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ゲームマスターの異世界冒険  作者: 中野 翼
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35.世界意思は輸入品?

「それではまた後で」

「「ちょっと待て!」」


アストは用は済んだとばかりに去ろうとしたが、シオン達はそうはさせなかった。


「どうかしたか、二人とも?」


アストはキョトンとした顔をして、シオン達を見た。


「どうかしたか?じゃない!この状況で帰るな!」

「と、言われても、まだ来客中だろう。あの男の言葉につい出て来てしまったが、俺との話はまだ後になるだろう?」

「いや、彼らの用件もお前についてだ。だから、おとなしくここに居ろ!」

「居ても良いのか?下手をすると、そいつら全員死ぬと思うが?」

「何?ティアナ王女殿下!」


シオンがアストに釣られてティアナ王女達四人を見ると、一時的に持ち直していたのが、また重圧で床に押し付けられていた。


「おい星夜、すぐに止めろ!」

「悪いが無理だ」


シオンの訴えに、アストは首を横に振った。


「なんでだ!お前がやってるんだろうが!」

「残念ながら、俺が意図的にやっているわけじゃないんだ」

「意図的じゃない?」

「ああ。これは俺の感情に反応して、世界と彼らが自前でやっているんだ。引き金はたしかに俺なんだが、制御権は俺にはない」

「対処方法は!」

「俺が彼らから離れるか、俺が彼らに向けている感情をどうにか出来れば収まるはずだ。が、あらかじめ言っておくが、後者は無理だからな」


そのアストの言葉に、アストの彼ら四人に対する感情を見ているシオンも、後者は無理だろうと判断せざるをえなかった。


「なら、どれくらい離れれば現状は改善するんだ!」

「さあ?さっきも言ったが、制御権は俺には無いんだ。世界の方に言ってくれ」

「とっとと止めろ!」

【拒否】


シオンが破れかぶれに世界に向かって叫ぶと、そんなウインドウがシオンの前に出現した。


「はあっ!?」


シオンは、突然現れたそれに目を丸くした。


「おや?ゲーム法則の適用のせいか?」


アストもシオン同様、突然現れたそれに目を丸くした。


【肯定】


そんなアストの目の前に、今度はそうだというメッセージが現れた。


「ほお!世界と意思疎通が可能になったのか?」

【肯定】

「それなら星夜、さっさとこれをどうにかするように言ってくれ!」

「と、紫苑が言っているから、彼らへの干渉を止めてもらえるか?」

【管理者要求?】

「ああ」

【了承。・・・停止完了。限定擬似精神防壁付与・・・完了】


そんなメッセージが表示された直後、ティアナ王女達にかかっていた圧力が一斉に消え失せた。


「ぐっ!」「がっ!」

「きゃっ!」「あら?」


突然の圧力消失により、解放された四人は抵抗していた勢いで体勢を崩し、そのまま床に倒れ込んだ。


「便利なものだな。しかし、限定擬似精神防壁付与とはなんだ?」


アストは、彼ら四人が圧力から解放されたのを確認した後、表示されている一文に疑問を持った。


停止完了は今の光景を見ればわかる。が、最後の一文の理由がわからない。

アストは干渉を止めるように命じただけなのに、なんで世界が限定擬似精神防壁とやらを付与したのか、アストが疑問に思うのも無理はなかった。


【咎人達の耐性確保。防壁効果停止期限、現空間の退去時まで】

「なるほど。気を利かせてくれたわけか」

【肯定】

「ありがとう」

「どういうことだ?」


シオンは両者のやり取りを見ていたが、状況がイマイチ掴めていなかった。


「うん?ああ、先程も言ったが、あれはこの世界と彼ら四人が自前でやってたんだ。だから、俺の命で世界の方が止めてくれても、彼らの分が残ることになる。だから世界は、気を回してそれにも対処してくれたんだ」

