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二十七話 VSザガロス・ガイザード2

 ブレイバスの一撃により、ザガロスは派手に吹き飛び今まで以上の土埃が巻き上がる。


(手ごたえ充分! ……どうだ?)


 大剣を振り切ったブレイバスは胸中で独りごちる。

 土埃が舞っている状態では相手の様子がわからず、下手に追撃した場合、相手が無事であるならば死角からの反撃を喰らいかねない。

 そこでブレイバスは、自身にかけている魔法の内【破壊魔剣(ブッコロシブレイド)】だけは解き、剣を構えたまま土埃が収まるのを待つことにした。

 その時、後方から叫び声が聞こえる。


「【愛の弾丸(ヒーリングシュート)】!!」


 声の方角から二つの光る玉が飛来し、その内一つはジークアッドに命中、もう一つは武器を構え前方に集中しているブレイバスの後頭部に激突し、その衝撃によりブレイバスの視界は強制的に足元の方を向くことになった。


「ブレイバスっ! ジークアッド将軍っ!」


 その光の玉に続くように、小柄な少女が綺麗な緑髪をなびかせながらパタパタと駆け足で近づいてくる。

 ブレイバスはそちらに振り返り半眼で呻いた。


「リール、俺はケガしてねえよ」


「あれ、そうだった? じゃあ良かった」


 近づいてきた少女、遠距離回復魔法【愛の弾丸(ヒーリングシュート)】を放った張本人リールに向かい文句を垂れるブレイバス。

 不満を垂れられた当の本人は、胸を撫でおろすように安心した笑顔をブレイバスに向けた。

 よく見るとリールの全身は既に汗だくである。この混戦の中、先の筋翼人(バーディアン)達との戦いの時のように走り回って魔法を使い続けていたのだろう。


「こっちは一度押され始めたけど、今は結構持ち返してきたよっ! 筋翼人(バーディアン)さん達、やっぱり強いっ!」


 リールの言葉にブレイバスは周囲を見渡した。

 ジークアッドの敗北により一時悪くなっていた戦況だったが、それでもここは筋翼人(バーディアン)達の庭である大空勇翼鉱山(スカイディアヘイム)

 ユニバール軍とラムフェス軍はどちらも歩兵で構成された地上部隊に対し、この複雑な地形は翼を持つ者達の独壇場のようだ。

 人間の両軍が白兵戦を行っている間に、いたるところにある天然の高台からの援護射撃と奇襲による一撃離脱。

 それだけのシンプルな戦略で、戦況はユニバール側に傾いていた。


 ブレイバスは理解した。

 この東門に来たとき、南門と同じように鉄の門を始めとした地形は滅茶苦茶に破壊されていた。

 その人知を超えた作業は、全てザガロスにより行われていたのだのだと。

 そしてそのザガロスは、ジークアッドとの一騎打ちに時間を使い、今なお自分が抑えている。

 で、あれば高さと(ユニバール軍)を味方につけている今現在、筋翼人(バーディアン)達が負ける要素がないのだ。

 それに加え、(ユニバール軍)にはリールがついていた。無論今回は先ほどの戦いとは異なりラムフェス軍は完全に敵。リールは味方の回復のみに集中できる。


「そうか、だったら後はこっちだけだな」


 ブレイバスもはニッと笑って見せ再び前方の土煙に向き直る。


「む……済まないリール殿、助かった」


 【愛の弾丸(ヒーリングシュート)】を喰らい癒しの光に全身を包まれた結果、立てるほどには回復したジークアッドもリールに礼を言うと土埃の方へ目を向け直した。

 ────その時、静まりかけていた土埃から鉄の塊が勢いよく飛び出してきた!


「む!」

「よっ!」


 飛んできたものはザガロスが持っていた戦斧。その軌道上にいるブレイバスとリールは余裕を持ってソレを回避する。

 先ほどジークアッドの時に見せた武器の投擲を、ザガロスは再び土煙の中から行ってきたのだ。

 更にザガロスは戦斧の後を追うように土煙から姿を現し、圧倒的な歩幅でタックルを仕掛ける!


