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転生しても頼りない…  作者: 真地 かいな
第2章 宗教と正義(仮称)
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第13話 騒がしい獣人街

ミミの心情を少し付け加えました。(H26.9.29)

「ほぉ、転生者とは珍しい。」


暗闇の中で全身から悪臭を放つ老人がポツリと呟いた。

漂わせる臭いとは対照的に、身に纏う純白のローブは乙女の肌を思わせる。それと同じぐらい真っ白な髪の毛を背中まで伸ばし、左腕には豪華な装飾が施された黄金のブレスレットを付けている。


この老魔術師のそばには誰もいない。

どちらが上か下かもわからないような暗闇の中、常人であれば糸間に気が狂いそうな空間に、フワフワと一人で浮かんでいる。


「…こいつに林檎を取ってきてもらおうか。」


瞳すらない真っ白な目、そんな目で何を見ているのか、老人は不敵な笑みを浮かべた。


ーーー



「ミミ!!」


「お兄ちゃん!!」


ガシッ!!


「…はぁ。」


地べたに腰掛け、ローザにコンペートを与えながらセロはため息を吐いた。

昨夜帰って来てすぐにマンドラゴラの根を煎じて飲んだだけでミミは元気になった。それはセロにとっても喜ばしいことなのだが。そのまま眠りに入り、起き出した頃には喜びを分かち合う二匹の猫が名前を呼び合い、抱きしめ合いを繰り返していたのだ。

セロの存在に気付いていながら微塵も配慮することをしない二人。ため息が漏れるのも仕方ない。


「お熱いこってすなぁ。」


「ミミ!」


「お兄ちゃん!!」


ガシッ!


セロの皮肉を込めた一言も、二人には届かない。


「黒山羊さんたら、読まずに喰うた…。」


独り言を呟きながら、セロは手を動かす。多量のマンドラゴラの根を有り難みを感じない手つきで、ゴリゴリ煎じているのだ。


ゴリゴリ


「ミミ!」


「お兄ちゃん!」


ゴリゴリ


「ミミ!」


「お兄ちゃん!」


ゴリゴリ


ガシッ!


そんな三重奏が獣人街に響き渡ったのは、セロがこの異世界に来て四日目の早朝だった。


「さてと、こんなもんかな。」


セロの目の前には粉末にした秘薬が多量にあった。


「セロ様、どうにかなりそう?」


作業が終わった様子に気付いたミミは、兄の腕から逃れ、不安げな表情を浮かべてセロを見つめる。


「あぁ、まぁやってみんことにはわからへんよ。」


そんな返答にミミの表情が若干曇る。キバはミミがセロに様付していることが気になるようで、ミミを問い詰めているが、軽く無視されていた。


「あっ、ゴメン心配させてもぉたな。まぁ、ミミちゃんへの効力見たら十分やとは思うんやけど水やらなんやらに溶かし込んでも使えるかはまだわからんからな。そんときは、別の方法でやるだけや。ミミちゃんの願いはちゃんと叶えたるから安心しとき。」


セロはせっせと準備していた。というのも、元気になったミミの復帰祝いをやろうとキバが言い出したのだが、ミミは個人的な何かを切望することはなく、願いを聞いてくれるのならば、この地区の獣民達にも元気を分けてあげたいと言い出したのだ。ミミは、獣人族が神と崇める“麒麟”を熱心に信仰しており、自分が受けた神の施しをこの地区の獣民全てに届けることに使命感を持っていた。

そこで考えあぐねたキバとセロは、大量に手に入れた秘薬を用いて獣民達に元気が出る炊き出しを計画したのだ。


「秘薬は本当に良かったの?」


ミミは簡単に秘薬を差し出したセロに申し訳なさそうな表情を浮かべる。薬屋で手に入れた高価な万能薬よりも、効果の強い秘薬なのだ、それをタダ同然で使うことになってしまったことに罪悪感の様なものを感じているのだろう。

