オムライス
…………駄文ですがどうかお許しください
「まずは日向ちゃんの部屋に特攻かけたいと思います。そこで君の出番だ、天野二等兵」
「イエスマム、ってまてまてまて」
「時間は有限だ、迅速な行動を頼む。そして今日の夕御飯はオムライスがいいな」
「おい、まてって言ってるだろ。一つ聞いていいか?なんで俺が突撃するんだ?」
放課後。
マイホームにやってきた優希はリビングで作戦会議をしようと言ったところから始まり現在に至る。
「え、そっちの方が面白いからに決まってるからだよ?」
「うん、なんとなくお前の考えは読めてたわ。でもな俺が部屋に突入しても逆効果だと思うんだが」
「いやそれは無いよ」
なんでそう胸を張って言えるのだこいつは。
「根拠を聞いても?」
「だって部外者の私が手を貸したところで何か意味があるの?日向ちゃんと亮ちゃんの問題なのに第三者である私の介入は悪手だと思うけど?」
「な、なるほど……」
「そんなことも気付かないの〜?ねえねえ亮ちゃんってバカ〜?」
「…………」
顔をのぞき込むように優希はニタニタと笑いながら亮介を馬鹿にした。
クソッ殴りてぇ……けど言っていることは的を得てるもんだから言い返せねえ。
コイツに相談すると必ず人を小馬鹿にした態度をとるから嫌なんだよ……
「じゃあ行ってきますか」
よっこらしょ、重い腰をあげ手を組み体を伸ばす。
「お、やっと行く気になったかね少年」
「まあそんなに急がくてもいいと思うけどなゆっくりと仲良くなってみんなで仲良く喋りながら食べたいな今の目標としてはな」
まあこれがその第一歩だと思えばいいだろう。
「ところで今日はオムライス?」
カクッと首を傾げ涎を垂らす優希。
お前どんだけオムライス好きなんだよ、そして涎をふけ!
「そうだなオムライスにするか。……成功したら」
「さあ善は急げだよ亮ちゃん」
「いやまあそうなんだが……あいつの部屋入る前にドアに鍵がかかってるから入れねえんだよな」
「ああ、それなら問題ないよ。えっとね……あったあった」
「なにしてんだ?」
ガサゴソとバックをあさる優希が何かを見つけ取り出した。
「はいこれ、日向ちゃんの部屋のスペアキーだよ」
「……なんでお前持ってんの?」
「ほら日向ちゃんいつも鍵をかけてるから友達が来ても気づかないからね、だからこうして信頼のある人には鍵を渡してるんだよ」
「…………」
もうなんだが開いた口が塞がらないというかなんも言えねえというか……
まあ俺が信頼がないということは重々承知だがなんだろう……言い知れぬ敗北感があるのは何故だ。
「ほら早く行った行った!当たって砕けて粉微塵になってきなさい!」
「お、おう。ん?いや砕けちゃダメだろ」
「そのくらいの勢いで場を乗り切らなくちゃダメなんだよ亮ちゃん!」
いつになくあついな優希。
というか楽しんでるだろこの状況を、俺は心臓バクバクで緊張しているというのに。
♢♢♢♢
「ふう……」
「ふう……じゃないよ早く入りなよ」
「いや心の準備が……」
日向の部屋のドア前に到着。
こうなんて言ったらいいんだろうな、まるで初デートで彼女の家に遊びに行くような感じだ……うん、絶対間違ってるなこの例え。まず俺は彼女もできたこともないのに何が『彼女の家に遊びに初デートで遊びに行くような感じだ☆』だよ、笑えてくるわ。
「大丈夫だよ最初入っても気づかれないから、私が遊びに行くってLINEしたから入ってもバレないって」
「いやそいう問題じゃねえよ、俺が喋ったらバレるだろ」
「は?何言ってんのそんなの当たり前じゃん」
「……ちっ」
「あ!今舌打ちしたよね!?何も言い返せないからって舌打ちとは超ウケるんですケドー」
「だああああ!もういいよ行くよ!勢いでどこまで行けるかやってやるよ!!」
こうなればわヤケクソだ、砕けて俺が再起不能になろうが妹に二度と口を利いてもらえなかろうがやってやるよコンチクショウ!
