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本日も天気は荒れ模様!  作者: 黒織
カーヴァイン共和国篇
14/20

第12話 勘違いされている模様!

「おい、そこのフードかぶったの止まれ!」

「……何でしょうか?」


 ザナリア州都に辿り着いた俺たちは州都の検問を通過しようとしていた。夕方という時間帯のため、州都西門には多くの人たちが街に入るためて列をなしていた。そんな中、リンドドレイクを3体も連れている俺たちは町民や商人から奇異の視線を送られている。見た目からして冒険者風の俺たちを何処の強者だと検分していて、商人にいたっては上手くツテを手に入れて、安く護衛を引き受けてもらおうという算段もあるようだ。

 しかし、そんなパーティーの中、明らかに怪しいフードを目深にかぶった男が目立ったのだろ。さらに、頭の上に乗る黒い子犬がさらにその異様さを醸し出している。

 そんなこんなで、門兵に唯一止められてしまった俺は、人が行き交う中尋問を受けてしまったのだ。


「貴殿がこの街に来た目的は?」


 明らかに疑われている口調に困惑する。前の方ではすでに門を潜ったノエルたちが心配そうにこちらを見ていた。


「前にいる仲間達と同じで、冒険者になるためにこの国に来た所です」

「貴殿の様な者がか?」


 何を懸念しているのかは分からないが、何やら考えた後、俺の前にずいっと手を出して来た。


「ギルドカードを見せろ」

「いや、だからこれから冒険者になる所で……」

「ギルドが無い国から来たってことか?ならタグを見せてもらおう。身分くらい書いてあるだろう?」

「いや……俺、身分証持ってないんだが……」

「は?」


 もの凄く困惑した目線を投げられる。顔には信じられんと書いてあった。


「あ〜。黒すけの言ってる事は本当だよ門兵さん。こいつ、今までグランディーナの山奥の小ちゃな集落に住んでたからタグとか持ってないんだ。待ちに来たのも今日が初めてなんじゃないか?」

「まさか!?何処かの名の知れた武人だろ?」

「うん。そう見えるけど、武器すら持ってない素人なんだなこりゃ……」


 見かねたエリックが俺のもとにやって来て、俺のここでの設定を乾いた笑い浮かべながらのべる。対して門兵は目を見張り、エリックと俺を交互に見やった。

 ひとまず門兵は、エリックの言っている事を確認するために俺を身体検査する事にしたらしく、くまなく服の中を探られた。頭の上に乗ったハルがそんな門兵に向かって唸り声を上げていたが、体を撫でて落ち着かせる。どうやら、あまりに多い人に気が立っている様だ。


「未だに信じられんが……本当にそのようだな」

「俺もそう思う」


 エリックが何やら門兵と頷き合い共感している。そんなに俺は手練に見えるのだろうか……

 門兵がキリッとこちらを向いて姿勢を正す。


「入場を許可する。本来、身分が分からない場合の入場には銀貨1枚を入場料として貰うのだが、それはもう支払われているから貴殿はこのまま進んでもらってかまわない。ギルドに立ち寄るならこの大通りを真っ直ぐ進むといいだろう」

「ああ、わざわざすまないな」

「なんのことはない。街でいらぬ騒ぎを起こされる前にギルド預かりになった方がこちらも都合がいいんでな」

「さいですか……」


 つまり、他国の人間が面倒を起こすより、ギルドの人間が問題を起こす方が何かと都合が良いと有意味だ。ずいぶんな厄介払いである。でも、こちらとしてもその方が都合がいいので、素直に助言を聞いてギルドに向かう事にした。


「新人さんも災難すね!まさかこうも早く目を付けられるなんて!」


 ガルタがのんきに声をかけてくる。そんな光景を見ていた門兵は、あれが新人?新人なのか?と素直な疑問を頭の上に浮かべて、腑に落ちないと言った表情で彼らを見送ったのである。



 微妙な顔をされて見送られた俺たち一行は、門兵に言われた通りメインストリートと思われる大通りを進んでいた。異世界に来てじっくりと街を見る機会はこれが初めてだ。グランディーナと同じで西洋風の建物が並び、ほとんどの建物が3階だての大きいものだ。

 店の前には色とりどりの露天が出され、道行く人が夕食のおかずを買ったりして賑わいを見せていた。商人達は自分の商品を買ってもらおうと声を張り上げ、何処もかしこも威勢がいい。そして、どこの店にも召喚獣が必ず一匹はいて、食べ物を暖めたり冷やしたりと露天の中を飛び回っていた。