セロにとっては多量にある根の使い道に困っていたところではあるし、獣人族の現状を憂いたこともある。ミミの申し出は受け入れてしかるべきであった為、問題ないと笑顔を浮かべる。


そんな奇跡の体現者であるセロはミミの中では神の使徒のように見えたことだろう。たとえ人間族であろうとも、ミミの目には“セロ様”の背後に神々しいオーラが見えているのだ。


「さてと、後は炊き出しの為の食事確保やな。ちょっと出かけてくるわ。」


「俺も行くぞ。」


「いらんいらん、元気な妹との時間を大事にしぃ。買い物は僕一人で十分やから。」


付いて来ようとしたキバを、片手で制したセロはトコトコと大通りへと向かって行った。秘薬は長い時間の中で失われたミミの体力までは回復してくれなかった。そんなミミが無茶をしてしまわないようにキバに託したのだ。それに、セロはキバが付いてくると人間からの印象があまりよろしくないような気がしていたのだ。



ーーー



「みんな〜! ちゃんと、並んでねぇ! みんなにちゃんと行き当たる分を準備してるから大丈夫だよ! 押さずに並んで受けとってね。」


その日の獣人地区は今までにない盛り上がりを見せていた。

世界樹で手に入れた大工品の殆どを金銭に変えて、多量の食材を買い込んだセロは、秘薬入りのスープで炊き出しを行っている。


日々の食糧にもありつけない獣人達はすぐに食らいついた。人間であるセロだけならば容易に近づくことなどなかったかもしれないが、隣に並んだミミが元気いっぱいに呼び子をするのだから、腹を空かせ、病を患う獣民達が集まらない訳がない。


ただ空腹だけがこの街の悪疫だったのではない。獣人達にとって、そのスープは幸運だった。一口食べればたちどころに病を癒す秘薬のスープに獣民達は何年ぶりかの安らぎを得ていた。このスープにマンドラゴラの根が入っていることは言及していない。もし、無料配布しているスープの素が秘薬だとバレれば、獣民同士でいらぬ諍いがあったかもしれないからだ。

もともとそんなことを行う体力がある者はいなかったが、ミミが忙しなく働いてくれることもあり目立った混乱は起こらず、整然と列に並ぶ獣人達の姿があった。


余談だが、キバは渋々ながら愛しい妹と離れて、動けない同胞にスープを運んでいる。何故かセロから離れたがらないミミに言い知れぬ不安を感じながら。


「ありがとう、人間族ヒュームのお兄ちゃん!」


「あいよっ! 元気になれて良かったな…。」


セロの目に涙が溢れている。

今時分、セロに感謝を伝えながら、汁しかないようなスープを受け取った女の子は、先日、キバの家の前で死にかけていた鳥人種の少女だ。

秘薬スープで元気いっぱいになったその子は、四杯目のスープを手にして駆け出した。


一応、スープ作成には様々な具材を用いた。しかし、獣民全ての口にスープを届けるためには、準備した具材は少なすぎた。食材が溶け出すほどに栄養を染み出させたスープが精一杯だったのだ。だが、そのおかげで量だけはある。求めるならば、おかわりは自由であった。