優希に渡された日向の部屋の鍵を取り出しガキ穴にさして回すとガチャりと音をたてる。
それを確認するとゆっくりとドアを開けた。
「あ、優希先輩ですか?どこか適当に座って待っててもいいですか?あと少しでこのボスを倒せそうなんで」
「…………」
入ったことを感知したかのように俺が部屋に踏み入れた瞬間、日向は言葉を発した。
なにやらシューティングゲームのようなものに夢中になっているらしい。
俺は言われた通りベットの上に腰を下ろした。
ちなみにまだ日向は俺だと気づいていない。
カチカチと音を立てながらパソコンの画面に集中する日向は初めて見る。
見ていて飽きない、率直に思ったことだ。
俺の前ではあまり表情を変えないため無表情キャラだと思っていたが……今の日向は目をギラりと光らせ画面を食い入るように見ている。
サイン会であった時はかなり焦っていたな、『私は天野日向でありましぇん!兄さんのバカ』だっけ?自分から墓穴をほっていくスタイルですねわかります。お兄ちゃんそいうタイプ嫌いじゃありません。
妹の天然グセを再度理解したところでそろそろ終わりそうだな……
目の前のシューティングゲームに熱中していた日向がバッと両手をあげて声を漏らした。
「やっ、やっとクリアしたよぉぉお……なんでこんなに難しく設定してあるんだよノーマルのレベルじゃないよ、でもこれで……ふひ、ふひひ」
椅子の上で脱力したかと思うと今度は笑い始める日向、怖いよなんだか怖いんですけど俺の妹。
「やっとエキストラボスに行けるよ優希先輩!!」
いきなり後ろを振り返った日向は興奮気味に額から汗を少し垂らしながら言った。
「俺は優希先輩じゃねえけどな、まあおめでとう」
「はーもう、難しすぎですよ今作品の難易度どうなってるんですか本当に大変でしたよ!」
「そうかそうかよく頑張ったな、で今日の晩御飯はオムライスでいいか?」
「うん!オムライスがいい!って……優希先輩じゃない……」
いや、気づくの遅すぎだろ俺結構前からスタンバってたんだけど、そんなに熱中してたのかよ。
「よ、よう楽しそうだったな」
「……なんでいるの?」
さっきまでの楽しんでたはずの声音は一気に冷たく鋭いものに変わり、満面の笑みだったはずの顔は目を細めて苛立ちを顕にしてあた。
「そんなに嫌かよ……俺のこと」
「いや兄さんが生きてること自体有り得ない、というかなんでいるの?」
小首をかくっと曲げ真顔で聞いてくる日向は俺の精神をぶっ壊しにきてるみたいだ。
「息を吐くようにさらっと俺の人権無視するな泣くぞ」
「十七になってガチ泣きとか気持ち悪すぎる」
「お前な……」
相変わらず口の悪い妹だな。思ったことをすぐに口に出してくれるのはありがたいがこうもうち伏せられるとこう……メンタルがな……
「優希先輩でしょ?鍵を兄さんに渡して私と仲良くなってこいとかそんな感じじゃないの?」
「な、なぜわかった……お前エスパーかなにかか?」
「兄さんのことだから優希先輩に頼んでどうにかするなんて予想できるよ、兄さん馬鹿だし」
「……まあバカは認めるがお前って以外と喋るんだな、晩飯では全然喋んないくせに」
「別に今関係ないと思うけど……それよりリビングで優希先輩と何話してたの?」
「いや特に何も話してないぞ!」
うん!亮介ウソつかない!
「私と話したいとか?」
「聞いてた?」
「図星なんだ……」
どうやら俺たちの声がうるさかったようだ。まあ、あんだけ騒いで聴こえてないってほうがおかしいんだがな。
「……まあ変なことしてたら許さないけど」
ボソッと日向は俺が聞こえないぐらいの声で言った。
「え?今なんて言った?」
「……なんもない、さあ今日はいっぱい話したでしょ兄さん」
ドアに指を指す日向、どうやら早く帰れとのご命令らしい。
「……今日はオムライスなんでしょ?早く作って」
「……はいよ妹様」