【№4】 □□は可愛い!だが時に危険な奴が居るけど
危険な洞窟。そこは一言で言うなればそんな場所だ。
太陽の光も届かない暗いの洞窟、唯一この暗い世界の明かりは赤黒く禍々しい色とオーラを放ち先に進む者を拒むように埋め尽くされた巨大な水晶。
足場が不安定なこの洞窟で踏み外したりすれば瞬く間に水晶に串刺しになり運がよければ重傷、運が悪ければ死に至らしめるだろう。
それだけではない、水晶もそうだがさらに危険なのがこの洞窟の中で住まうモンスター達だ。
敵に襲われると赤黒い水晶のように硬化し生半可な攻撃ではこの硬化状態に防がれてしまう赤黒いスライム系モンスター≪ダークブラットクリスタル・スライム≫。
三メートルから六メートルの赤黒い水晶の体で何人たりとも近付けさせない鋭利の鎧の様に覆ったゴ-レム系モンスター≪赤黒水晶・巨人≫。
暗い影から僅かな気配を感じさせず獲物に喰らいつき猛毒を注入し弱った所を捕食する大蛇、スネーク系モンスター≪暗殺大蛇≫。
その≪暗殺大蛇≫を仲間で誘き寄せその発達した爪と長く突き刺せる尻尾で岩上から襲い掛かるキャット系モンスター≪狩猫≫。
その他多数のモンスターが居るが、この洞窟で特に目立つモンスター達を紹介した。
しかしそんな危険なモンスター達の中にこの洞窟には極めて珍しいモンスターが居た。
死しモンスターになったものの生前の自我と記憶を持ち強くなる事を誓い、現在人肌恋しいものの我慢し修行中の極々摩訶不思議なアンデット系モンスターの幽霊、天霊院 回流くんが迷い込んだもよう。
(どうも皆さん死んで幽霊になった天霊院 回流です。
あのライオンと蜥蜴の戦いの余波から逃げ切り強くなると誓った日から彼此、俺の体感時間が正しければ半年ほどになります。
そんな俺が今現在何をしているかというと、俺にとってはお決まりの行事になってる気がする“あれ”をやっています、ん? あれじゃ分からないって? あははご冗談を―)
「逃げてるんだよーっ!!」
「ヤロウブッコロシテヤラァーッ!!」
ギャアアアアッ!と透過し岩や水晶をすり抜けて全速力で飛んでとにかく逃げ回る天霊院。
その回流を怒声を上げて追いかけ回し岩や水晶を金色の大槌で文字通り木っ端微塵に吹き飛ばしついでにモンスター達も完全に邪魔者扱いとばかりに金色の大槌で吹っ飛ばす、その凄まじい衝撃で岩や水晶もモンスター達も蹂躙し、岩や水晶は欠片と粒になり砕け散り、モンスター達の血肉と骨は縦横無尽に飛び散らかる。
その光景を見たものはまず間違いなくこう真っ先に思うだろう、破壊神と。
だが怒声を上げ破壊の蹂躙を行なっている者のその行為はまさしく破壊神なのだが、破壊神の正体を見れば、破壊神じゃなく幼き可憐な妖精と思うだろう、何故なら――幼き筈なのに美しく可愛らしい容姿の美幼女の姿をしたのが妖精であり破壊神なのだから。
「ダレガロリダッテゴラァアアアアアアアアアアアアッ!!」
「えぇ!? 俺ロリなんて一言も言ってないぞおい!!」
ズドンッ!と今までの以上の轟音と破壊音を上げ破壊していく美幼女。
「ダカラロリジャネェッテイッテンダロウガッ!!」
「だから言ってな―ギャアアアアッ!! 今の危なかったっ! 頭掠ったっ!」
天霊院は世間では第1級指定されている危険な洞窟型ダンジョン≪赤黒水晶洞窟≫である別の意味で危機に陥ってた。
事の始まりは回流が森で探索をしていた時の出来事だった。
【レベル・50≪幽霊≫】
天霊院は今日、最初となるにモンスターの魂を潰し取り込みレベルが上がった事に喜々としていた。
最初の頃はどうやってレベルを上げればいいのか悩んでいた彼、モンスターを倒せばレベルが上がる筈だがどうやってモンスターを倒すか、倒すにしてもこの森にいるのは全て格上のモンスターばかりでとてもかなわない、幽霊だから物理攻撃は効かないと思うが万一あの化け物技で幽霊だとしても攻撃を喰らうとしたら、散々悩みに悩んだがその悩みは今までのは悩みは何だったんだと思えるほど簡単に振り払われた。
何時も通り夜の森の中をさまよっているとモンスター達がドンパチ殺り合っている場面に遭遇し余波に巻き込まれないよう遠くの木の影からチラッと様子見。
やがて戦いが終わる頃には勝者のモンスターが敗者のモンスターの血肉を喰らう弱肉強食の絵図が見受けられ、天霊院はモンスターの食事の邪魔にならないよう気付かれないようにビクビクしながら魂を回収しに行く。
気付かれてないと分かっていてもまだ慣れないグロイ食事と恐怖から全速力でその場から逃げて離れる、安全地帯と思える場所に来てやっと魂を吸収しようと口に運び飲み込むと、今までに無かった焼き切れるような熱さと吐き気が襲い苦しくなりその場ですぐに魂を吐く、すると。
【エラー発生、≪幽霊≫のレベルが低い為これ以上≪魂吸収≫を行ないますと手持ちにある魂に高確率で主導権を握られますが、続けますか?