「こんなんじゃ、明日には元通りやろな…。」


セロは目に涙を溜めながらうつむいた。一日生き延びたからといって暮らしが改善されるはずもなく、こんな炊き出しが毎日出来るわけでもないのだ。

そんな暗い雰囲気のセロにミミが駆け寄る。ガシッとセロの腕を抱き込み、ない胸を押し当ててきた。


「こんなに騒がしい獣人街、初めて! ミミちゃん嬉しいの、ありがとうセロ様!」


せめてもう少し年齢が上ならば…、コロッとセロを落とせるような満面の笑み。無邪気な笑顔に心が和む。

セロも励まされ、やらないよりはマシだろうと気を取り直した。


「貴様っ!! 人間ではにゃ〜か! いかんっ!! 皆、このスープを食べるにゃ!! 毒が入っとる!!」


せっかくやる気を取り戻したセロに、そんな声が聞こえてきた。

長蛇の列に並んでいた亀の老婆が騒ぎ出したのだ。炊き出しを行っているのが人間族であると気付いた老婆は、歯のない口で罵りの声を上げる。

しかし既にスープを受け取り、周囲で久方振りの食事に舌鼓を打つ者達は振り返りもしない。


「おばあちゃん、大丈夫だよ。セロ様はミミちゃんの病気を治してくれた人なんだからっ!」


突然目の前に現れた小さな天使に老婆の目が瞬く。


「しかしっ!! 此奴きゃつはヒュームじゃぞ! このミッドガルドを蹂躙した極悪種族なのじゃ!」


「違うよ。セロ様は獣人族の神様、麒麟様が遣わした救世主なんだよ?」


セロはため息を付きながら、列に並ぶ獣民にスープを渡し続ける。

このやり取りは、本日何度目かのやり取りなのだ。老婆でなくとも、ヒュームを目の敵とする獣人族は多い。セロにも自分の慈善活動が受け入れられないというのは辛いものがあるが、それを顔には出さないように、笑顔を張り付けて配膳を続けた。






ユグドラシルと呼ばれる街は、かつてミッドガルドと呼ばれる獣人族のみが住む街であった。悠然とそびえ立つ世界樹と獣人族は共生し、守り、護られ、平穏に生きていた。


その平穏をヒュームが土足で踏み躙ったのだ。


神の国を名乗る宗教国家“聖王都エルダ”と、エルダ国とは別の神を信仰する “リヴァイア教団”は、互いに世界樹を神聖視していた。

二つの信徒達は聖樹に巣食う獣人族を力付くで追い出して、そのまま世界樹は自分達の領地だと主張し合い、戦争を繰り広げる。


戦力が均衡し、長引く戦争でヒュームの貴重な人足が無惨に散っていくことを気に病んだ両団体の代表者は、別の方法を考え出した。一度は追い出した獣人族をそれぞれの宗派に勝手に巻き込み、獣人族同士でーー。


「我らの麒麟様の神像を無惨に破壊し、我らを勝手に二手に分けたヒュームは、代理戦争を行わせたにょじゃ! 我らの手を同胞の血に染めさせたヒュームは我が物顔でこの街を支配しておる! こんな事が許されると思うてかっ! 我らが街、ミッドガルドを廃墟に変えたヒュームを許してはにゃらんのじゃ!!」


悪の根源に怒りの鉄拳を!

セロをヒュームの代表者のように睨みつけながら、同胞に訴えかける老婆だったが相手にする者はやはりいない。


何分、年月が経ち過ぎているのだ。もちろん獣人族は皆、ヒュームを嫌っている。

寝物語に祖父母から戦争の話を何度も聞いて育った。しかし、それは百年以上も昔の話だ。占領主が何度も変わったこの街も、今はどこにも所属しない独立した街として落ち着いていた。

寿命の長い一部種族を除いて、代理戦争時代から何世代もの時間を経た今の獣人族にとっては、差別に対する恨みはあっても一族の怨みなど抱いてはいないのだ。


「さぁ立ち上がれ勇姿達よ! 自然界に悠然と生まれ落ちた自然界の王達、同胞よ! 共に我らがミッドガルドを取り戻そうではにゃいか!!」


沈黙が場を包む。老婆は賛同者を探して視線をばら撒く。

そんな亀の老婆に近付く者がいた。


「…タケ婆、もう良しなよ。このスープには毒なんか入っちゃいない。この子を見てくれ、ウチの子は彼岸の際にいたのに、このスープを一口飲んだだけで生き返ったんだ!

