プロローグ
完全な思い付き作品です。
更新は、期待しないでください。
「封筒が、小さくて薄いなぁ……」
郵送で届けられた封筒の中には、いつものようにお祈りメールが入っていた。
要するに、あんたは採用試験に落ちましたよと言う事だ。
今のご時世では、特に珍しい事象ではない。
もう既に、この一年で百通以上も貰っている。
昨今では、世間も不景気でなかなか就職先が見付からないのだ。
高度成長期にバブル景気とか、そんな物はもう教科書の記述内容でしか知り得なかった。
今の若者達からすれば、都市伝説でしかない。
「はあ、家庭菜園でも見に行くか……」
不採用通知を開封した封筒と共にゴミ箱に捨ててから、庭へと出る。
この家は、某県庁所在地から車で約一時間ほどの場所にある。
敷地は百坪と広くて家も相応に広かったが、半分過疎に足を突っ込んだ田舎なので地価は安い。
更に、付随して畑が一ヘクタールほどに、農機具などを保管する小屋も付随していた。
こう書くと実家が農家なのかと思われがちだが、実は違う。
自分の父は定年まで役所に勤めた公民員で、母は普通の専業主婦であった。
定年後は農業をやりながら田舎で暮らすと宣言し、退職金などでこの物件を購入したのだ。
物件自体は物凄く安かったらしい。
継ぐ者などおらず、唯一家に残ってたお婆さんも痴呆で老人ホームに入ったとかで、持て余した彼女の一人息子が格安で売ってくれたからだ。
過疎地なので、買い手など無かった物件だ。
当然と言えば当然であろう。
そして俺はと言うと、両親が某県庁所在地にあった家を売ってここに移ってしまったので、アパートを借りて一人で暮らしていた。
大学卒業後に会社勤めをしていたので、付いて行く気などゼロであったからだ。
ところが、この一年で自分の人生は大きな転機を迎える。
まずは、俺の勤めていた会社が倒産した事であろうか?
中規模とはいえ、県内では名前の知られた企業だったので青天の霹靂とも言えた。
普通、経営状態が悪いと噂くらいは流れて来そうだが、それも無かったので性質が悪い。
ある朝会社に出勤すると、閉鎖された鉄製の門扉に『我が社は倒産しました』との張り紙が。
もう笑うしか無いであろう。
幸いにして、未払い分の給料と退職金が確保できただけマシなのであろうが。
続いて両親が死んだ。
退職後、豪華に海外旅行にでもと行って出かけて、乗っていた飛行機が落ちたのだ。
まさかの出来事に、俺は涙すら出なかった。
幸いにして無職状態だったので、すぐに現地に飛んで両親の亡骸と対面。
とは言っても、飛行機事故の遺体なのだ。
その状態は、他の親戚には見せられないほどであった。
そのまま現地で火葬をしてから、遺骨と共に帰国する。
帰国後は、遺族への配慮など無視してフラッシュを焚き、マイクを強引に向けて来るマスコミ連中への対応に、葬儀の手配などもあった。
なるほど、ネットではマスゴミと言われるわけだ。
正直なところ、嫌悪感しか沸かなかった。
数は少ないが、まともな人もいたのだが。
慌しい時間が過ぎてようやく四十九日も終った頃、ようやく転職先の確保に翻弄する事となる。
ただここで一つ問題があった。
両親が死んだ直後に住んでいたアパートの契約更新があったので、ついでに引き払ってしまったのだ。
葬儀をこのアパートでは出来ないし、両親が購入したこの家の維持・管理などもある。
就職も、車を使えば一時間ほどで県庁所在地には出られるので通勤は可能であろう。
そう思って転職活動を再開するのであったが、その思惑はあっと言う間に崩れ去る事となる。