「うわぁ〜!あれ美味そうッスね!」


 じゅるりと涎を垂らしながら俺以上に回りをキョロキョロ見回すバルカ。ふらりと今にも離れていきそうなその襟首を鷲掴みエリックが引きずっていく。しかし、ズリズリ引きずられていきながらもなお、めげずに露天に近づこうと手をのばしていた。


「ふふっ。バルカさんて楽しい人ですね」

「バカは死んでも治らんとよく聞くぞ?」

「そんな事言っちゃダメだよディーダ。今回はバルカさんのおかげでこの国に来れたんだから」

「あのバカに助けられたなど、俺様のプライドが許さん」

「まあまあ。そころでトーヤさん。初めての街はいかがですか?」

「うん。にぎやかで驚いた。至る所に召喚獣がいるってのも新鮮だな。ただ……」


 ふと視線を外す。すると周りにいた買い物客がズザっと一歩下がり道をあけた。


「くくっ。明らかに避けられているな。」

「やはり、そう思うか……」


 そうなのだ。この街に入ってから明らかに人が俺を避けていく。最初は気のせいかと思っていたのだが、目が合ったとたん悲鳴を上げられザザッと避けられたら流石に分かるだろう。俺の見た目が怒っているように見えるらしいと言う事に気づいてから、ここまで人の多い場所に来た事が無かったので、周りの反応に戸惑いが隠せない。


「み、皆さんトーヤさんを誤解してるだけなんですって!話してみればかなりのお人好しなのに」

「さすが、会った時に泣いた者の台詞は違う。なぁ?ノエル?」

「うわぁぁ!それは忘れて!」


 ノエルがディーダの口を塞ごうとつま先立ちながら手を伸ばす。しかし、逆に体を絡めとられ逃げられない様にがっちりホールドされていた。慌てて体を離そうとするノエルをとても悪い笑顔でディーダが見つめる。


「ノエルから俺に迫ってくるなんて珍しい。そう言えば、この間のお礼をまだ貰っていなかったな」

「みゃあぁぁ!?まって!まってってば!」


 耳元で囁かれて、ノエルが悲鳴を上げる。ギャラリーが周りにできているにもかかわらず、気にする様子を見せないディーダにノエルがさらに声を張り上げた。俺は子犬の情操教育に悪いので、ハルの目を覆い、足早に先に進むエリックのもとへむかう。ハルがキュ?と鳴くが何でも無いと告げて無心で歩く。


「ディーダ!離してってば!恥ずかしいって!」

「なら、今夜は俺に付き合ってもらうぞ?」

「ひゃ!?くすぐったい……やめっ。わかった、わかったから!」


 俺は後ろで響く声を聞きながら、ノエルに冥福を祈ったのであった……。


 エリック達は街の中でも1、2を争うほど大きい建物前にいた。リンドドレイク達はギルドの竜舎にひとまず預けたようで、チラリと馬小屋の様な場所へ連れられていくのが見えた。俺は再度建物を見やる。そびえ立つ建物は4階立てで、1階と2階の横幅が他の店から比べると3倍ほど長かった。重厚な開きっぱなしの扉からは屈強な男達が大勢で入りしている。男達は誰も彼も目立つ武器を持っており、強面の顔で一般人とはほど遠い容姿をしていた。

 数人がこちらを気にして見てくるが、もともと自分たちが強面だからか、街の住民みたいなあからさまな態度は無い。だが、同業者になるであろう俺を抜け目無く見つめて来るのだった。

 俺たちはギルドに足を踏み入れる。内装は簡素で、左手に待ち合い用の椅子と机が数個あり冒険者達が何やら情報交換にいそしんでいた。右手の壁には横に長い掲示板があり、ビッシリと紙で埋め尽くされている。これがよく聞く、依頼が書かれた紙(クエスト)というものだろう。

 様子を確認しながら奥のカウンターへ近づく。カウンターの上には新規登録発注所とかかれたプレートがあった。少し前にディーダから言語魔法と書記魔法を教わり自分で使える様になっていたのだが、文字が読めるという事は魔法が上手く発動しているのだろう。俺は迷わずそのカウンターに並ぶ。すると、担当の女性がひっ!と悲鳴をあげて後ずさり、隣のカウンターにいた男にすがりついた。あまりにあからさまな反応に思わず悲しくなる。そして、すがられた男はこちらを見ると慌ててやってきて頭を下げた。