俺もヒュームは嫌いだが、この男は…このスープに罪はねぇ! 麒麟様の使いだって言われても、にわかに否定は出来ねぇよ!」


鳥人種の女の子の父親だった。

何度目かの騒ぎに、何度目かの父親の説得が入る。ミミの笑顔も老婆に向けられる。


「なっ!? 軟弱にゃんじゃくなっ!! 我らが勇姿を、誇りを忘れたのかぇ!? 」


「お婆さん。」


セロが笑顔で近づいた。


「にゃっ! 近寄るな! その手を血で洗うような罪人がワレに近寄るでにゃいっ!!」


途端に距離をとる老婆だったが、その目はセロが手に持ったスープに釘付けになってしまう。

老婆も空腹なのだ。


右に左に、スープを追って目線が泳ぐ。


「僕に近づきたくないんやったら、それで良え。スープ、ここに置いとくから冷めんうちに飲んだってや。」


セロは、そのまま器を地面に置くと、我も我もとスープを求めてひしめく獣民達の元へと戻る。


そんな人間族の後姿を呆然と見送っていた老婆はスープの入った器と睨めっこする。数十分、迷いに迷う。食べるべきか食べざるべきか、それが問題だ。

ずいぶん長い間頭を悩ませていた老婆だったが、セロも鳥人種の父親も、誰も自分を見ていないことを確認すると、すっかり冷めてしまったスープを手に取り、一気にかっ込んだ。

胃液しか存在しなかった老婆の胃袋に、秘薬のスープがなだれ込む。いきなりの訪問者に驚く胃だが、秘薬の慈しみはすぐに効果を発揮する。

長い間放っておかれてすっかり冷めてしまっているはずなのに、スープを口にした老婆の全身を温もりが包み込む。若い華であった頃の絶頂に似た感覚が押し寄せてくる。


「か…神の味にゃ…。」


思いの外大きな声で漏れていた老婆の感想。鳥人種の父親は密かに微笑んでいた。


老婆がわざわざ長蛇の列に並んで、スープの器をセロに返す時、俯き顏で頬を赤めて「美味かった」と囁く時は、セロの涙が流れる時だ。セロは幾分か血色の良くなった老婆に笑顔で頷く。


夕方まで獣民達の列が途切れることはなく、何度も罵声を浴びながら、何度もスープを差し出すセロの頬が乾く時は遂に来なかった。






「かぁ〜、さすがに疲れたぜ。」


「お疲れ様、お兄ちゃん。どお? たまに良い事した感想は? お兄ちゃんも麒麟様を感じた?」


すっかり陽も沈み、自分達の家に帰って疲れを癒す二人。この場にセロの姿はなく、疲れた足で役場に赴き、ローザの主人探しを依頼している。

この迷いドラゴン知りませんか?

暫らくすれば、そんな貼り紙がこの街の至る所で目に付くことになるだろう。


「麒麟様ねぇ…。」


キバの神を嘲るような物言いにミミは顔をしかめる。

ミミも今までキバが行なってきたコソ泥生活は、病弱な自分を守る為だと理解はしている。しかしやはり兄には真っ当でいて欲しい。今日の善行で神を感じたであろう兄に、少しでも良い変化がないか確かめようとしているのだ。病み上がりで一日中炊き出しをしていたミミの方が疲労は激しいであろうに。


