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四話 襲撃

 孤児院を出発して二日目の昼下がり、馬車が停止した。

 先ほど休憩を取ったばかりである。クレイはそれに疑問を感じ、馬車の中から顔を出し馬主に話しかける。


「おじいさん、どうしたんですか?」


「あぁ、渡ろうとしていた橋が落ちていてな。……はて、丈夫な橋なんじゃがどうしたことか」


 そう言われてクレイは橋があるはずの方向へ目を向ける。

 木製ではあるが馬車が数台渡っても壊れなさそうな大きな橋だったものだと予想できるモノが、川の両端に残骸のみを残していた。


「あらら」


「おいおい、これじゃあ王都までいけねーんじゃねえの?」


 同じく顔を出したリールとブレイバス。

 その内ブレイバスが即座に思いつく問題を口にした。が、馬主はすぐに反論する。


「いいや、問題はない。少し迂回すれば……ほれ! 見えるじゃろう! あっちの小さな橋からでも渡れるわい。そっちに行くぞ」


 馬主が言う方向へ視線を向けると、確かにそちらにも橋が見えた。遠目で見てもずいぶん小さな、古臭い橋である。


「あれはこっちが完成してからは誰も使わんようになった橋だが、昔はよく使っとったもんじゃ」


 その橋にたどり着くには林を抜ける必要があった。馬主はそちらに進路を変える。

 クレイはどこか腑に落ちなかったが、それが何か分からず口を出せないでいた。


(そもそもなぜ橋は落ちたんだ? 落ちた橋を詳しく見てはいなかったけど……)


 馬車が林に差し掛かる頃、クレイは突如気配を感じた。そして自分の中でその気配と先ほどまでのわだかまりの正体とを結びつける。


「おじいさん! すぐに戻って! これは罠だ!」


 クレイは叫んだ。が、遅かった。

 林の中からいくつもの矢が飛来し、馬車に次々と突き刺さっていく。運よく人や馬には当たらなかったが、それにより一頭の馬が驚いてしまい、足をひねって倒れてしまった。


「な……盗賊か!?」


 馬主は叫ぶ。そう、大橋はここらを縄張りとする盗賊達によって、人為的に落とされていたのだ。

 そして古い橋を渡ろうと林に入る者を襲う。実にシンプルな罠だった。


「チッ!」


 ブレイバスが舌打ちしながら馬車から飛び降りる。クレイもすぐにそれに続いた。

 弓矢の第二陣が来る。クレイはそれに合わせるように両手を前に突きだし、力を込め大きく叫んだ。


「【結界障壁(フォースシールド)】ッ!」


 迫りくる複数の矢から馬主と馬を守るように光の壁が広がる。馬車全体までは流石に範囲が足りなかったが、馬車自体には当たってもさほど問題はないだろうと判断した。

 矢の威力は壁の強度を上回り、次々と障壁に突き刺さる。

 が、それにより矢の威力は完全に殺された。うち一本の矢が障壁を貫通し、突き出しているクレイの左小指をかすめる。多少血は出るがそれで魔法を緩めるわけにはいかない。

 矢が来る方角に視線を向けた。そびえ立つ木の内、二本の大木の上に数人の人影が見える。

 ブレイバスもそれに気がついたのだろう。そちらに素早く走りながら、叫ぶ。


「【破壊魔剣(ブッコロシブレイド)】!!」


 ブレイバスの持つ大剣が黒い(オーラ)で覆われていく。木の近くまで着くころには既に刀身全てが黒く染まっていた。

 ブレイバスはその大剣を両手持ちし、思いっきり大木に叩きつけた。


「オラァッ!!」


 叩きつけた部分が思いっきり砕け、木が傾く。


「なにぃッ!?」

「うおおッ!!?」

「ええぇッ!!??」


 倒れていく大木のバキバキと鳴る音と共に盗賊の絶叫とが響き渡る。

 が、倒れた大木の轟音によりどちらも掻き消された。


 違う大木の上の人影が、ブレイバスの方へ弓矢を構える。

 しかし、その時には既にクレイが動いていた。

 【結界障壁(フォースシールド)】を解き、右手に持った長剣を横に構え、切っ先に左手を添え叫ぶ。


「【結界光刃(フォースセイバー)】!!」


 両手から魔力が長剣が伝わり、刀身から【結界障壁(フォースシールド)】と同質の半透明の刃が、勢いよく発射された。それが弓矢以上の速度を持っているため、衝撃波のように見える。────その疑似衝撃波が一人の盗賊の弓に見事命中し、弓は盗賊の手から弾き飛ばされた。