「申し訳ありません!この子はまだ研修中でして、大変失礼な態度をとり申し訳ありませんでした!こちらは新期契約をするためのカウンターですので、ご依頼受注はこちらで受けています。どうぞこちらへ!」


 男は俺を隣のカウンターへ案内しようとする。しかし、俺は正真正銘の冒険者予備軍だ。まだ冒険者にもなっていないのに、依頼なんて受けられるはずも無い。


「人間。そこの下僕2はまだ冒険者じゃない。さっさとノエルと他の下僕1とバカの分の登録を済ませろ」


 どうやら追いついて来たディーダが男に向かって命令する。振り返ってみると何故かノエルを腕で抱え上げており、その顔はもの凄く満足そうだ。反対にノエルは両手で顔を覆い耳まで真っ赤に染め上げている。あの後何があったかは分からないが、ノエルの羞恥心を仰ぎまくった事は間違いないだろう。

 ディーダの報復を恐れて、ノエルを生け贄にしてしまった俺は何だかとても申し訳ない気持ちでいっぱいだ。周囲からの生暖かい視線に気がついたのかノエルはえぐえぐと声を殺して泣く。それを見てディーダがとても楽しそうに頭を撫でるのだが、それがもの凄い悪循環になっていることに自覚はあるのだろうか。


「二人とも仲いいッスね!」


 そんな空気を読まないバルカの発言に、ディーダが珍しく黒くない笑顔を向けるのであった。


 俺たちの様子に一瞬惚けていたギルド役員の男は謝罪をしながら急いで新期契約書を取り出した。その際、本当に冒険者じゃないのかしつこく聞かれ何度も頷き、使用武器を欄になって使用武器を持っていない事を告げると驚かれ、呆れられ、さらに信じられないと疑われた。そんな事を言われても、本当に持っていない物は持っていないのだ。むしろ、何故初見で俺がそんな手練に見えるのかが不思議でならない。

 そして、腑に落ちないながらも契約書を書き進める俺はある項目でペンが止まった。


「召喚獣ってどうすればいいんだ?」

「えぇっと、トーヤさんでしたね。召喚獣記入欄は召喚獣の特徴と簡単な能力を書いて頂ければいいです。トーヤさんの場合は黒い犬って所でしょうか」


 そう言われて思わず頭の上が定位置になりつつあるハルを見る。ハルはワンッと元気よく吠え、バサバサとシッポを振った。どうやらやる気満々なようである。だが、ハルは召喚獣ではない。魔族だ。だが、ハルが魔族と知られるのは得策ではないし、俺に召喚獣がいないというのは周りから見れば変人だ。さらに、召喚獣を使わずに魔法を使う俺は奇異な存在だろう。

 そうなると、ハルの正体をかくして、ハルが魔法を使っているようにカモフラージュすれば一石二鳥だ。だが、こんな嘘を書いていいのだろうか?

不安になった俺はノエルとエリックに目を向ける。二人は俺と同じ事を思い浮かべたようで、軽く頷いて賛成の意を送って来た。


「えっと、じゃあ黒い犬で、能力は重力操作っと……」


 スラスラと記入事項を書き上げギルド役員の男に書類を渡す。ギルド役員の男は、先ほどカウンターにいたの女性とは違いギルドでも古株なようで、仕事ができる男の顔で書類を読み進める。こちらに同様なんてみじんも見せない所はさすがだ。


「能力は重力操作ですか。さすがトーヤさん珍しい能力を持った召喚獣をお持ちですね。」

「そうですか?」

「はい。同色の方はやはり希有な才能をお持ちの様だ」


 同色は目も髪も同じ色の人間を指した言葉なのだが、どうもそうゆう色を持つ人の守護獣は特化した能力を持つ事が多いいらしい。俺はそうか、と軽く流しすとノエル達を見る。どうやら皆丁度書類を書き終わった所の様だ。


「はい、確認しました。では、皆さん仮契約はこれで終了になります。詳しい規約などは明日以降こちらに来てもらってからの説明になります。その時にギルドカードを発行しますので、契約金をお持ちください」