≪続ける≫ ≪続けない≫】
また何時ものアナウンスと文字が現れこれ以上の魂の吸収は危険だとあるので天霊院は非常に残念そうに断念するが、このまま置いてあっても勿体無いという思いとやはり諦めきれないと思ってしまい危険をと分かりつつも食べるかと危ない方向で考えていると。
突如、ゴリラ系モンスターが天霊院の少し先の離れた所の上からドンッ!と轟音を上げ地面を砕き現れた拍子に、吃驚して持っていた魂をつい手を滑らせて風船を両手で割るかのようにパンッと潰してしまう。
まさか風船のように割れるとは思わずやっちまったー!と激しく涙を流し後悔しながらその場を全力で逃げ去ると。
【≪幽霊≫のレベルが1→10に上がりました】
再びアナウンスと文字が現れると共に≪魂吸収≫で魂を吸収し得た時と似たような膨大なエネルギーを吸収するのを体感しながらレベルが上がったと報告される。
これを切欠にレベルを上げかたの方法が分かり始まったレベル上げ、モンスターが死んだら魂が出る、それを潰す、モンスターが死んだら魂が出る、それを潰す、の繰り返し。
これを行う事に魂の固体差があれど段々レベルの上昇率が下がったり、何故かモンスターが見当たらない時期があったり、今まで見てきたどのモンスターよりも格上でヤバイと告げるモンスターにであって魂の回収より逃げたりとそれでも半年でレベルが50まで上がった。
魂を幾度に潰していくと自分が強くなっていくのを感じる、それは間違いない、現に最初の頃より断然に移動速度が上がったり、稀にいる格下モンスターなら大声を出したり触れただけで状態異常を起こすなど、確実に天霊院は強くなっている、だが天霊院は気付いていた、何かが強くなっていない、何かが足りないと。
何か喉奥に小骨が引っ掛かるのを感じながらある如何にも危険な洞窟を見つける。
レベルが強くなったからそう下手に死ぬ事はないだろうし万一何かあったら透過で逃げさえすればいいし大丈夫だろう、と完全に調子に乗り死亡フラグ(死んでいるが)を立てながら興味津々で洞窟の中を探索した結果がこれだ。
始めは危険そうだけど大した事はないと洞窟を深く進み潜り込み道中死んだモンスターの魂を潰しレベルえの糧としかなり深くまで来たのに風景やモンスターが何も変哲もなく変わらない事につまんなく思いちょっと苛立つ。
仕方なく戻ろうかという時にモンスターの影とはまったく異なる違う人型の影を見つけて気になり追跡をすると――破壊神もとい美幼女が≪赤黒水晶・巨人≫を金色の大槌で瞬殺しているの目撃した。
天霊院は自分の目を疑った、それも仕方がない何せ見るからに自分よりも幼女よりも何倍もの巨体と力を持った筈の巨人を瞬殺、理解しても頭が現実離れした出来事に追いつかない、そしてぼそりとつい言ったこの言葉が幼女の怒りを有頂天にしてしまった天霊院の運の尽き。
「マジ…でか、この世界の幼女つよっ」
ビタッと天霊院が幼女と言った瞬間ピタリと寸分の狂いも無くまるで聞こえたかのように止まった幼女。
止まった数秒後、天霊院に寒気が奔った。
天霊院と幼女との距離は離れている筈なのに周りの空気が重く重圧に変わったのを霊体でありながら肌身と魂で感じた、その重圧の重さに耐え切れなくなったのか付近周辺の足場が、岩が、水晶が、一瞬で亀裂が奔る。
「……あ゛あ゛ぁっ!!」
幼女の可愛らしい容姿からとても口から発せられたようには思えない地獄から這い上がった怨霊のような怒りの声を上げ、元から赤かった目をさらに赤く染め血走った目で今までどんなモンスターにも直視しされず見えない≪幽霊≫である筈の天霊院を憤怒で染まった眼で確かにギラリと睨んだ。
瞬間、天霊院は悟った。
――あ、こいつヤバイわ。
と、反射的にも近い反応速度でその場から離れた。
天霊院の居た場所は何時の間にか移動した幼女が金色の大槌で跡形も無く吹き飛ばし破壊した。
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