 それにより他の盗賊の手も止まる。慌ててクレイの方へ向きなおすが、その時には既にブレイバスが大木の麓にたどり着いていた。


「どりゃああッ!!」


 再び大剣を大木に叩きつけると、先ほどと同じような音と悲鳴がして、大木は倒れた。


「ばきばき、ぎゃああ、ずしーん」


 馬車に隠れていたリールが棒読みでそう言い終わる頃には、全ての盗賊は地面に落とされ、弓矢を放っていた盗賊は誰一人動けなくなっていた。


 ────突如、馬車の進行方向だった方角から物音がする。

 そちらに視線を向けると、剣を持った盗賊が四人立っていた。矢でバランスを崩した馬車をそのまま襲う役割だったのだろう。

 

「クソガキ共がッ!」


 先頭の盗賊がそう叫ぶと、一番厄介と見なしたブレイバスの方へ襲い掛かっていく。


「へっ!」


 自身に向かってくる相手を見て、ブレイバスはつい鼻で笑ってしまった。

 ────数がいれば俺に勝てるとでも思ったか? と。

 ブレイバスは持った大剣を、地面に深く突き刺した。


(一昨日のクレイとの戦いで閃いた、新・必殺技……!)


「しゃらくせえッ!! 【破壊散弾(ブッコロシブレイズ)】!!」


 かけ声と共に大剣を前に押しやりながら振り上げた。すると地面の破片が凄まじい勢いで掘り起こされ、それが大粒の散弾となり盗賊たちを襲う。


「ぐあッ!」

「いでッ!!」

「があぁッ!!」


 顔面や腕など、防具がない部分の皮膚に次々と散弾がめり込む。盗賊たちは悲鳴をあげてのた打ち回った。

 転がっている盗賊にクレイとブレイバスは近寄り、手に持つ武器の刃のない部分で一人一人強打し、気絶させていった。


◇◇◇◇◇


 戦いが終わると、リールはクレイの手の治療を行っていた。

 ブレイバスが馬車にあった縄で盗賊を縛り上げながらそのリールに話しかける。


「外ってのは俺らが思っていたより物騒みたいだな! リール! これに巻き込まれんのも自己責任だからな! なんかあっても知らねーぞ!」


「もう、分かってるよっ! でもでも! 私がいて良かったでしょ? お馬さんも癒せるしっ、クレイも運が悪かったらさっきの弓矢で指もげてたしっ」


 リールの同行を認めた二人だったが昨日の今日でコレである。自分たちの判断ミスもあったかもしれないと軽く頭を抱えるクレイ。

 しかし、リールが言っている通り、今まさにその魔法(ちから)の世話になっているため、この場は何も言えなかった。


「千切れた指も治せんのか?」


 ブレイバスもまたその正論に言い返せず、話題を変える。


「もげてからあんまり時間たってないなら、多分ねっ。癒した後、完全にくっ付くまで当分安静だろうけどっ。……はいっ、【愛の癒し手(ヒーリングタッチ)】おしまいっ! クレイの手はこれでちゃんと癒えたでしょっ!」


 表面の傷は消えたが、クレイは手を動かすと多少内部に残っている損傷による痛みに気がついた。しかしそれは告げずに答える。


「うん、バッチリだ。ありがとう、リール」


 そう言うとリールは得意げに胸を張り、今度は馬主の方へ目をやった。


「じゃあ、次は足を挫いたお馬さん癒しますねっ。あ、おじいさんも怪我ないですか?」


「あ、ああワシは大丈夫だ。すまないね。お嬢ちゃん」


「どういたしましてっ、任せてくださいっ! おっうまっさん~っ、あっしみっせて~っ!」


 妙なリズムをとりながらケガをした馬の方へ歩いて行き、淡い光でその脚を覆い始めた。


「君たちもすまないね。まさかこんなことになるなんて……」


 初老の馬主が申し訳なさそうに口を開く。それに対しクレイは穏やかに答えた。


「いえ、寧ろ良かったです。僕らがいる時で。盗賊との遭遇なんて、中々予測出来るものでもないですし、ただの商人や旅人だったらみんな盗賊にやられていたかも知れません。それに……」


 そこまで言いかけて盗賊を縛り終わったブレイバスが叫ぶ。


「クレイ! コイツら金品持ち歩いてやがったぞ! まだ出てきそうだ! こりゃコイツらを役所に連れてっいった際の報奨金と合わせてかなり儲かるぞ!」 


「ブレイバス! それ盗ったら僕らも犯罪者の仲間入りだよ!」


「なにィ!? そうなのか!?」


 金品を強奪するのはともかく、ブレイバスの言う通り盗賊を役所に連れて行けばかなり纏まった金額が手に入る。


「それに、僕らにもメリットありますから」


 クレイは約束された思わぬ臨時収入に、つい顔がほころんだ。

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