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ゲームマスターの異世界冒険  作者: 中野 翼
19/42

18.アストは語る・世界の真実の一端

「それじゃあまたな」


シオン達のいる所まで戻ったアストは、そう言って帰ろうとした。


アストは面倒事を回避する気満々のようだ。


「ちょっと待て」


が、シオン達がそうやすやすとアストを逃がすわけもない。

アストはあっさりとシオンに腕を掴まれ、捕まえられた。


ただし、いつでも逃亡は可能だったが。

アストには時空間干渉による転移も、ナイトメア達相手に発揮した圧倒的な身体能力もある。

シオンの手から逃れるのは、簡単の一言に尽きた。


「どうかしたか?」

「どうかしたかじゃない!こちらはお前に聞きたいことが山ほどあるんだ!そう簡単に帰れるなんて思うなよ!」

「やっぱりか。けどな」


そう言った瞬間、アストはアリアとウ゛ェルドの隣に転移した。


「「わっ!」」

「俺はお前達にそこまで情報を渡すつもりはない」

「なんだと!」


アストが情報を渡すのを渋ると、シオンに怒りが湧いた。


「理由を聞いても良いかしら、星夜君?」

「・・・友人だからだよ」

「友人だから?」

「ああ。世の中には、知らない方が幸せなことなんていくらでもある。俺が知っている情報は、お前達にとってはそういう類いの情報だ。だから、知らない方が良い」

「「・・・」」


アストが諭すように二人に言うと、シオン達も黙るしかなかった。

なぜなら、アストが本当に自分達を案じていることがわかったからだ。


「・・・なら一つだけ良いかしら?」

「・・・なんだ?」

「星夜君が私達に知られたくないというその情報。出所は何処なの?」

「冥夜からだ」

「冥夜?冥夜、冥夜・・・!それって星夜君の幼なじみの彼のこと?」


アリスは三十年近く前の記憶を掘り起こし、なんとか該当する名前を思い出した。


「その冥夜だ」

「彼もこちらに来ているの?」

「いや、冥夜の奴は向こうの世界に留まっている。今回こちらに来たのは、俺だけだ。いや、多少前後しているが、後最低十人はこちらの世界に喚ばれてるな」

「喚ばれているって、まさか・・・」

「そのまさかだ。会社で仕事をしている時に魔法陣による強襲を受けてな、同僚が十人。お前達と同じようにこちらの世界に拉致されてる」

「十人!」


その自分達の倍以上の被害者数に、アリス達は驚きを禁じえなかった。


「・・・星夜君も誘拐されたの?」

「いや、俺は冥夜の手引きでこの世界に来ている。だからゲームのアバターの姿なんだ」

「手引き?それにだからゲームのアバターって、どういうこと?」


これにはアリス以外も首を傾げた。


「手引きっていうのは、そのままだ。冥夜がこの世界の創造主と繋がりがあって、そのツテで俺をこの世界に送り込んでるんだ」

「創造主。つまり、この世界の神と冥夜君は知り合いなの?」

「いや、創造主だ。亜璃子が言う神が相手じゃない」


アストは何故かきっぱりと、神であることを否定した。


「「「「「「?」」」」」」


その場に居た多くが違和感を覚えたが、口には出さなかった。

アストの雰囲気が、なんというか怒気を纏っていて、とても聞いていいような感じではなかったからだ。


「それはわかったわ。じゃあ、冥夜君とその創造主の繋がりは何?」

「冥夜の副業に関係しているらしいが、俺も詳しくは知らない」

「そう。ならあと、ゲームのアバターっていうのは、なんで?」

「俺の安全面とこの世界への適応性を考慮した結果だそうだ」

「安全面?つまり、ゲームのアバターだから問題が出ないと?」

「ああ。さっきも言ったが、この姿はゲームのアバターのもの。俺の本体ってわけじゃない。だから、ゲームよろしく条件さえ満たせばいくらでも復活が可能だ」

「それは不死身ということか?」

