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八話 VS灰色の女騎士レヴェリア

 話し合いの場にいた全員が外に出ると、エブゼーンが口を開いた。


「それでは、クレイ殿、ブレイバス殿、順番に我々と一対一の試合を行っていただきます」


 態度こそは腰が低くも写るエブゼーンだったが、その口調は有無を言わせぬ運び。

 やや腑に落ちないクレイであったが、先ほどまでずっと黙って座っていただけのブレイバスは、腕をクロスさせ腰を捻り、嬉しそうに柔軟運動を行っている。


「じゃあ俺からでイイっすかね! お相手は誰です!? 強そうな方々が並んでいますけど!」


 完全にやる気のブレイバスがエブゼーンに問いかける。そんなブレイバスに、エブゼーンもまた笑顔で返した。


「ええ、この【奇竜】親衛隊、随一の実力者がお相手しましょう。レヴェリア!」


 エブゼーンが指パッチンを行いながら名前を呼ぶと、後ろに並ぶ兵士たちの中で最も小柄な、灰色の髪と茜色の瞳をした女騎士が無言で前に出る。

 その様子を見てブレイバスは目を丸くした。


「あん? 女……女性の方が俺の相手っすか?」


「ええ、しかしこのレヴェリア、先ほども言った通り私の部下の中でも最強の剣の使い手。きっとご期待に添える者になるかと」


 こちらが試される居る側にも関わらず『期待に添える』という言い回しはブレイバスの性格をくみ取っての事だろう。


「では、あくまで試合ですので、こちらの木剣を」


 エブゼーンは更にそう言うと、長剣サイズの木剣をそれぞれブレイバスとレヴェリアに差し出した。


◇◇◇◇◇


 ブレイバスは受け取った木剣でつまらなさそうに素振りをしていた。戦う相手が女だから、ではない。武器に不満があるのだ。

 その何時ぞやと同じ様子に、離れた所から見ているクレイとリールは軽く笑った。


「……レヴェリアです。よろしくお願いします」


 ブレイバスに相対する女騎士が名乗り、一礼をする。

 それに対してブレイバスも向き直り、礼を返した。


「ブレイバス・ブレイサー。よろしく頼むぜ」


 名乗り合うとお互いに剣を構える。そこでエブゼーンから号令が入った。


「では……始めなさい!」


 その号令と共に、レヴェリアが仕掛けた。素早い足運びで瞬時にブレイバスの位置まで距離を詰め斬りかかる。

 それに対してブレイバスも木剣を振るい、相手の斬撃を受け止める。

 ────はずだった、が、レヴェリアは自身の剣が相手の剣に当たると同時に、剣を握る手首の力をわざと緩ませ、それにより剣を滑らせた。更に自身もまた滑るように斜め前に重心移動を行い、ブレイバスの懐に入る。

 その刹那の攻防を見て、クレイは胸中叫ぶ。


(あの動き、普通の剣術じゃない!)


 ブレイバスの木剣は力の行き所を失い空振る。その崩れた体勢のブレイバスに、レヴェリアは踏み込みと同時に最速の突きを繰り出した。

 ────が、その突きはブレイバスの拳によって真横から打ち払われた。


「ッ!?」


 完全に一本取ったつもりでいたのだろう。予想外の出来事にレヴェリアの表情が驚愕の物に変わる。

 続いてブレイバスは、懐に入られた相手を木剣の間合いまで離そうと、レヴェリアに強烈な蹴りを仕掛ける。それをギリギリで察知したレヴェリアは蹴りを喰らいながらも自身も後方へ跳び衝撃を逃がした。


「……」


 距離を空けられたレヴェリアは体勢を立て直しながら、ブレイバスを睨み付ける。ブレイバスもまた木剣を握り直し、相手を睨み付けた。

 そして今度はどちらも動かない。お互い、相手の動作が自分の予想を上回ったのだろう。相手のわずかな動きも見逃さない、とでもいうように目線を鋭くした。


 数秒、その硬直が続いたと思うとレヴェリアが口を開いた。


「……提案があります。貴方、自分の武器を使いなさい」


「あん?」


 突然のレヴェリアの言葉に、ブレイバスは訳が分からず聞き返した。


「貴方は強い。そこで私も魔法で勝負に出させてもらいます。しかし、貴方の魔法は木剣では使えないと聞きます。こちらだけ使うのはフェアではありません。ですから今から、本来の武器に持ち替えて仕切り直しましょう」


 ブレイバスの魔法【破壊魔剣(ブッコロシブレイド)】は手に持つ武器に黒い(オーラ)を纏わせ破壊力を上げるもの。以前、木剣でそれを使用した時は木剣は粉々になってしまった。その場にレヴェリアがいたわけではないが、『悪魔殺しの英雄』の情報は既に入っているのだろう。

 しかし【破壊魔剣(ブッコロシブレイド)】自体、決して試合向けの魔法ではない。元々一本取る事を目的であるがため、殺傷能力の低い木剣を使用しているのだ。それをこの魔法を使おうものならば、相手を必要以上の危険を与えてしまう事になるのだ。

