第30話 対策と体験
僕は読んでいた漫画を本棚に戻すと、アオタから調べた内容の結果を聞いた。
結局の所、僕は漫画を読みふけっていただけで全てアオタ任せにしてしまった。
反省だ。
「つまりは1番良かった方法ができなくなったってこと?」
「そうなるね。彼女のお兄さんも亡くなっている可能性が高い。行方不明場所については鷹山でいなくなったということらしいが……」
女の子にお兄さんと会わせることで除霊する。
そんな僕らの計算は合わなくなってしまった。
会えないから合わない。
「そうしたらどうしよう」
「兄が幽霊になっていて、なおかつ探し出し、少女に会わせる方法もあるけど……」
「なんか現実的じゃないね」
「そうなんだよ」
僕らは頭を抱えて考え込む。
アオタはいくつか除霊方法があると言っていたけど、物理的除霊以外にふるじゅんが納得する方法はあるのかな?
「とりあえず、ふるじゅんには秘密しておくとしても、明里にはこのことを話しておこう。話は通しておいたほうがいい」
僕らは1階を探して回り、料理本を見ていた土佐を発見した。
「土佐」
「あれ? もう帰る時間?」
「帰る時間て…………目的完全に見失ってるじゃん」
「あ、そっか。鷹山市で起きた事件探しに来てたんだっけ。ごめんごめん」
「それはそれとして。とりあえず俺が調べた内容を一通り話しておくから。ふるじゅんにはくれぐれも秘密にしておいてくれ」
「え? そんなに良くない話なの?」
アオタは土佐に、僕に話した内容を再び繰り返して話した。
土佐は特にリアクションとることなく話を聞いていた。
「というわけだ」
「お兄さんは探せないの?」
「幽霊になっている可能性、山の中に絞られているといっても、探し出すのはかなり困難なんだよ。図書館の中で明里を探し出すのとは訳が違うからね」
「む。なんか含みのある言い方ね。幽霊が何処にいるかとかって分かるものなんじゃないの? ほら、テレビでよくやってるじゃない。あそこから気配がしますとか」
「テレビに出てる、いわゆる霊能者が本物なのかどうかは分からないけど、俺にはそんなことは分からないよ。近くに霊がいるとかは感覚で分かるけど、じゃあ何処にいるかと詳しく聞かれれば、俺には分からない」
「そうなんだ」
ん?
なんでアオタはここで嘘つく必要があるんだろう?
幽霊が近くにいる時、だいたい何処にいるか分かるじゃん。
だから僕は今まで襲われる前に逃げてこられたわけだし。
あの霊が近くにいる時の背筋が冷たくなる感覚は何とも言えない気持ち悪さがある。
まぁアオタのことだから何か考えのことがあってなんだろうけど。
「とりあえず明後日の月曜日に俺はトイレに行って、加藤美佳に詳しく話を聞いてくるよ」
「そういう方法もアリなの? 中々その案を出さなかったから、僕はあまり良くないことなのかと思ってたんだけど」
「あまりどころかかなり良くないよ。話を聞くということは、その女の子に自分が死んでいることを理解させてしまう恐れがある。そうすると、今まで死に気付いていなかったからこそ自我が保てていたのが、自我が崩壊してよく俺達を襲ってくる霊と同じになる。だから月曜日は俺1人で行くよ」
「そこにいるかな?」
「何年もそこで兄を待っていたと言っていたし、移動してる可能性は低いと思うよ」
「なるほど…………」
「今日の所は解散にしようか。ふるじゅんを呼びに行こう」
僕らは3人で本をバッチリ借りていたふるじゅんを迎えに行き、鷹山市立図書館を後にした。
また今度僕も本を借りよう。
ふるじゅんとはここで別れ、僕らは行きに乗った電車と反対側の電車に乗り込む。
そんなに長いこと図書館にいた覚えはないけれど、日が少し傾いており、車内が多少オレンジ色に褪せていた。
「なんか……幽霊にもいっぱいいるのね」
土佐がポツリと呟いた。
土佐にも幽霊が見えるようになったのは最近のことだ。
なにか思うことがあるのかもしれない。
「でもいい奴なんて1人もいないよ」
「そうなの?」
「少なくとも、僕が見てきた幽霊はみんな嫌な奴だった。関わりたくない奴ばっかりだったよ」
「でもそうよねー。幽霊なんて怖いもの、普通は見たくなんてないし。あ、ねぇねぇ貞子みたいな奴とかもいたの?」
「貞子……似たような女の霊は見たなぁ。髪長くて、白い服着てて」
「えーやだぁ。本当にいるんだ」
「しかも身長は3mぐらいあった」
「なにそれ化け物じゃない!」
本当にいたんだからしょうがない。
超ビビったけどね!
