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スクールゴーストバスターズ  作者: もぐのすけ
第1章 出会い編
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第3話 折井碧太

 今回で転校は13回目になった。

 さすがに二桁を超えてくると定期イベント化して、転校に対する思いも何も無くなってくる。

 計算上では数ヶ月で一度のペースになるから仕方ないのだろう。

 何故俺がこんなにもコロコロと学校を移り変わっているのかは、俺の特別な力が関係しているんだ。


 それは霊が見えること。

 そして、その霊を見えることができる力を活かして、心霊問題に関する仕事を請け負っていること。


 俺は現在高校1年生になるが、この仕事は中学生の頃から続けており、現在に至るまでに既に数百件の除霊活動を行っている。

 そして今回も仕事の依頼で、鷹山市にある鷹山高校という所に転校することになった。

 噂では少しばかり聞いていたのだが、なんでも鷹山高校周辺一帯ではかなりの数の心霊現象が起きているらしく、霊感のある人に対する被害が多発しているらしい。

 今回の仕事の依頼をお願いしてきたのも現在の鷹山高校の校長先生らしく、そういった背景から生徒を守りたいというなんとも生徒愛溢れる内容だった。

 実際に校長も霊感が多少なりともあるらしく、まぁ半分は自分の身の安全を含めてといったところだろう。

 どちらにせよ除霊依頼をしたという行動自体は、理由がどうであれ正しい行動である。

 この世に存在していていい霊などいるわけないのだから。


 かくして俺は鷹山市に拠点を置いたわけなのだが、やはり噂で聞くのと実際に肌で感じるのは別物だった。

 噂なんかアテにならない。


 かなり…………なんて量じゃなかった。

 噂なんかよりも遥かに多くの霊の気配が、そこかしこからバシバシと伝わってきた。

 本来俺は、霊がどこにいるかとかそういった気配察知みたいなものは得意ではないのだが、そんな俺でも大雑把にどこら辺に霊がいるとか分かってしまうほど、数の暴力というか、もはや鷹山市全体が心霊スポットのようになっているんだと思った。


