【№2】 モンスター達がヤバイ!魂だけど
【融合率0%を確認、エラー発生。
≪幽霊≫のレベルが低い為これ以上の融合を続けますと高確率で≪大食い熊≫に主導権を握られますが、続けますか?
≪続ける≫ ≪続けない≫】
……≪続けない≫。
【了解、≪大食い熊≫の魂の融合を中断します。
以後、≪大食い熊≫の魂を融合する時は再度融合を行う時に確認を致します。
現在の魂の所持数1 ※―≪大食い熊≫―融合率0%】
「とりあえずもう一回一言、何これ?」
頭の中にアナウンスと文字が聞こえたり見えたりと幽霊になった次に不思議現像を体験、どこぞのフャンタジーだこれ。つーかもしかして“≪大食い熊≫”ってあの俺を喰おうとして自滅した熊か? こういう名前だったんだ、どうでもいいけど。
まあ、さっさと此処から離れるかな流石に冷静になって考え、いや考えなくともこれ以上自分の死体と熊の死体(スプラッタグロ状態)のそばに居たくない。それに此処俺以外何にも無いしあるのは岩、岩、岩、だけで今は夜だけに不気味なんだよな。俺って幽霊なのに。
空中に跳び上がり、途中に人だった頃慣れるまで見えなかった暗闇は今じゃ幽霊のせいか暗視ができ俺のスプラッタな死体が見える、俺の死体に向かって手を合わせ一礼。
今までありがとう俺の体、と自分の死体に向かって何やってんだと他人から見たら思うだろうが、あれだ結局自分の体だしそれとなんとなくで。
空中に飛びながら、かなり深く落ちたなーと思いながらようやく到着。改めて後ろに振り返り崖を見る、うん何で俺生きてこれたんだろ、いや死んでるやん! と一人でノリツッコミ……空しいなこれ。
ついでになんとなく、本当になんとなく決してカッコつける訳でもなく空を見上げた。
異世界に来てから警戒しまくり疲れまくりの探索中だったり逃走中だったりとまともに見なかったから気付かなかったが、今夜は月が出ていないが変わりに夜空に純粋に輝き続ける星の海が視界一杯に広がる。単刀直入に言うと綺麗だ、現代都会じゃまず見れないこの星空は今まで見てきたどの星空よりも、どんな人でもこの自然の風景は全員好きと言うに違いない。
一部の例外を除いて。
……俺もその一人だ、やっぱりあまり好きになれない。
そこに居るのが耐え切れなくなり逃げ出すようにその場から離れ森の中へ跳ぶ、どうしても、自分が最初に死んだ、あの月の無い夜に、俺を、狂るった笑顔で殺すあいつが、月の無い星の夜と共に面影に出てきてしまうから。
またしても森の中に入ってしまった、あと迷子です。
いやいや何してるの俺? 何で俺にはついさっきまで逃走劇(笑)を繰り広げた所に逃げたの俺? 絶対やばい超獣達がうようよ居るよな? 馬鹿なの? 死ぬの?。
幾ら肝が据わっている能天気な幽霊の俺でもちょっと怖いんだよ、幽霊でも襲われないかビビッてるんだよ幽霊でも!。
畜生、トラウマを思い出して逃げたのが間違いだったぜ、仕方ないよなあの時精神不安定だし、だがな俺もう少し別の所に――
「グルルルゥッ」
――と、現実逃避トリップしていた俺の耳に突然獣の唸り声が聞こえた。
バッとほぼ反射的に獣の声のする方を見る。暗い森から現れたのは白い体毛を鬣、耳、首、前足、後足、尻尾に生やした約体長五メートルクラス、強靭な体と鬣は百獣の王者ライオンを連想させる、だが一番特徴的なのはウサギの耳のような形と長さを持つ耳、一瞬ウサ耳が見えた時デカイウサギ? と思ったが耳だけはウサギで後はライオン? みたいな≪大食い熊≫級かそれ以上に俺を瞬殺できる超ヤバイモンスターが現れた。
「モグゥッ!!?」
恐怖で反射的に悲鳴を上げそうになる口を両手で無理矢理閉じるが変な声が漏れる、大丈夫だ問題ない俺は幽霊だから分からない、筈だ、多分。
「ギュウァアルァッ」
「えぇ!? まだ他にも居るの!?」
反対方向からライオンと対峙するのは綺麗な緋色の鱗に全身包まれ鱗の隙間から火の粉を噴き出す二足歩行の約体長四メートルクラスの蜥蜴。迫力のインパクトはライオンに負けず鍛え抜かれたような体、鱗には数少ないが傷が目立ち顔の五本傷は幾つもの戦場を生き抜いた戦士の風格を漂わせる。
さらに驚いたことに蜥蜴の右手に三メートル程の先が折れたでもまだ使えそうな大剣に左手には二メートル程の盾を持っていた。
どういうことだ? あの武器はたぶんだが誰かが作った人工物だ。これってつまり、俺の推測が正しければこの世界にも人間的な生き物が居てその誰から盗ったか、殺して奪ったか、それだけの作れる知能と技能を持った凄い蜥蜴。いずれかのどちらかだろう。
俺は前者が良い、というかそうでないと色々困る。今は幽霊だけどやっぱり寂しいし人の身は恋しいし会ってみたい、そしてこの幽霊体で試したい事がある、試したい事は人にあった時にやるから一先ず置いといて。
後者はもう俺は人間じゃなくて良かったと思う。俺の持ってる異世界知識じゃ大抵モンスターは人間を襲うのが寸法だしっていうか襲われたし、この世界の文明がどれほどか知らないがそんなに進歩してなければいずれ時が訪れモンスターにとか魔王がーとかなって現れて瞬く間に駆逐されるだろうなあ~。
