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第六話

「というわけで、従妹のペンネーム天海空子です」


「ふざけるな! この雌ギツネが!」


 世の中、なかなか自分の思う通りには行かないと思うのだ。


 いや、何で急にこんな事を言い始めたのかと言うと、学生時代に柔道をやっていたり、重量が上の階級なので、少しメタボ扱いで女性にモテなかったりと。


 他にも理由はあるのかもしれなかったが、まずそれは置いておく事とする。


 そんな女性にモテないはずの俺の家で、長身銀髪でスタイル抜群の巫女服美少女と、意外と胸はある小柄でツインテールが特徴の可愛い系少女が、なぜか俺を巡って争っていたのだから。


 しかも性質の悪い事に、白キツネの方が理沙さんをからかっている部分ばかりが目立っている。

 従妹のペンネーム天海空子などと、明らかに理沙さんを挑発してるとしか思えなかったのだから。


「雌ギツネ?」


「そうよ! あんたは、義信ちゃんを誑かす雌ギツネよ!」


「言ったであろう? 我は義信の従妹だと。そもそも、親戚でもないお主がなぜ自由にこの家に出入りするのだ?」


「ええと……。それは……」


 そういえば、俺は理沙さんに家の鍵を渡した記憶がない。

 両親の葬儀のために初めてこの家に来た時には、鍵云々というか近所の人達が葬儀の手伝いで家に出入りしていて、葬儀後も理沙さんだけはうちに出入りしていた。

 なぜそういう事になっているのか、俺にはさっぱりわからなかったのだ。

 

『義信ちゃん、男一人で家事とか大変だよね』


 と言いながら、料理を作ってくれたり、洗濯をしてくれたり、俺が出かけた時に買っておいたデパ地下グルメ食材や、高級スイーツなどを先に食べてしまったりと。


 まあ、半分は残してくれるので良しとしている。

 食事や洗濯などは、非常に助かっている部分もあるのだし。


 『義信ちゃん』と呼ばれる件も、あだ名だと思えば良いのだ。


「まあ、落ち着け。雌ギツネ」


「なぜに、義信まで雌ギツネ扱い?」


 と言われても、いきなりペンネーム天海空子とか言われても困るのだ。


「では、白キツネ?」


「空子と呼べ!」


 話が少し逸れてしまったが、俺は理沙さんがこの家に自由に出入りしても何の問題も無いのだと白キツネに説明する。


「それは、その理沙とやらが義信の嫁だからか?」


「なぜ、そうなる?」


「というか、隣の家の男性が困っていそうだからという理由で、若い独身女性が食事を作りには来ないと思うのだがな……」


「そう言われると……」


 白キツネの癖に、妙に鋭い指摘をしてくるものだ。

 俺とて、『ひょっとしたら?』と思わなくも無かったのだが、そこはこの二十四年間モテない君として生きて来た男。


 そう、バラ色の未来など予想できるはずもなかった。

 世の中は、恋愛小説やドラマのようにはいかないのだ。


「我からすれば、養ってくれればその理沙とやらが嫁でも何の問題も無いがの」


「ぶっちゃけたな」


 やはり、所詮俺は俺。

 白キツネレベルの超絶美少女とは、やはり縁が無かったようだ。


「まあ、我ほどの美女を見れば、この理沙とやらも心配……」


「どうかしたのか?」


 ふと隣を見ると、理沙さんは顔を真っ赤にさせながらその場に硬直していたのであった。

 本当に本心からモテたいとは思うのだが、女性とは何かと面倒な生き物である。

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