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第二話

「ふむ。この文明も、ようやく美味しい物が作れるようになったの」


「あの、それはどういう事で?」


 このまま社の前で話をしていても埒が明かないと考え、俺は白キツネを食事を餌に家に入れる。

 白キツネは、御飯、ナスの味噌汁、漬物、ハンバーグ、ケーキ、饅頭などを美味しそうに食べていた。


「あの社でお稲荷様とやらに偽装して過ごしていたのだが、如何せん、油揚げしか貰えないのが難点かの」


 おかげで、今ではすっかり油揚げ嫌いになってしまったそうだ。

 というか、そんな個人情報はどうでも良かった。


「一つ、気になる点が」


「偽装の部分かの?」


「はい」


「我は、銀河正統連合政府が寄越した偵察生体ロボットだからの」


「銀河正統連合政府?」


 白キツネの話によると、今から百万年前に銀河系をほぼ統一した星間国家であったらしい。

 

「この地球に存在する国家群もそうだが、常に内乱程度の騒乱はあったがの」


 とはいえ、一応の統一は成されていた国家であったようだ。

 統一による経済の成長に、人口の増加。

 当然、ある物が足りなくなる。


「資源ですか?」


「左様」


 銀河系中心部における資源探索と開発が進み、今度は不足が予想されたので外延部にその手が伸びる。

 わかる話と言えば話であった。


「幸いにして、我が寄越された時にはまだ人類は未熟であったしの」

 

 類人猿が、狩猟と採集で暮らしていた時代だ。

 資源の取り合いになる事態など、起こりようはずもなかった。

 どうせ取り合いになっても、まず勝てないであろうが。


「ですが、まだ地球の資源には手を出していませんね?」


 だからこそ、某お米の国や欧米の資源メジャーが好き勝手にやっているのだから。


「それどころでは無くなったからじゃ」


 統一と繁栄の後には、崩壊と分裂が始まる。

 遂に、銀河正統連合政府に対抗する勢力が現れたらしい。


「地方惑星の小勢力なのじゃが、おかしな能力を使うのじゃ。お前達が扱う科学であったか?」


「えっ?」


 お互いの常識に大きな隔たりがあったらしい。

 最初の銀河正統連合政府は、白キツネに言わせると魔法文明が主体の文化であったようだ。

 魔法で恒星間移動が可能なのだから、大変に優れた文明なのであろうが。


「反乱勢力は、次第に占領地を増やして行った」


 そして遂に、勢力を二分するまでに至る。

 当然、銀河正統連合政府は大いなる危機感を抱き始める。


「激しい戦闘が、全銀河中で発生した。犠牲も大きかった」


 戦況は、次第に銀河正統連合政府が不利になっていく。

 そこである切り札を用いたらしい。


「科学の力で、反乱勢力は軍への補給という観点で優れていた。それを抑えるために、『ダンジョン結界』という秘儀を使ったのじゃ」


 何万人もの優れた魔法使いを集め、全銀河系を対象に究極の秘奥義を使った。

 その魔法とは、科学で戦力の元となる鉱物資源が採れないようにする物らしい。


「その魔法にかかった惑星はから、全ての鉱物資源が消える。惑星の環境を維持する僅かな分を除く全てをじゃ」


 消えた資源は、新しい魔法によって各地に登場するダンジョンでしか採れなくなる。

 しかもこのダンジョン、科学的な方法では資源が採れないらしい。


「ダンジョンには、階層に応じて魔物が住んでおる。これを剣や魔法で倒すと、各種金属や宝石入りの鉱石が手に入る」


 ただし、剣や弓や魔法など。

 所謂、RPG的な武器しか魔物には効果が無いらしい。


 銃や火器などで武装して入っても、魔物に攻撃するだけ無駄なのだそうだ。

 

「ダンジョンの中が、そういう魔法理論で書き換えられておるからの」


「困ったでしょうね。反乱勢力」


 結果的に、反乱勢力は補給切れで降伏したそうだ。

 ところが銀河正統連合政府側も反乱で疲弊した。

 銀河系に張り巡らせた魔法のせいで自分達も経済的に足を引っ張られ、各惑星国家ごとに分裂して現在星間国家はゼロになっているそうだ。


「ええと、となると……」


「魔法によって作られた我は、現在お役目御免となっておる。今風に言えば、ここ百万年近くニートであったかの」


 銀河正統連合政府が必要な資源探査で地球に来たのに、肝心の銀河正統連合政府が無くなってしまったのだ。

 当然白キツネの仕事は無くなり、ここ数百年はこの社でお稲荷様に化けて油揚げのみで生活していたそうだ。

 だが遂に我慢できなくなり、形だけデミグラスハンバーグを供えた俺に抗議するために姿を現したというのが真相であった。


「そんな理由で……」


「当然、他にも理由はあるぞ」


「他にも?」


「この地球から鉱山が無くなるのじゃ」


 白キツネによると、百万年前に銀河の中心部で発動した魔法がようやくこの太陽系にも到着するらしい。

 その結果、地球からは鉱山が全て消えてダンジョンに潜って鉱物を採掘するしかないそうだ。


「世界中が、大混乱じゃないか……」


「悪いとは思うが、我には止める術がない。お前にはハンバーグ他の恩もあるからの。あとは……」


「あとは?」


「あの社に住むのも疲れた。養ってくれると嬉しい」


「はあ……」


 この瞬間から、我が家に白キツネの居候が誕生した瞬間であった。

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