「傍から見ると多分そう見えるな。実際には違うんだがな」

「不死身に死者からの復活。お伽話の世界だな」

「そうね。この世界で死者の復活なんて、ネクロマンサーのお伽話とかにしかないものね」


シオンとアリスの言葉に、アルフレッドとアリシア、アリアやウ゛ェルドも黙って頷いた。


「ああ、本当にそこまで退化していたか」

「「「「「退化?」」」」」


アストの呆れを含んだその声に、誰もが疑問を持った。


「星夜、退化したというのはどういう意味だ?」

「そのままの意味だ。この世界の住人達は退化した。弱く、愚かで、何もかも忘れ去って、欺瞞にどっぷり浸かって、まったく救いようがない」

「俺の領民達を馬鹿にしているのか!」


さすがにアストのその言い様には、シオン達領主一家は怒りを見せた。


「馬鹿にか・・・。そうする価値もない。俺がこの世界の住人達に向ける感情は、怒り、憎しみ、敵意に殺意。そして、哀れみくらいのものだ」

「全部負の感情だよな?なんでそんな感情ばかり?」


暗い眼をしながら言葉を紡ぐアストに、ウ゛ェルド以外の者達は全員絶句した。


「この世界の住人が、俺の周囲で人を召喚したのはお前達を含めて最低六回。小、中の紫苑達、高、大学、先程言った会社の同僚達に、異世界組のアリア達。俺が把握している分だけでもこれだけだ。俺がこの世界の住人達に正の感情を抱くわけがない」

「「「・・・」」」


さすがにシオン達も、それだけ周囲の人間を誘拐されている相手に、先程のようなことは言えなかった。というか、どう弁護しようとしても、この世界の住人達の方が悪人である。


「それと退化したと言った意味だがな。一つ前に言ったこのアバターの適応性に関係がある」

「そういえばさっきそんなことを言っていたよな。けど、ゲームのアバターがこの世界に適応するものなのか?強さという意味なら、生身よりは強い気がしないでもないが?」

「適応するとも。なぜならこの世界は、このアバターが存在したゲームの世界の並列世界なんだからな」

「「「「はっ?」」」」

「おいちょっと待て!この世界って、ゲームの世界なのか!?」


シオンは思ってもみなかった情報に、驚きを隠せなかった。

シオンやアリスにしてみれば、それは考えてもみなかったことだった。

そして、それも無理はない。なにせ、二人が召喚される前には存在しなかったゲームタイトルなのだから。


「正確には、ゲーム機の中にある世界というわけじゃない。さっきも言ったが、この世界は並列。横並びの世界だ。ゲームの世界を基準点に、無数のパラレルワールドが生み出された。その内の一つの世界。世界法則にゲーム要素は多々あるが、あくまでも現実の世界だ」

「そうなのか」


アストからこの世界が現実だと聞いて、シオン達はホッとした。

さすがに自分達が、ゲームの人形になるのは嫌だったのだ。


「だが、裏を返すとゲーム要素が半分近くは適応されているということだ。俺からすると、ゲームの世界と言っても良いと思う。というか、魔法やスキルがある時点で現実ではなく、ファンタジーの世界だろう?」

「まあ、言われてみるとそうよね」

「さて、話を少し戻そう。今話ことを前提に、この世界の住人達が退化したことについてだ」

「ああ、そういえばそんな話だったな。途中のインパクトで、すっかり忘れてた」

「私も」


シオンとアリスは、驚きの連続でそろそろ疲労してきていた。


「この世界の住人達は、そのゲーム法則の加護のほとんどを失っている」

「ゲーム法則の加護?」

「簡単に言ってしまえば、ゲーム的にはよくあるレベル、ステータス、熟練度、ドロップアイテム、死者蘇生アイテムに、課金系の高位アイテム群。他にもいろいろあるが、その全てが適応範囲外になっている」


アストの口から語られたのは、本来であれば多くの力を獲られただろう内容ばかりだった。

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