約束
それからは式は滞りなく行われた。
2人はアリスターの馬に乗り、国民に姿をお披露目しつつ国の大聖堂へと向かい、そこで誓いの言葉を交わした。
それからはまた2人で馬に乗り城へと戻り、現在2人は晩餐会用の正装に着替え、時間まで夫婦の部屋で過ごしていた。
「クリスティアナ姫。
長旅、疲れただろう?」
「いいえ。私は馬車から外の景色を眺めていただけですもの。
大丈夫です。
お気遣い感謝します、殿下」
ティアナはそう言うと目の前に置かれたティーカップへと手を伸ばす。
その姿を眺めていたアリスターは、ティアナがティーカップを置くのを見てから声を掛けた。
「…毒が入っているとは、考えないのか?」
問われてティアナは視線を上げると、思考の読めないアリスターがじっとこちらを見ている。
ティアナは薄く笑みを浮かべると、ゆっくりと首を横に振った。
「毒が入っていようがいまいが、私はもうこの国の人間なのです。
私がここで死のうが、オーランド皇国との関係にはなんの問題もありません。
リュールタリア帝国の人間が1人死んだところで、オーランドはなんの口出しもできないでしょう?」
ティアナはそう言うともう一口ティーカップに口をつける。
アリスターはその言葉に呆気に取られていたが、クスクスと笑みを溢す。
「我が妻殿は相当なやんちゃ姫だったのか。
はたまた才女だったのか。
見当はつかないが、面白い人だ。」
「あら。そうですか?」
首を傾げるティアナにアリスターは微笑みかけると、自身もティーカップを口につける。
それからティアナに視線を向けると少しだけ真剣な顔をして話始める。