 …………これは確かに霊感が強い人間には生きづらい町だろうなぁ。


 とりあえず引っ越してきたばかりなので、夕方まで荷物の整理を行い、夜には一番霊の気配が強い所に向かうことにした。

 そして向かった先には閑静な住宅街の中の一角。

 まるでドラ◯もんに出てきそうな空き地があった。

 オレンジ色の服を着たガキ大将が座りそうな土管に、野球をすれば隣の人の家の窓ガラスを割りそうな大きさ。

 圧倒的な存在感を示している大きな赤い鳥居。


 …………いや、最後の奴はドラ◯もんには出てこないな。

 間違いなくこれだ。

 この鳥居が問題の種だ。

 鳥居とは本来、「神域」と「俗な場所」を隔てる境界のようなもので、たとえ神社がなくとも鳥居が建っている所は神域として扱われているケースが多い。

 恐らくここもそういった意味合いで、場違いながらも鳥居は動かされずにここに放置されているのだろう。

 だがその結果、住み着いたのはどうやら神様なんかじゃないようだ。

 俺が見えるのはあくまでも霊、死んだ人間のみであり、神様とか妖怪といった類が見えるなんていうことは断じてない。


 つまり、鳥居に取り憑いているこれは間違いなく霊であり、その霊力の大きさから言っても地縛霊のようなものだと思われる。

 そこで俺はひとまず除霊ではなく、一時的な封印を行うようにした。

 理由としては、このレベルの霊を除霊するのにはそれなりの準備と時間が必要になるためである。

 今から行うのには割りかし骨が折れそうだった。

 だから除霊ではなく封印。


 持ち物は杭とカナヅチとお札で、早速空き地に入り、お札を鳥居に打ち付けようとしたところ、鳥居に取り憑いていた霊が唸り声をあげながら飛び出してきた。

 だが俺の打ち付けるスピードの方が一足早く、一回打ち付けるたびに霊は鳥居の中へと押し戻されていく。

 霊も負けじと俺に攻撃してこようとするため、打ち付けては押し戻し、打ち付けては押し戻しを繰り返し、閑静な住宅街にコーン、コーン、コーンと杭を叩く音が響き渡った。

 途中、霊の注意が俺の後ろへと向いた。

 あと少しで札を貼り終えることができるために、抵抗するのをやめたのかと思ったが、どうやら違うらしい。

 俺が霊の見ている方向、つまりは後ろを振り向くと、女の子がこちらを見ていた。

 女の子といっても俺と歳は同じくらいで、一目見ただけで彼女が微力ながらも霊感を携えていることが分かった。

 つまりこの霊も、霊感がある人間を他に見つけたから注意がそれたわけだ。


 あまり良くない現場を見られた気がする……。

 彼女ぐらいの霊感であるなら、本来は霊を視覚化はできないはずだけど、俺がここにいることで彼女にも霊が見えるようになってしまっているはずだ。

 霊感とはそういうシステムなのだから。

 俺はもうどんなグロテスクな霊でももう慣れたけど、彼女はたぶん…………あ、やっぱりダッシュで逃げ出してった。

 まぁ当然だろうね。

 こんな気持ち悪い霊を見たら普通は誰でも逃げ出すさ。

 …………というわけで、これ以上犠牲者を出さないためにもお前にはさっさと鳥居に封印されてもらうよ。


 俺はトドメの数回を打ち込み、封印を完了させた。

 一時的な封印であるため除霊よりも遥かに楽だが、これもいつまで保つか分からない。

 本来ならば数日以内にでも準備してとりかかりたいけど…………この溢れんばかりの霊共を除霊していくのにどれだけかかるのだろうか。

 位置が分かれば一番楽なんだけど……分からないからしらみ潰しでいくしかないか。


 はあ…………気が滅入る。

 とりあえず今は高校生として、新しい高校に早く馴染めるように努力しよう。

 そうすれば心霊現象の情報収集がしやすくなるかもしれないからね。

 というより…………霊の事ばっかり考えてないか? 俺…………。

 なんかすごい落ち込んできた。


 自分の行動全てが霊関係であることに多少のショックを受けながらも家へと帰り、明日の準備をして眠りについた。


 次の日、鷹山高校にやってきた俺は、それはもう衝撃的な出会いを2つも期することになる。

 一つは、昨日見た女の子が同じクラスにいたこと。

 なんて王道すぎるラブコメなんだと、思わず心の中でツッコんでしまったぐらいだ。

 ただ、もう一つの出来事が俺にとっては大きすぎて、女の子との衝撃的出会いは記憶の彼方に吹き飛んでいった。

 それは、窓際に座っている少年が俺と近い霊感の持ち主であること。

 これほどまでの霊感を誇っている人は、俺を除いて見たことがなかった。

 まぁ彼の表情を察するに、霊感があることを誇りに思っているなんてことはなさそうだけどね。

 というより、霊感があることを誇りに思っている人なんかこの世にいないんじゃないかな。

 俺も別に嬉しいとか思ったことないし。

 ただ感じたことは、死んだような顔をしていたために彼もまた、霊によって生活を脅かされている人のうちの1人であると気付いた。

 だから思わず同じ境遇の仲間がいると思わせるために声をかけたんだ。


「君は見える人だよね?」と。


 休み時間に彼に話しかけてみたかったが、クラスの皆が思ったよりも俺に興味を示してくれたみたいで、色々と質問に答えている間に気づけば彼は席を外してしまっていた。


 彼の存在は、どうやらこのクラスでは無いにも等しい状態のようで、それこそ彼自身が霊のような扱いを受けているように見える。

 俺にとって、これほど存在感を放っている人は初めてなのだが……。


 仕方がないので彼の事は後回しにし、今はクラスの皆と仲を深めることにしよう。

 あの霊感の強さを持っていれば霊に絡まれないなんてことはないはずだから、これまで無事だったことを考えれば、何かしら自己を守る術を手にしているのだろうからね。


 ただ、教室の前に再び戻ってきた彼を見た時、彼の顔色はあまり優れているようには見えなかった。

 教室に入ってくるのかと思いきや、そのまま引き返して窓の外を眺めている彼を、俺は遠目で観察を続けた。

 これは俺の勝手憶測になるが、恐らく彼は霊とエンカウントしたのだろう。

 この学校には朝でも昼でも関係なく現れる奴は確認しているので、彼が見たのもそのタイプである可能性が高い。

 そして、気分を悪くしてしまった彼はそのまま教室に入ることができずに外の空気を吸っていると…………。

 そこまで彼が追い詰められていたとは思わなかった。

 これは早急に校内の除染活動を行ったほうがいいだろう。


 そして俺は放課後、除霊を行うべく、一度自宅に帰って準備をした上で、人気が無くなる時間に再度鷹山高校へ向かった。

 ついでに、帰宅する前に色々と情報収集を行い、強力な霊感を持つ彼の名前が矢野涼一であるということも仕入れることができた。


 涼一君の事は後日に後回しにし、学校内の除霊を優先させようとしていたが…………どうやらそんな必要はないらしい。


 俺が校内に入ったと同時に、男女の叫び声が雑音がない校内に響き渡ってきた。

 急いで叫び声の元である上の階へと登り、3階の廊下を見た途端に左右に分かれた通路の左側から、噂の涼一君と昨日見かけた女の子(確か名前は土佐明里)が猛ダッシュでこちらへと向かって来ていた。

 彼らは予想通り霊に追いかけられている状況にあった。


 よーし。

 なんかカモがネギだけでなく鍋の材料を一度に運んで来てくれたような気がする。

 涼一君に明里さんに除霊対象という、スリーセブン揃いました! と大声で叫びたくなるような状況に俺は顔を綻ばせながら、必死に逃げてくる彼らに言うのだった。


「あとは俺にまかせてくれ」


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