 レヴェリアの提案に、ブレイバスはフッと笑い、返した。


「心配無用だ。このままやろうぜ。勿論魔法を使ってもかまわねーからよ」


 ちなみにブレイバス自身も、仮に【破壊魔剣(ブッコロシブレイド)】を使うのであれば、試合だからといって手を緩めたり、相手に大ケガをさせる事を恐れて委縮してしまうような事はない。師ゼイゲアスから教わった『やるからには思いっきり殺れ』の考えを貫き、最悪の場合ソレは事故として割り切る心構えと精神力は持ち合わせている。


 ブレイバスの返しに、レヴェリアはやや顔をしかめた。


「私程度なら、初見の魔法を相手にしても問題ないと言う事かしら?」


「いいや違う、ねーちゃん、アンタは強えよ。俺も魔法を使って全力で行かせてもらう。……ただ、それに大剣(じぶんのぶき)は必要ねえ」


 ブレイバスの返答に対して、それ以上、異論も不満も挟まず、レヴェリアは自らの魔法を唱えた。


「【大天使の翼刃(セイクリッドフェザー)】」


 レヴェリアの周囲に六本の刃物が浮かぶ。クレイの【結界光刃(フォースセイバー)】と似ている魔法の刃であった。が、クレイの『防御魔法を攻撃用に応用させたもの』等ではなく明らかに攻撃を目的とした物。当然、戦闘機能はその比ではないものと予想できる。


 一方ブレイバスは、自らの顔面を隠す様に、やや顎を引き両手をクロスさせた。更にその場で踏ん張るかのように膝を曲げやや重心を落とす。

 まるで今から迫りくるだろう魔法の刃を受け止めようとするかのようなポーズ。しかし、ブレイバスはそのポーズを勢いつけて解き、叫んだ。


「【破壊咆哮(ブッコロシブレイブ)】ッ!!」


 ブレイバスの身体から風が吹いたかのようなエネルギーが放出され、その全身から蒸気が迸る。

 その様子を見て、クレイは目つきを鋭くした。


(あの蒸気はカイルさんの魔法と同じ……ブレイバスのやつ! もうここまで使いこなせるようになったのか!)


 それと同時にレヴェリアが左手をブレイバスの方にかざした。すると宙に浮かぶ魔法の刃の内、四本がブレイバスに向かって発射される。


 迫りくる四本の刃を、ブレイバスはうち二本は高速で振るう木剣で叩き落とし、残りの二本をいつも以上に素早い身のこなしで回避した。目標から外れた刃は後方へ消える。

 そのままブレイバスはレヴェリアに接近する。そのスピードも並以上のものであり、レヴェリアからすれば猛スピードで迫りくる巨体はそれそのものだけでも回避も防御も困難だろう。

 そこでレヴェリアは迎撃を試みた。木剣をブレイバスに振るうと同時に、残る二本の【大天使の翼刃(セイクリッドフェザー)】をブレイバスに発射する。

 それに対してブレイバスは自身に迫る魔法の刃はそのまま受けた。刃が軽鎧を通して左肩と右腕に突き刺さりながらもその突進の勢いは全く緩めず、先ほどを上回る強さの一太刀でレヴェリアの木剣を弾き飛ばした!


「な……!」


 レヴェリアは絶句する。そしてその一瞬後にはブレイバスの木剣の剣先が自分の喉元に突き付けられていた。


「……勝負、あり!」


 そこでエブゼーンが試合終了の号令をあげる。

 ブレイバスはその号令を確認すると、木剣を降ろし一歩引いた。

 レヴェリアも悔しそうに口を引き締めながら一歩引き、お互い一礼をする。


「ブレイバスっ!」


 その礼の後、すぐにリールがブレイバスに駆け寄った。


「もうっ! クレイといいブレイバスといい無茶な動きばっかりして! 怪我した所見せてっ!」


「あー、しゃあねーだろ、ねーちゃん強かったぜ。無傷で勝つのは無理だありゃ」


 そんなやり取りをしながら二人は下がる。それと入れ替わるようにクレイが場の中央に歩いて行った。


「では、僕ですね。相手して下さる方はどなたでしょうか?」


 そういって先ほどのブレイバスと同じように後方の屈強な兵士達に目をやる。

 ブレイバスが相手したレヴェリア以外はみなブレイバスにも負けない筋肉隆々な戦士達。誰を相手取っても単純な力比べでは勝てないだろうとクレイは考えていた。

 そこでエブゼーンがにこやかに口を開く。


「はい、ではこの私が」


 その一言にクレイは戸惑った。【竜聖十将軍】の一人【奇竜】エブゼーン・キュルウォンド。体格こそは平均的な男ではあるが、与えられている最高位の将軍であるその称号は、『一騎当千の実力者』であることを意味する。

 過去に、十将軍と試合及び共に戦闘をした経験のあるクレイにとって、その戦闘力は体格に左右されない事は重々承知している。


「将軍自ら、ですか。……胸を借りるつもりで挑ませていただきます」


 先ほどまでのやり取りで、やや相手を持ち上げて喋る事の多い印象があったエブゼーンだったが、クレイのその言葉に対しては全く否定の言葉は入れず笑顔で返した。


「ええ、良い試合にしましょう」

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