表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/4

【№1】 死にましたが復活!幽霊だけど 

月も出ていない真夜中の陰気な森。

夜の闇に支配されるとより一層陰気さを上げる森の中はとても人間が進めるような所ではない、一切先の見えない暗闇、不安定な足場、辺り一面に立ち塞がる木々、満足に歩行出来るはずのないその森で。


「ぜっぜぇっく、くっそったれ!」


汗を流し息を乱しながら森の中を必死に駆け失踪する一人の年齢10代中間位の血に染まった赤いマフラーで口首を隠すように首にしっかりと深く巻き肩と胸辺りに乾いた血の付いたこの場には似つかない学生服を着た少年と。


「ガゥァア!」


木々を軽やかに避け少年を追走する一匹の獣、チーターのような外見だが長い黄色の鬣を靡かせる獣。

明らかに前者が獲物で後者が捕食者の絵図。強靭な獣がか弱き少年の血肉を喰らうのも時間の問題だろう、現に少年の走るスピードは徐々に遅くなるのにたいして獣は常にその速さを意地し少年との距離を縮める。


「ぜぇおわッ!?」


さらに少年には不幸なことに、獣には幸運な事に少年は木の根に躓き地面にゴロゴロと転び木にぶつかる。


「がはっ!」


木にぶつかった衝撃で苦痛の声を上げ体中に痛みが駆け巡る。痛みで体を硬直させるが目を開き涙目で見た先には獣が牙を剥き出し飛び掛ってくる光景。


「グァウ!!」

「わわわっと!」


慌てるもすぐさま少年はそこから跳ぶように離れ回避。

またゴロゴロと勢いよく転がり痛みを我慢しながらすぐに立ち上がり先ほど自分が居た場所を見るとまたしても獣が飛び掛って襲い掛かってくるのを目にし咄嗟に体を捻った。

飛び掛ってきた獣の爪が頬を掠りながらもギリギリで危ういながらも回避。


「ぐぅ痛ったたたっ!」


少年は獣の爪に引っ掻かれた傷と血を押さえながら痛みで後退り、すると背中に何かふかふかな毛皮のような感触に当たり少年は何だろうと疑問符が浮かび上がるが気にせずすぐさま目の前の獣がまた何か仕掛けてくるのを注意を促す。


「ってあれ?」


が、先程まで襲い掛かってきた獣は少年を目もくれず一目散に森の暗闇の中へまるで先ほどの少年のように疾走し離れる。助かったのか? と少年の頭の中にそんな言葉が横切るが背中の辺りには先程の毛皮とは違う感触、生暖かい鼻息を感じる。

嫌な予感をしつつも恐る恐るといったぎこちなく後ろに振り向き最初に目にしたのが、キュルキュルしたつぶらな瞳をした熊顔、全体を見回せば身長五メートル位あるのではないかと思われるの可愛らしい熊。


最初、少年が思った感想が、あ、赤茶色い可愛い熊、だったが熊が口を開けた瞬間、赤茶色い毛皮をした可愛らしい怪物に変更。何故なら頬まで口が裂き開き、顎の骨が無いのかと疑ってしまう程牙が並ぶ口を少年の体が丸呑みできるほど縦に大きく開ける。


「ぎゃぁああああああああああああああっ口裂き女!!じゃなくて口裂き怪物熊ぁああああああっ!!」


涙をギャグかと思うほど流し絶叫を上げ赤い帽子を被ったヒゲのおっさんビックリのBダッシュでその場からすぐさま逃走。

だが、熊は予想していたのか口を開けながらそのまま獲物を喰らう為か閉じようとしない、否、閉じても無駄なのだ(・・・・・・・・・)、次の行動で理解する。四肢に力を加え前屈みになったと同時にドンッ! と地面が爆ぜ一瞬でその巨体から想像出来ない驚くべき大砲のような跳躍力で少年に目掛けて喰らいつこうとする。


後ろに振り向いていた少年の顔はハッキリと絶望に染まった表情を浮かべた、終わった、こいつに喰われるのだと。


  

――しかし、熊が少年を喰らう事にはならなかった、正確には喰らえなかっ(・・・・・・・・・)()


 

「はぁ? てっぁああああああああああああああああああああ嗚呼ァアアアアアアアアアアアっ!!!」


少年は命の灯火の延長の代償に底の見えない()から落ちた、少年は後ろに振り向いていて気付かなかった為、足場が崩れ突然の浮遊感に唖然、気付いた時には絶叫を上げ少し離れてる口裂き熊と共に先の見えない暗闇に落下して行く。


これはもう幾らなんでも助からないと少年は真っ先に思った、だができるなら、生きたい、折角の二度目の人生がこんなにも早くまた死ねなんて嫌だ、まだ生きていたいと少年は回避出来ない死を前に、無駄だと分かりつつも、それでも希望にすがりついた、しかし運命は非情で少年は崖の底にぶつかった。


今までの生きた人生で感じた事の無い肉と骨が折れ、砕き、衝撃と激痛に発狂し暴れまわり叫び声を上げたがったが死んだ体は言う事を聞く筈もなく声も出せない、長いようで短いような激痛、激痛が徐々に過ぎるのと同時に体が冷たくなり目の前が暗くなり意識が無くなる。