「神様なんかいねぇよ。神様がいるなら、俺達がこんな事する前に救われてる筈だからな。」


熱心な麒麟教徒のミミの目が曇る。不信心な不届き者はたとえ兄であろうとも、兄であるからこそ許せない。


「お兄ちゃん!!」


「ミミ!! そういや、アイツに何か変なことされなかったか!? 大丈夫だったか!?」


思い出したようなキバの言葉が食い気味に飛んできて、怒りが削がれるミミ。


「えっ!? アイツって誰?」


「あのヘタレ野郎のことだよ! ミミと一緒に給仕してた!」


首を捻らせアイツとは誰かと考えていたミミが再度の怒りに赤面する。


「セロ様をアイツ呼ばわりしないで!! セロ様はヘタレなんかじゃない!! セロ様は救世主様なのよ!! 変な事って何のことよっ!!」


圧倒されるキバ。病弱な妹がこんな風に怒鳴り散らしたことなど、唯の一度もない。


「あっ…えっ!? 何で?? えっ!?」


「さぁ、白状しなさい! 変な事ってどんな事なの!? どんな罰当たりな想像をしたのよっ!? 私の前で懺悔しなさい!」


「いや…いや…私?…えっ!?」


ついさっきまで一人称はミミちゃんだった筈だ。恋する少女はその性格まで急成長させたようだった。

急激な変化に、ずっと一緒に困難をくぐり抜けて来たキバは戸惑う。


「えっ!? 俺は今、ミミに殺されるのかっ!? えっ!? 今までずっと守って来た愛する妹に?? えっ!?」


混乱って怖いな。

何を口走るかわからない。まぁ、殺気を放つミミの姿を見れば理解も出来る。


「さぁ、さぁ、さぁ!! 懺悔しなさい!!」


神に背く兄の思想を叩き直そうとするミミは、何処から持って来たのか、根性注入棒を右手に掲げて、ズンズンと迫ってくる。


「さぁ! 何を考えていたの!?」


「いや、キスとかされたり…。」


見開かれたままの瞳で、勢いに負け、素直に話してしまうキバ。

ミミの反応にさらに目を丸くする。


「きっキス?? それは、そのぉ、あのぉ、せっ…接吻のこと?」


何故か昔気質な表現で聞き直すミミは、根性注入棒を取り落とし、憧れの状況を夢想しながら、身体をクネクネ恥ずかしがり始めたのだ。


「接吻…セロ様と…。どんなのかしら、こう唇と唇を…うふふ。」


「えぇ〜っ!!?

だっ…ダメだぞ!! 兄ちゃんはあんなヘタレは認めねぇ! 認めねぇからなっ!!」


キバは妹に殺されそうになっていた窮地から脱した安心感よりも、目の前の妹の変貌に戸惑いの声をあげる。


「キス…、セロ様とキッス…。けー、あい、えす、えす、Kiss…。ポッ。」


妄想の園にいるミミには、キバの言葉は届かない。


「いや、効果音を口で…って!

ダメだぁ〜!! ミミ!! 兄ちゃんの話を聞けっ!! 聞いてくれっ!!

なっ! 何でそんなに口を尖らせてんだよ!? 誰とキスするつもりだ??

ダメなんだぁ〜!!」


涙ながらに突っ伏すキバと、口を尖らせクネクネ踊るミミ。家の中はカオスと化した!!

そんな家の中に、セロが入ってくる。

垂れ下がる布をかき上げ、異様な光景を目にしたセロは、見なかった事にしようと、後退る。


「セロ様!!」


「いやちゃうっ! 人違いやっ! 僕はセロなんて名前やないんやぁ!!」


半分、妄想世界に浸ったままに、ミミがセロに飛びついた。逃げだそうとするセロを抑え込み、キスを迫ろうとするミミ。

お向かいの女の子が、衝撃的な光景を前に自分の羽根で目を覆っている。


ミミを追いかけ、慌てて飛び出したキバが、セロを蹴飛ばし、ミミを抑え込むが、強烈なカウンターがキバを襲う。

夜中の獣人街に悲痛な叫び声が響いた。






噛まれた尻尾を摩りながら、家の中へと帰っていくキバ。淫らに取り乱したことを恥ながらミミが続く。


セロは呆然と立ち尽くし、今日は宿屋に泊まろうと決めた。ゆっくり後ずさるセロだったが、ミミに見つかり、無理矢理引きつられて結局お泊りすることになる。


ミミはセロの腕の中で安らかな眠りを貪るのだった。


「何でこうなったんや?」


「黙れ! ヘタレ野郎。ミミを襲ったら許さねぇからな! 本当は触れることすら…。くそっ!!」


ロリコン趣味などないセロは、置かれた状況に困惑しながら、ミミのヨダレを拭ってやる。


ローザが構って欲しそうに、セロの布団に潜り込む。


ミミの反対側で睨み付けるキバと川の字を作って、セロも眠りに誘われていくのだった。


「何でなんやぁ〜!!」




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