ん? 待てよそうなると同じく勇者が現れて何々して何かする、アンデットモンスターの俺もその勇者に――
「GOGAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!」
「GIIEEEEEEEEAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!」
二匹のモンスターが俺を中心に今まで聞いた事無い爆音でショック死させるんじゃないかと思わせるほどの音量の咆哮を出した。いや、お前死んでるってツッコミ無しで。
「ギャァアアアアアアアアアアアアアアアアアアウッルセェエエエエエエエエエエエエエエエッ!!!」
文字通り魂の悲鳴を上げるが俺より断然に格上のモンスター二匹の大気を揺らし周りの木々の葉が大量に吹き飛ぶ程の咆哮に掻き消される。二匹の爆音に我慢できる筈もなくその場から何とか逃げる為動く、こんなやばい奴らの戦闘は絶対巻き込まれ人間だった頃は逃げても無駄ですぐスプラッタ死。
だが俺には秘策がある!。崖の岩場で偶然遊んで分かった霊体の透過を応用して安全そうな地面の中にすり抜けて逃る俺より強いモンスター対策。俺より弱い奴いるか分からないが霊体で良かったー! と思いながら地面の中へ。
その瞬間がまるで合図のように――二匹のモンスターが衝突した。
「俺って異世界に来てからまだ半日少しぐらいなのにかなり無茶苦茶な濃い一日を送っている気がする。あとその大半が逃げ回ってる」
あれから数時間が経ち二匹のモンスターの決着がついた。あの強過ぎる二匹のモンスターの戦闘の余波に巻き込まれないように逃げるのは苦労した、本当に苦労した、あの逃走劇以上に必死に逃げ回ったよな。
幽霊だから物理攻撃は効かないと思うけど異世界だから何かあるかもしれないし、やっぱりあんな怪物大戦闘を身近で見たら超恐いなおい、地面に逃げ込んだのは良いけど衝突した衝撃で地面が抉れた時マジでまた死ぬかと思った。
それに何? あのライオン口から白いビーム光線出して蜥蜴と周りをを凍らしたり、蜥蜴が体中から綺麗な緋色の炎を噴出したり、ライオンのウサ耳が伸縮自在に伸びて残像が見えるほど高速乱舞したり、蜥蜴も負けずと大検を目にも止まらない高速剣舞で防ぐ攻防戦、もう次元の違い過ぎて余波から逃げ切った自分を褒めまくったよ。
「ギッギギィ~ァアァアアッ……!!」
「………」
勝者はあの火を噴出す緋色の蜥蜴。
最後の蜥蜴の左腕がライオンの爪を氷で覆って大きくなった氷爪で引き裂かれながらも炎を纏った体で強引に懐に突っ込んで大検で止め刺したのはカッコよかった。
そして勝利の雄叫びを上げる蜥蜴、けど左腕が無くなって右下半身と尻尾も凍傷というか氷付けにさらに胸に通常の氷柱とは大違いのデカイ氷柱で貫かれ血の様なモノを大量に流すその姿はどう見ても瀕死の死傷だらけで死ぬ一歩手前。
「ギ…アァ……ッ」
あ、倒れた、やっぱりこの勝負引き分けかな。
にしても普通あれだけの死傷ならすぐ死ぬってのに此処のモンスターは凄まじい生命力と化け物みたいな力を持つモンスターばかりだな、何で俺この森の中探索している時モンスターに見つからず生きてこれたんだろ? 割と本気で俺の運が凄かったりしてな、結局最後は運尽きて死んじゃったんだけど。
話を戻してその凄まじい生命力を持つ二匹のモンスターも今じゃ完全に生き途絶えたせいかあの≪大食い熊≫と同じように淡く光る半透明の玉、魂がふわーと体から出てきた。
またあの時のように惹かれる感覚が今度は最初の時より強く惹かれるも何とか正気を保ちながら二匹のモンスターが戦った痕の氷の氷柱や木々とまだ燃え散らかってる炎をまだ分からないが危険かも知れないので慎重に避けて高く飛び二つの魂に近付く。
冷や汗(幽霊なので汗は出ないが気分的に)を感じながら無事に辿り着き二つの魂に触れると今回は遊ばずすぐに魂を、されど咽た過去があるので少し噛んでから飲み込む。もきゅもきゅと口の中で魂の力を感じ美味を味い、飲み込むと暖かい熱を巡らせる、二度目だけど何ども喰っても魂は美味い! という訳でもう一つの魂をすぐ口の中に放り込み味わって飲み込んだ! 我慢? もっと味わえ? 知るかんなもん欲求には勝てないだよ馬鹿ヤロー!!と俺の天使と悪魔が喧嘩している時に。
【≪魂吸収≫の吸収率100%、完全吸収を確認しました。
≪白氷獅子≫の魂を≪幽霊≫に融合を開始します。】
【≪魂吸収≫の吸収率100%、完全吸収を確認しました。
≪緋炎蜥蜴竜≫の魂を≪幽霊に≫に融合を開始します。】
【融合率0%を確認、エラー発生。
≪幽霊≫のレベルが低い為これ以上融合を続けますと高確率で≪白氷獅子≫&≪緋炎蜥蜴竜≫と及び現在所持している未融合の魂≪大食い熊≫の何れかに主導権を握られますが、続けますか?
≪続ける≫ ≪続けない≫】
またあのアナウンスと文字が聞こえたり見えたりと戦闘中の天使と悪魔をボウリングのピンのように爽快に吹っ飛ばして現れた、気がする。