――少年、天霊院(てんれいいん) 回流(かいりゅう)はこうして異世界で二度目の命を絶つ、そして。




「ソロモンよ!私は帰ってきたぁ!!……なんちゃって」


不死者系(アンデット)モンスターでお馴染みの≪幽霊(ゴースト)≫として三度目の復活? したのが俺です。

いやー二度目の死の説明するの長かったー、大体こんなもんだろ。ん? 状況が読めない? ふっ何時からこれが説明じゃないと錯覚していた……すみません調子乗りました。

いや言い訳かも知れないが聞いてくれよ、俺はこうみえて元居た現代で一回死んでさらにこの異世界でもまた死んじまったんだぞ、生き返る? 奇跡の連続でそりゃーもう調子にも乗りたくなるだろ。


まあとりあえず順を追って説明しないと全く訳分からずチンプンカンプンだろうから説明をしよう。


俺はさっきも説明したとおり現代っ子だった。だけどある出来事で俺は死んでしまった、また何時かこの出来事の一回目の死について語るから今は置いとこう。

異世界来たのはその死の後だった、と思う。思う、と答えたのは俺が気付いた時にはもうこの世界に何時の間にか居た、しかも見知らぬ不気味な森の中で。


もしこれが神の悪戯だったら絶対殴りに行きたいね。水も飲まず飯も食わず不気味な森をひたすら夕暮れになるまで歩いて夜になると流石に何があるか分からないし危険だと判断して安全に休めそうな木の上を苦労しながら登って辿り着いたと思ったら急にあのチーターみたいな奴が現れて俺を喰おうと襲ってきた。


思えばあそこから此処が異世界だと感じさせる決め手だったんだよなー。


いや薄々水や食い物を探している時に此処って異世界じゃないかなーて思っていたよ、見知らぬ草木や聞きなれない動物や虫達の声や叫び。今一実感が無かっただけに襲ってきたチーターには衝撃を受けたし襲われる途中に黄色の鬣から電気をバリバリしてたし、見かけに騙されちゃならんあの口裂き熊なんかホラーだよデカイよなにあの口? 完全にやばいわ。


ちなみにその熊は俺の死体の少し先で死にかけている、あの崖から落ちて数時間たったというのによくまだ生きてられんなと凄い生命力と感心したり呆れたり、だがあの調子じゃもう少しで息途絶えるだろう。

弱肉強食の自然界だけど、とりあえずあの口裂き熊には悪いが一言、ざまぁ。


あとはさっきの通りだ、獣っというかモンスターに追いかけに追いかけられついに死んだ。だが何故か俺は生きている、霊体だけど、幽霊になっているのに気がついた時はかなりびっくりした、肌が病的なほど真っ白で半透明のおかげで冷静になるのに随分と時間がかかった。一時間位だけど、多分。


現実は小説や漫画やアニメみたくいかないわな~と改めて実感した、以上が俺の説明という名のお話だ。


さてと話を切り替えるが俺はこれからどうしようかと考えるがぶっちゃけ目的とかサラサラ無い、元の世界に未練や帰りたいかと訊かれたら全く未練が無いと答えるし帰る理由が無い、というか帰りたくない。

目的って程ではないにしろこの世界を見回りたいかな、霊体で冒険するのも意外と楽しそうだしあんまり危険もなさそうだしだって幽霊なので物理攻撃無効だし、俺は今のところ元の体に戻りたいとも思わない、だって意外と霊体って楽しいぞ、いや~初めて空を浮かんだわ~飛んだわ~岩の中を通ったわ~まじ生前できなかった事が楽しいすぎる貴重体験。




あっ、そういえば熊どうなったんだろか。幾らに強靭な生命力でももう命尽きる頃の筈だ、たぶん。


「……………」


返事がない、ただの屍のようだ。

まあ生きていたら、どんなラスボス熊だよ!? ってツッコミをしてたな、なんて考えてたら熊の中からふわーと何かが出てきた。

すぐにその場から全力で空中に俺は逃げた、言っておくがビビったんじゃねー戦力的撤退だ。


警戒しながら出てきた何かを見ると距離はあるがそれは淡く光る玉だった、それを見た瞬間、俺は何故かその光る玉が無性に惹かれた、ついつい惹かれすぎて警戒せずに光る玉に近付いてしまったが何ともないので良しとする。

改めて近くで見ると、その大きさが三十から四十センチ位の半透明にも光る玉。


「……欲しい」


無意識にもそんな言葉が漏れた、だがそうだ俺はこの光る玉が欲しい、俺の何処かで囁いてるこれを俺のモノにすれば何か俺に良い事が起きると。

触れてみると重さはないでも別の表現し難いがある意味で重たい、感触は柔らかい弾力でよく分からないがまるでなんとなく生命の鼓動のようなものを感じる、放してみると遅くながらも動くがすぐ止まる、軽く好奇心でポンポンと両手で掴んだり放したりサッカーのように足でリフティングして遊ぶがすぐやめた、とにかくこれを俺のモノにしたい欲求が強まるばかりでこのままじゃ俺の何かが喰われかねない。


つぅー訳で俺はこの光る玉を俺の何処かで囁く、囁きに従い勢いよく――口の中に放り込んだ。


すると口の中に入れ切れない筈のサイズの光る玉がまるで流れ込んでくるかのように入った、凄い、流れ込んで来る事に感じられる口裂き熊の――()の力を感じ、霊体のこの体は熱も寒さも感じさせない筈なのに体中に暖かい熱を巡らせ、さらに味は感じないが今まで食べた中で一番美味しく感じる。

だが、勢いよく口の中に放り込んでしまったのはいけなかった結構咽てしまった、げほっごほっ。


その時、急に頭の中に。



【≪魂吸収(ソウルドレイン)≫の吸収率100%、完全吸収(コンプリート)を確認しました。

大食い熊(ビッグイーターベアー)≫の魂を≪幽霊(ゴースト)≫に融合を開始します。】



え? 何これ?。

 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