要注意人物(四百文字お題小説)
沢木先生のお題に基づくお話です。
「要注意人物」をお借りしました。
ある会社で緊急の重役会議が開かれていた。
ある要注意人物の処遇を話し合うためだ。
「何故解雇しないのだ? 給料の無駄だぞ」
第一営業部長が言った。
「クビにすると問題が起こります。だから切れないのです」
営業課長の平井卓三が言った。彼は参考人として出席していた。
「どういう事かね?」
社長の近藤が平井を見た。
「彼女の恋人は我が課のエースの藤崎です。彼女を解雇すれば藤崎も辞めるでしょう」
「私の孫娘と結婚すれば将来は安泰だと言って別れさせる事はできないのか?」
専務が言った。専務は平井の義父だ。
近藤がムッとした顔で専務を見た。仲が悪いのだ。
平井が解雇に消極的なのは要注意人物が平井の不倫を知っているからだ。
クビにされたら腹いせに暴露する可能性があると思っているのだ。
「あの二人を別れさせる事は無理です」
平井は専務が機嫌が悪そうになったのでビクッとした。
(律子君、君のせいで私は崖っぷちだ)
血の涙が出そうな平井である。
ということでした。