女子トイレの鏡
僕はいつもの様にほとんど人のいない学校に行く為 に朝早くに家を出る。電車の中で携帯ゲームをして暇な時間を潰し、駅からは音楽を聴きながら学校まで歩く。この習慣はつい2週間前ほどから始まった。何の為に人の少ない学校に行くのかだって?それは女子トイレに入るためだ!
僕、鹿苑寺 広和は偏差値アンダー50の一般的な学校に通っている平凡な高校生だった。ゲームや漫画が大好きで彼女はいなかったが、友達が多少いた。僕らは周りからオタクと呼ばれる存在だった。一年が終わろうとしていた頃、英語の小テストの結果が悪く放課後、再テストを受ける羽目になってしまう。さらに再テストでも合格出来ず、補習授業を受けることになってしまった。授業が終わり教室を出で、トイレに行きたくなったので誰もいない廊下を歩いた。僕にとって誰も居ない廊下というものはとても珍しかった。そしてちょっとした出来心で女子トイレに入ってしまった。女子トイレに入って何かをしたいとかは無かったのだが、なぜか無性に入りたくなってしまったのだ。トイレの鏡の前に立った時全ては始まった。鏡が鋭い光を放ち、視界が歪み、身体の感覚がなくなり、何も考えられなくなった。気がつくと木造の建物にいた。すぐに分かったがさっきまでいた世界とは違う。目の前には光を失っていく鏡。僕は慌てて光を失っていく鏡に触れた。するとまた、鏡が鋭い光りを放ち、視界が歪み、さっきと同じ様に鏡の前に立っていた。(女子トイレだ)僕は元の世界に戻れたことに安心した。急に疲れが出てきたので家に帰ることにしたのだが、帰りの電車でも、家に着いてからでも、あのことをずっと気になった。何故あの様なことが起きたのかが気になりなかなか寝付くことも出来ず、そして僕は決心した。明日の朝一に確認しよう。やはり疲れていたらしく僕はすぐに眠りにつくことができた。次の日の朝、鏡のことをしらべたくて僕はいつもより早く起き、いつもより早く家を出た。いつもは携帯ゲームをして電車の中での時間を過ごすのだが今日は携帯ゲームをする気にならなかった。駅からは小走りで学校まで行った。誰もいないことを確かめてあの女子トイレに入る。そして鏡の前に立った。その瞬間鏡が光った。鏡が光ったのとほぼ同時に僕は小さくガッツポーズをした。前と同様に視界が歪み、身体の感覚がなくなり、何も考えられなくなり、そしてまた木造の建物にいた。光を失った鏡に映った自分の後ろにトレイを持った女性がいた。とても綺麗な長い黒髪、髪と同じ色の瞳。そのめが僕を睨んでいた。(こ、怖い。でもめっちゃ美人だ。)
「あなたは客ではなさそうですが」
何を言ってるかさっぱりわからないのだが。
「客って何のことですか?」
「ここは宿屋ですけど。」
あー、わかった。こんな感じの宿屋はRPGとかでよくある。よしこの綺麗な人からこの世界について教えてもらおう。
「あ、あのー」
「あなたはここで何をしていたのですか?」
「い、いえ僕はただ」
「怪しい人ですね。服装も変ですし。」
へ、変な服だって!。普通の制服じゃないか!いや待て。この人の服装からしてここはファンタジー世界。よくゲームや漫画である憧れのあの世界だ。この世界の人が制服を知ってるわけないじゃないか。
「いえ、僕は怪しい者ではありません。知らないうちにここに立っていたんです。」
「見かけない顔ですね。旅人か冒険者といったところでしょう。」