優希の言葉
お久しぶりです。別にサボってたとかそんな訳じゃないんです(遠い目)
もし良ければこうしたほうが良いなどの意見をお聞かせください
先日の五月蝿さはどこにやら。
学校から帰宅し台所に立つと晩飯の準備を始める。もう既に習慣づけされた動作を何度もやると無意識のうちに体が動いてしまうものだ。
「あ…そっか今日は俺一人か」
先日、黒木先生とは全く真反対の妹、黒ちゃんが我が家に遊びにきた。
他にも優希もいたがその後の後処理が本当にめんどくさかった。先生に絡まれるわ黒ちゃんの絶対領域に目がいってると妹の日向と優希に叱られるわ、母さんと父さんの帰りが遅くてよかった。そしてご飯が足りてよかった……四合炊いていたのにほとんど無くなりやがった、おかしいぞここは孤児院じゃないんだぞお前ら晩飯くらい自家で食えよ。
さて愚痴はここまでにしておいてそろそろ晩飯を作ろうかな三人分、俺とおふくろとオヤジと……
「はいはーい私の分も忘れずにね」
優希と……ん?
「お前いつの間に入ってきたんだ鍵はかけていたはずだ、どうやって入った」
「幼なじみの前にドアの鍵なんて意味無いのだ」
優希、こいつ忍者の末裔かなにかじゃないのか。というより俺の家の防犯セキュリティ甘すぎだろ。
「よし帰れ」
「やだ私も晩御飯食べるの」
いつものように俺の言うことは聞かないようだ。
「お前まさかもうケンジさんに『亮介のところで食べてくるキャピッ」とか言って来たんじゃないだろうな」
「りょうちゃんの私のイメージが酷すぎるんだけどあと全然似てないから、うんもちろん言ってきたよ」
「このクソアマ……」
なんて奴だ、あいつ策士だろいやまじで。手を打つのが早すぎて関心してしまうわ。
「……そこで座ってろ今から作るから」
「流石りょうちゃん愛してるよ~」
「ああ俺も大好きだよー」
「ほんと?ねえねえほんと?」
「あーほんとほんと超大好きアイラブユーお前がいないと生きていけないくらい好きだよー」
まあお前と俺の仲だしな晩飯ぐらい作ってやるよ。適当に相槌打っておくか。どうせからかってるだけだろ。
「じゃあさ……私がりょうちゃんと付き合ってって言ったら付き合ってくれる?」
「……は?」
思わず振り返ってリビングの椅子に座っている優希を見つめる。
頬を染め少し恥ずかしそうな顔でモジモジと体を動かしている。
な、なんだこの甘酸っぱい空間はこれはあれか告白イベントかなにかなのか?
ゴクリと唾を飲み込み鼓動が激しくなる。
意識がおいてけぼりになりそうだ、それほど緊張と興奮が俺にある。
「なんだまたからかってるのかよ」
「どっちだと思う?」
「…………」
質悪すぎだろ!今すぐにでも逃げ出したいのが本音だ、俺はこいうのは慣れてないんだやめろ!背中がムズムズする。
もしここで俺のこと好きなのかとか言うと『何勘違いしてんのプププー』とか言いそうだ、逆にオーケーだしたら『何勘違いしてんのプププー』と言われそうだ。
おおおお落ち着くんだ天野亮介、天野亮介は狼狽えない!
「俺は他人から告白されてもその子が好きでも絶対付き合ったりはしない、告白するなら自分からだ。相手からの告白を待つ恋愛なんて恋じゃない。確かに女の子から告白されて嬉しいこと否定しない、けど俺は好きになった人には自分から告白したいんだ。そして付き合って下さいと言いたいかな。だからお前が付き合ってくれると言っても断るかな」
「……そう」
自論を組み立てる。ここだけは譲れない、例え将来を確証された人でも愛してる人でも俺は自分から告白しないと気が済まない。
そして当たって砕ける。
この連鎖を繰り返して俺は童貞としてまた一歩新たな世界を描くのだ。
……何言ってんだろうな俺。
優希は少し顔を伏せ一言だけ言うと椅子の上で仰向けになりどこか残念そうな顔をする。
「あーあー告白してもないのになんか振られちゃった気分なんですけど〜、どうしてくれるのかな亮君」
「今日の晩飯は唐揚げだ。多めにいれてやるよ」
「いえーい唐揚げとはなかなかチョイスがいいじゃないかねチミ……結構時間かかる?」
「ありがとよ、そんなに時間はかからねえよ朝から漬けてた鳥モモを揚げるだけだから箸とか準備しといてくれ」
「はーい、そーれっと」
タッタッタッと小走りで俺のそばまでくると優希は耳元で囁いた。
「亮君知ってる?意外と身近なところに亮君に恋を寄せている子って結構いるんだよ」
「え、おいそれってどいう意味だ」
「箸はこれでいい?亮君」
クルッと半回転し棚にある箸を取り出しながら訊いてくる優希、少し頬を染めて笑ってる姿に脈がはやまった。
「ああ、それでいいぞ」
「はーい」
そのまま箸を持って机の上に綺麗に並べ待つ優希、これ以上は聞かないでおこう。
眉を八の字にし困ったような表情で幼馴染みのアイツを見つめる。
たとえ何年家族同様のアイツといても分からないことあるものなんだなと認識した。
優希の言葉の意味はなんだろか。
考えれば考えるほど深みにはまっていきそうだ。まあ今はそんなこと考えずいつもの日常を送るとしよう。
「ねえ亮君大丈夫?手が震えてるよ」
「だ、大丈夫だ別に緊張とかしてないから気にするな」
クソッ、あいつの言葉の意味がもし俺のことが好きだよと思うと心臓が落ち着かねえ!
深呼吸だ俺!
その日、誤って唐揚げを高くから油の上に落としてしまい手に火傷の跡が残るのはこの後である。