「そう言えば、俺も昔に変な霊とあったことがあるなぁ」
「どんなの? なんかアオタの話って凄そう」
「そんな凄くはないけどさ。小学生の頃、友達と遊んでた時にボロボロの屋敷みたいな所があったんだよ。そこで隠れんぼしようかってことになって、友達と屋敷に勝手に入ったんだ。鍵は開いてたからね」
「よく入るねそんな所」
「ほんと。考えられないわ」
「それで俺が鬼になって友達が屋敷の中に隠れたんだ」
そんな所、鬼をやるのも隠れるのもやだな。
「100秒数えた後、俺はまず1階から探し始めたんだ。台所……お風呂場……居間……どれも探したけど誰もいない。俺はそのまま2階に上がっていった。そこで奇妙な声が聞こえてきたんだ。『見つけて……見つけて……』って。最初は俺が全然見つけられないから煽ってんのかなって思ったんだよ。でもなんていうか、かそぼい声で言っていて、からかっている感じじゃないんだ。本当に見つけてほしいような」
僕はアオタの話に引き込まれるようにして聞いている。
土佐も同じだ。
「だから俺はその声のする部屋に向かったんだ。『見つけて……見つけて……』部屋に入るとその声はボロボロの押入れの中から聞こえてきていた。俺は恐る恐る押入れの引き戸を開けたんだ。そして中にいたのは…………ボロボロの衣服を身にまとっていた同じくらいの少年だったんだ。俺が大丈夫? って聞いたら、その子なんて言ったと思う?」
「え……? 見つけてくれてありがとうとか?」
「そう!」
「正解なの!?」
「その子は『見つけてくれてありがとう。やっと変われるよ』って言ったんだ」
「え……それって……?」
アオタがそこで沈黙する。
なんで何も言わないの?
そんなところで話をやめたら……。
アオタが僕たちの方に顔を向けた。
夕焼けで顔半分が赤くなっている。
「だから俺は…………押入れの中にいた俺を見つけてくれたその子に変わって、押入れの中から出ることができたんだ」
「!?!?!?!?!?!」
僕は失語症に陥った。
悲鳴すら出なかった。
そしてアオタがニヤリと笑う。
「なーんちゃって。そんなわけないでしょ。涼一はリアクションが面白いなぁ」
「へっ!? えっ!?」
僕はまだ頭が正常に働いていなかった。
アオタの言っていたことが分からなかった。
「ちょっと涼一……くっつきすぎなんだけど」
「へっ!?」
見ると僕は土佐に完全に抱きついている形になった。
なぜかこっちの状況についてはすぐに頭が正常に働いた。
「うわわわ! ご、ゴメン! わざとじゃないんだ!」
「分かってるわよ。わざと抱きついてくるほど涼一が根性あると思えないもんね」
「え、それってつまりは抱きついてもOKっていう……」
「右頬を出しなさい」
「ゴメンなさい!」
ちょっとばかり調子に乗りすぎた。
アオタは尚もニヤニヤしていた。
「ていうかアオタ! じゃあ今の話全部冗談なの!?」
「いや、本当に変わってくれって言われたよ」
「そこは本当だったの!?」
「だから、断る! って言ってぶん殴って除霊させた。その頃から既に除霊活動は行ってたし」
「ええ……たくましすぎるでしょ」
「じゃあその後、友達を見つけて一緒に帰ったのね?」
「いや、よく考えたらその当時の俺は転校したばかりで友達はいなかったんだ。結局一緒にいた友達だと思っていた誰かは屋敷からいなくなっていたよ」
「…………えええええええ!? なにそのどんでん返し!? 結局誰と遊んでたか分からないの!?」
「そうなるね。いやーさすがにそっちはビックリしたよ」
だめだ……。
僕なんかよりもよっぽどハードな霊体験してきてる。
稲川◯二も真っ青だ。
そしてタイミングよく鷹山駅に着いたため、僕達は降りて解散した。
「じゃあまた学校で」
「うん」
「じゃあねー」
休日に部活っぽい? ことをやったのは生まれて初めてだった。
やっぱり楽しいな。
僕は鼻歌を歌いながら家へと帰っていった。




