんウチの連れが」


 駆け寄るリールとブレイバス。ぶつかった男はクレイに手を差し伸ばす。


「フッ 大丈夫かい? こちらこそすまないね フッ」


 クレイは尻餅をついたまま男を見上げていた。

 男は何というか、白い。カールのかかった白髪に眉毛。耽美な整った顔。白を基調とした服は貴族のように宝石が散りばめられ光り輝いている。履いている靴は先の尖った独特な形をしており、やはり白い。そして右胸には王冠をかぶった竜の紋章がつけられている。


 ぶつかった事もそうだが、それ以上にぶつかった相手が信じられなかった。この紋章の意味をクレイは知っていたからだ。

 我に返ったクレイは男の手を借りず、素早く起き上がり男に頭を下げる。


「よそ見して歩いていまして、申し訳ございませんでした!」


 クレイのその反応と、右胸の紋章にも気が付いたのだろう。ブレイバスは悲鳴のような、それでいて歓喜のような声を口から漏らす。


「【竜聖十将軍】……!」


 ────【竜聖十将軍】

 数十万の兵力を有する大陸最大の軍事国家ラムフェスにおける最高位の騎士の称号。万単位の兵を指揮する権限を持ち、例外なく各々の【魔法】を使いこなす。一人一人が一騎当千の実力者だという。


「フッ 気にすることはない。怪我がないようで何よりだ。所でその恰好、もしかして騎士志願者かい? フッ」


 2人の武装が目に入ったようだ。クレイとブレイバスは並んで気をつけの姿勢で答えた。


「はい! そうです!」


「明日の騎士団試験に参加させていただきます!」


「フッ 明日ということは騎士団魔導師枠試験か。なるほど、一般人が一気に騎士になるには通常それしかないが……君たちも魔法が使えるとはね フッ」


 感心した様子で男は言った。続けて喋る。


「フッ 私の名はヴィルハルト。【白竜】ヴィルハルト・ラズセールだ フッ」


 この国で騎士を目指す者なら、いや、最低限の教養があるものならば誰でも知っていた。この国で騎士を目指す者なら、否、親がこの地に住まう者であるならば誰でも知っている。いわゆる常識だ。

 軍事国家として他国に幅を利かせているこの国では、貴族よりも、あるいは王族よりも【竜聖十将軍】の存在は有名だったのだ。そして【竜聖十将軍】には竜の紋章と共に、竜に冠する称号が与えられる。


「フッ 明日の試験には私も視察として向かう。楽しみにさせてもらうよ フッ」


 そう言ってヴィルハルトは3人から視線を外し、城へ向かって歩いて行った。

 その様子を周りの人々が気付きだす。


「ヴィルハルト様!」

「お帰りなさいませ! ヴィルハルト様!」

「【白竜】様!? いつの間に…」

「いつもありがとうございますヴィルハルト様!」

「ラズセール様! ……また御一人で!?」

「ああ、お会いできて光栄です!」

「【輝く変態(エンペルエンジェル)】ヴィルハルト様!」


 ヴィルハルトは様々な歓声に笑顔で手を振りながら進んでいった。

 思えばこれほど目立つ格好の、有名な人間がついさっきまで誰一人気が付かなかったのも異常な話である。お付きの兵士も一人もいない。

 つまり『クレイがヴィルハルトに気がつかなかった』のではなく『ヴィルハルトが突然現れた』と考えたほうが自然だ。

 それも通常ではありえない話なのだが、この男も未知の【魔法】の使い手なのだ、こちらの想像の上を行っていたとしても決して不思議なことではない。


 嵐が過ぎた後も三人はしばらく立ち尽くし、歓声が聞こえなくなる頃、ようやく重い足を宿に向かわせた。


◇◇◇◇◇


 翌朝、宿を出て3人は城に向かって歩き始めていた。

 この街でラムフェス城に次ぐ大きさの建物である教会の鐘が鳴り響く。その音と同時に街の人々が活性化したように働きだし、数分と経たず昨日と変わらない人ごみが街を覆い、街は活気に満ち溢れた。


「昨日は昨日で焦ったが、今日は今日とて全力を尽くそうぜ」


 拳を握りしめたブレイバスが意気込みを語っている。文法としては間違っていたが、心境それ所ではないクレイは特に指摘しなかった。


「あー、うん、そうだね」


 適当な相槌を打つクレイだったが、事実その通りだった。

 お偉いさんにぶつかったからと言って何が変わるわけでもない。心の乱れが今日の試験に悪影響を及ぼすのであればそれは、すぐさま払拭しなければならないのだ。


「もー着くねっ。ところで試験ってどんな事するの?」


「まず筆記試験、それから魔法披露もかねて面談があるらしいよ。ヴィルハルト将軍、面接官だったりするのかな?」


 聞いてくるリールに答えるクレイ。

 昨日の出会いが『倒れている老人を助け、その老人が実は面接官だった』、というようなものなら心も踊るだろうがそうもいかない。別段悪い印象を与えたわけでもないはずだ、とクレイは自分に言い聞かせた。


「んー、じゃあ試験自体は私は見られなさそうだね。ちょっと残念」


「見せモンじゃあねえからなぁ。ま、試験官にとっちゃあ見せモンかもしれねえけど。……さて、着いたな。」


 ラムフェス城の門の前で、3人は見上げる。高さ20mは有ろう巨大な門の下では自分達はちっぽけな存在のような気がした。


「城下町からでもデカく見えたが、それでも真近で見るととんでもねぇな。……さて、輝かしい未来への第一歩だ。クレイ! いつまでもへこんでんじゃねぇぞ! サクッと試験突破して、パパっと騎士んなって、軽~く昇進して、ガッツリ金稼ごうぜ!」


 クレイを励ましてるのだろう。クレイは前向きに受け取り、気持ちを切り替えて返事をする。


「ああ……そうだな!」


 3人は門をくぐり、試験に臨んでいった。

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