「了解!なぁ、ここらでいい宿ってあるか?」

「それならギルド直営の赤い林檎亭がよろしいかと。こちらの証明をお持ち頂ければ2割引きで泊まれます。客は冒険者ばかりなので気兼ねも無いでしょう」


 チラリと俺を見ながらギルド役員の男は続ける。


「荒くれも多いですが、何かありましてもほどほどな対応をお願いします」


 そういって、にこやかに営業スマイルを決められた。その笑顔に頷く事しか出来なかったが、この人は一体俺をなんだと思っているのだろうか。

 色々と誤解されている感満載だが、俺たちはギルドを出て赤い林檎亭にむかった。赤い林檎亭はメインストリートから2本ほど裏道に入った場所にあり、一回は酒場のごくありふれた宿屋だ。ここら一帯は冒険者達をターゲットにした宿が多いらしく、すれ違う人達の多くは鎧や剣を身につけていた。

 宿に入ると気のいい女将さんが笑顔で迎えてくれ、宿泊する旨を伝えてギルドの紹介状を渡す。夕方過ぎの時間帯で心配だったが、冒険者御用達とゆう事で部屋は問題なく空いていたようだ。先払いとの事だったので、ひとまず3日分の宿泊料と朝食代を払い、ついでに湯も用意してもらった。湯は一桶あたり三十リィンだったので三桶分用意してもらう事になった。人間4人、ディーダ一人の合計5人分でしめて一万三千五百九十リィンだ。一人一泊朝食付きで8百リィンとお手頃だった。

 この世界での通貨は鉄貨一リィンから始まり、半銅貨十リィン、銅貨百リィン、半銀貨五百リィン、銀貨千リィン、金貨一万リィン、大金貨十万リィンとなっていた。その上に白金貨なるものもあるそうだが、市場にはほとんど出回らないものらしい。

そして、宿泊代を払いうという段階でディーダが行動をおこした。


「ノエル。先ほどの約束忘れてないだろうな?」

「へ?えぇ?」

「人間。俺様とノエルは別の部屋を貰う。これは追加だ」

「なっ!なにいって!?」

「夕食は部屋に運べ」

「うわぁぁ!?まって!はなしてぇぇぇぇ!!」


 ディーダは有無を言わさず追加で銀貨3枚を女将さんに渡すとノエルを抱えたまま宿の階段を上がっていった。

 しきりにノエルが助けて!助けてと訴えてくるが触らぬ神に祟りなしである。そして、無情に閉まるドアの悲しい音がしてノエルの悲鳴が掻き消えたのであった。


「オレ何だか売られていく召喚獣を思い出したッス」

「俺の故郷に、子牛が悲しく売られていく歌があったがあんな感じだったな……」

「まぁ、大丈夫だろ」

「で、あんた達は同じ部屋でいいのかい?」

『はい』


 こうして部屋割りが強制的に決まり、岩戸に籠った2人を除いた3人は下の酒場で夕食を食べてから部屋に行く事にした。夕食は鶏肉のような物を香草とともに程よくソテーした一品で、量、味と共に最高に美味しかった。たった1日で少し大きくなったハルは、小さめに切った固形物なら食べられるようで、食事中皿に盛られた肉の固まりをひたすら見つめていた。

 俺が肉を近づけてよし!っと言うとシッポを盛大に振りながら肉に齧りつく。そして、もきゅもきゅと口いっぱいに詰め込みその味を多いに楽しんだようだった。今夜もきっとお腹いっぱいでコロコロになるだろう。

 夕食を終えると階段を上ってすぐの部屋に入る。ちなみにディーダとノエルは廊下の奥の部屋だ。部屋に入るとすぐに二つの桶と湯が運び入れられたので、有り難く使わせてもらった。ハルは初めてのお湯におっかなビックリだったが、お湯で濡らした手で撫でながら少しずつ慣らすと気持ち良さそうに目をつぶった。すかさずお湯に入れて体を洗ってやる。最終的にはされるがままの状態でウトウトと居眠りまではじめてしまった。

 俺はハルをおこさない様に体を丁寧に拭き、ベットに横たわらせる。ハルはまだ子犬なのに人間に奴隷として連れ回されていたのだ、きっと疲れきっていたのだろう。

 俺は残り湯で体や髪を荒い流すとそのままハルがいるベットに潜り込んだ。目の前にあった黒い毛並みをそっと腕に抱え込むと、その暖かさが胸いっぱいに広がり、穏やかな眠気が包み込む。(いと)おしく(あい)らしい子犬は、スピスピとおなじみの寝息を立て眠っていた。その様子には怯えといった負の感情は見られない。そんなハルの様子を見て、俺は安心して目を閉じ、眠気に身を任せたのであった。

う〜ん。ん?

時間が全然経過していないこれいかに?

そして、ストックが無いのは辛い。どうにか休みの間に書き溜めたいところだなぁ。

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