 最初の戦斧を余裕を持って回避したブレイバスには、そのタックルもまた回避は間に合う。

 ────どころか、回避するまでもなかった。

 ザガロスのタックルは戦斧の軌道から逸れる事無く続き、既に回避行動を終えていたブレイバス達の横を通りすぎる。

 そんな飛び出してきたザガロスに対し、ジークアッドが声を張り上げる。


「な……! 先ほどの一撃ですらもヤツには効いていないというのか!?」


 自身の【王道聖剣(エクスカリバー)】は効かなかった。

 更にそれ以上の破壊力を誇り、事実先ほど鋼鉄の門をも砕いて見せた【破壊魔剣(ブッコロシブレイド)】の一撃を受けて尚、生きている所かすぐに走り出せることなどジークアッドには考えられなかったのだ。


 突進をし、10メートル以上距離を取ったザガロス。ブレイバス達からは背中を向けている形になっており表情は見えない。

 しかし、ブレイバスはそこで軌道のズレた突進の意味を理解する。

 ザガロスが今現在立っている場所の足元には、ザガロスが投擲した二つの武器が転がっていた。


 ザガロスは右手で超大剣を、左手で戦斧を拾い上げ、ゆっくりとブレイバスの方へふりかえる。


「あー、やりやがったな! ブレイバス!」


 常人では一つを担ぐ事も困難な重量の、冗長な大きさである武器を二刀流で構えるザガロス。

 先ほどと変わらない軽口で嗤いかけては来ていたが、その様子は少しだけ違っていた。

 嗤っている口からはわずかに血を流しており、【破壊魔剣(ブッコロシブレイド)】を直撃させた脇腹もわずかに凹んではいる。


「か~、俺の渾身の一撃でもその程度のダメージですかいザガロス将軍!」


 苦笑いを浮かべながら再び大剣を構えなおすブレイバス。その隣でジークアッドもまた剣を構えながらブレイバスに話しかける。


「ヤツの防御力の強さはなんなんだ! 君の魔法を喰らってなぜあれほど平気でいられるのだ!? ブレイバス殿、ヤツの戦いを昔見たことがあるといったな! 何か知っているのか!?」


「……筋肉」


「え?」


 投げかけられた疑問にブレイバスが一言で答える。ジークアッドは訳がわからず聞き返した。


「ザガロス将軍の筋肉は常人の数倍の密度があり鉄以上に硬ェ、多分それを支える骨もな。それがサイズ自体も常人の数倍に膨れ上がるまで鍛えた結果、最強の攻撃力と無敵の防御力を発揮している……つまり、あの強さは単なる身体能力(フィジカル)だ」


 ブレイバスの返答にジークアッドは言葉を失う。

 その様子をみてザガロスは大笑いをし、ジークアッドの代わりに言葉を投げかけてきた。


「はっはっはっ! よくわかってるじゃねえかブレイバス! 流石は俺のファンだな!!」


「ああ、アンタに人間に限界がない事を思い知らされたよ、そんなアンタみたいになりたくて俺は毎日鍛えてきた。……それでも、筋肉つけるのも生まれつきの才能ってヤツはあるみてぇだがな。今はまだ(・・・・)アンタほどにはなっていねぇ、だが────」


 ブレイバスの言葉をフォローするようにザガロスは更に喋る。


「ああ、わかっているぜブレイバス。お前はそれを補うために二つの魔法を身に着けた。さっきの一撃、見事だったぜ? 戦場で自分の血を見たことなんざ、どれだけぶりだかわからねぇ」


 ザガロスはそこで息を大きく吸い、嗤っていた表情を更に狂喜的なモノに変えた。


「さあ! 楽しい楽しい第二ラウンドと洒落混もうじゃじゃねえか!!」

『第75部分 二章 登場キャラ紹介 +イラスト紹介』

に くうや様 から頂いたイラストを追加しました!

美麗イラスト是非御覧になってください!


2018/3/29

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