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ゲームマスターの異世界冒険  作者: 中野 翼
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2.比較・驚き

「さて、こんなものか?一応鏡で見ておくか、《召喚》」


会社で着ていたスーツを取り寄せて着替えた後、次は鏡を取り寄せて身嗜みを確認することにした。

異世界に居るとはいえ、社会人として身嗜みには気をつかわないといけない。


「うん?・・・この外見は」


しかし、鏡を覗いた先にはいつもの自分は映っていなかった。

鏡に映っていたのは、年の頃十代後半の紫がかった夜色の髪と、銀色の瞳を持ったスーツを着た少年の姿だった。


俺の年齢は二十六。こんなに若くはないし、髪と瞳の色も普通に黒で明らかに別人だ。


ただ、鏡に映っている少年を知らないかというと、そうでもない。

なぜなら、鏡に映っている少年は俺が《デイドリーム》で使っていたアバターだったからだ。


アバター名。いや、プレイヤー名はアスト。職業は魔法剣士で、ゲーム時代はテストプレイやβテスト時に使用していた。


どうやら《種族変更》でヒューマンになっても、本来の姿にはならないようだ。というか、冥夜の奴まさか手抜きして全部ゲーム関連でまとめたとかじゃないだろうな?


「まあ良い。とりあえずはスーツだと違和感があるから、着替えよう。《召喚》」


疑問は脇に置いて、今度はゲームの時の服を取り寄せて着替えた。そして、鏡で再び可笑しくないか身嗜みを確認。


黒のシャツに同色のズボン。上着には紺色のジャケット。腰には二本の剣を装備。


まんまゲームの時と同じ姿がそこにはあった。


「服装もこれで問題無し、っと。次は現在地の確認だな」


ステータス、服装ときた後は、今自分が居る場所の情報把握に取り掛かる。

この辺りで一番高い樹に当たりをつけ、《時空間干渉》で一気にその樹の頂上に移動する。


「うわー、すごく高いな!ゲーム時代の設定だと、だいたい三百mくらいか?」


空間を跳躍し、樹の頂上から見える眼下の光景を見ながら、自分が今立っている樹の設定を思い浮かべた。


俺が今立っている巨大樹の名前は《ユグドラシル》。北欧神話に登場する複数の世界に跨がる世界樹をモチーフにした樹だ。


「さて」


周囲の景色を一望し、これからのことを考える。

とりあえず近場は全て森であり、その森の外側を山脈が円状に取り囲んでいる。その為、どの方向に何があるのかはここからだとわからない。

ただあえて言えば、北の山脈は雪山。南の山脈は火山。東の山脈には雷雲が溜まり、西の山脈の頂上には巨大な湖があるという違いがある。


このことから東西の状況はわからないが、北は寒く、南は暑いだろうということは簡単に想像できる。


これだけではいまひとつ行き先を決定する要素にかけるな。ならば、


「《サテライトアイ》」


俺は上空の太陽を見上げ、星属性魔法の一つである探知魔法を発動させた。

すると、自分の視点が二つに増え、下から空を見上げた光景と、宇宙からこの星を見下ろす映像が同時に脳内で展開された。


星属性魔法サテライトアイ

宇宙に浮かぶ任意の天体を目とし、俯瞰的な視界を得る魔法。


先に使った召喚や時空間干渉に比べ、ある意味魔法らしい魔法だ。

現実で始めて使用してみた魔法だが、感覚はゲームの時と同じだった。

この辺りも冥夜の方が調整しておいたんだろう。少なくも、いきなり使えるくらいには扱いが簡単なんだし。

ただ、現実なのに魔力を消費した感覚がないのが気にかかる。ゲーム時代でもMPが減った時にはその感覚があったのに、今回はそれがなかった。消費したことが気にならない程に使用した魔力が少なかっのか、逆に消費した魔力が気にならない程に保有魔力が多かったのだろうか?


星界竜の本来あったステータスからすると、後者の気がした。が、現在はステータスが行方不明の為確証がなかった。


「さて、ゲームとはどれだけ違っているんだろうな」


現在地を中心に視界を広げていき、ここが何処なのかの確認を始めた。


ゲームとの差異がどれほどかはわからないが、物事を決める指針になる程度には一致していてくれるとありがたい。


しばらく今の現実と記憶を比べた結果、以下のことがわかった。

まずは大枠であるこの星の形状や大陸の位置関係は、ゲームの時と同じだった。

次に地形や都市の位置だが、これはかなり違っていて、自分の知識はあてにはならないようだ。


最後に町並みやこの世界の住人達の様子だが、町並みはゲーム時代よりも退行しており、西洋風の現代建築が西洋風の中世建築に様変わりしていた。各都市部を歩き回っている住人達の格好や装備、移動手段などもそっち方面に退行しているようで、簡単に見たかぎりだとかなり弱体化や劣化が見られた。


また街中を歩く人々の姿は、ゲームに登場する諸種族と格好以外は一致している。


「うーむ、こうなると各種族の能力情報くらいしか参考にはならないか」


比較した結果、そう結論を出した。


「しかたがない、ここはいきあたりばったりでいこう。《時空間干渉》」


結論が出た以上は後は行動するだけだ。とりあえず、近場の人がある所に転移する。



ユグドラシルの頂上から人間の街が見える場所に転移した。今回は目視範囲外だった為、少し不安だったが今のところ問題は無かったようだ。


《サテライトアイ》で街の様子を伺いつつ、街へ向かって歩く。

別に街中に直接転移してもよかったが、街の周囲には外壁が築かれており、関所の姿も見受けられた為、問題を起こさない為に正規の手続きで街に入ることにした。

小説の異世界召喚ものだと、通行料や身分証明が必要な場面だが、ここは壁(関所)に当たってから対応する。というか、事前情報が無いからそんな選択しか採れない。


「うん?」


転移した場所から少し歩くと、《サテライトアイ》の映像に何かが引っ掛かった。

何が引っ掛かったのか気になったので、その辺りの倍率を上げて地上を拡大して見た。


すると、街から三Km程離れた辺りで激しい戦闘が行われているのが確認出来た。


片方は、街の住人であろうヒューマン種をベースにした二百人規模の軍勢。

対するは、黒く塗り潰されたような漆黒のモンスター達らしき千体規模の群れ。

ただし、漆黒の群れの方は本当にモンスターなのか疑わしかった。

少なくとも、ゲーム時代にはあんなモンスター達は作成していない。


「これは介入した方が恩が売れて良いか?」


両者の戦闘模様を確認した結果、ヒューマン種達の方が劣勢だと判断した。

そして、ここで恩を売っておけば、街に入り込みやすくなるかと考えた。


「さて、いきなり向かって攻撃されるのも嫌だな。少し様子を見るか」


いったん判断を保留し、戦闘を観察した。


「うん?あれは!なんであの二人がここにいるんだ!?」


眼下の戦闘模様を眺めていると、知っている顔を見つけて驚き、慌ててその二人のもとに転移した。



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