「そういえばさっきも自前がどうの言ってたな。あれはどういう意味なんだ?それに、世界と意思疎通が可能になったってどういうことだ?」


シオンはそろそろ混乱しつつあった。

ティアナ王女達が自前で床にへばり付いていた理由がわからないし、世界と意思疎通が可能になったなんて、シオンには理解不能だ。


「言葉にすると、罪悪感に押し潰されたとなるのか?彼らは本能的に俺の正体を察して、その結果罪悪感を覚えた。やがてそれは精神から肉体にフィードバックされ、肉体に影響を及ぼした。そんな理解で良い」

「・・・罪悪感。なるほど、たしかに自前だな。ならもう一つはどうなっているんだ?」

「世界と意思疎通が出来るようになったというやつか?」

「ああ。世界に意思なんてあるのか?」


シオンにはそれがさっぱり理解出来なかった。


「うーんとな。世界の意思を言い換えるなら、ゲーム世界運営用人工知性。あるいは、人工学習型AIだな。この世界の基点世界であるゲームの環境演算等をしてくれていた、知性を持ち合わせたプログラム。それが現実になって魂を得たのが、俺が言う世界意思の正体だ」

「・・・人工知性。そんなものまで登場しているのか!?」


シオンやアリスは、これには今までになく驚いた。

故郷の世界でVRMMOなんてものが実現したことにも驚いたが、人工知性なんてものまで登場していたのだ。

故郷の技術の発達に、驚かない方が無理だった。


「ふむ。過程を知らないとやっぱり驚くか。いや、内の世界の人間も、これを聞けば普通に驚くか」


シオンとアリスの驚く顔を見た後、アストはそう思い直した。


「うん?どういうことだ。人工知性とやらは、あっちで普及しているんじゃないのか?」

「いや、まったく普及していない。その理由はというと、今話した人工知性は、VRMMOの基本システムと一緒に冥夜が提供してくれたものなんだ。俺達の職場がやったことといえば、提供された人工知性の教育と、ゲームの舞台背景を設定し、それに合わせて走らせるメインの大まかなシステムを形作ったぐらいだ。当然バグ取りや調整もやるにはやっているが、大部分は人工知性が担当してくれている。今思い返してみるに、人工知性やVRMMOは異世界からの輸入品の可能性がある」

「異世界からの輸入品?」


シオン達はまた混乱してきた。

人工知性などが異世界からの輸入品とは、どういう意味なのかを計りかねているのだ。


「ああ。少し考えればわかるだろう?いきなり完成品の人工知性なんてとんでもないものがぽんと出てくる違和感に。今までは冥夜にこんなツテがあるなんて知らなかったから、その可能性は考えていなかったんだ。元々冥夜なら、人工知性の一つや二つくらい簡単に作れそうだったし」

「たしかにあいつは天才肌だったからな、普通に作れそうだ」

「そうね。作れても別に不思議じゃないわ」


アストの意見に、二人は昔会った冥夜の印象を思い出しながら同意した。


「だけど、こうして俺を異世界に送れだんだ。実際に人工知性やVRMMOがある異世界から、それらを持って来た可能性も出てくるだろう?」

「まあ、その可能性も現状を見ると否定出来ないが」

「でもそれはどちらでも良くない?」


シオンとアリスから見て、それにとくに問題は無いように思われた。


「・・・とくにはないな。別段輸入品が悪いわけでもないし」


アストも話しの流れでそう言っただけで、少し考えて問題が無いと思った。


「ええっと話を戻すと、そういうわけで向こうの世界には、人工知性が普及していないで良いのか?」

「良いんじゃないか、その結論で」

「そうだな。あと、世界の意思の正体も元人工知性ということで良いか?」

「そっちもわかった」

「まあ、ひょっとするとだが、昔は人工知性ではなくて無機物生命体だったり、機械生命体だったり、情報生命体だった可能性もあるが、その可能性はおいておこう」

「なんだよそのSF系の正体?」

「いや、なんとなくいろいろな正体を想像してみたら、そっち方面に偏った」


アストはそう言うと、この話題を終わらせた。



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