表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/8

第4話 消えない絆 消えた糸




大魔王神に言われた事

レイヴィルの事

王子って何………忘れてる…?

分からないよ 分からない

何で 何で 何で 何で


「フェイル……フェイル!!」


「……っあ…!」


「大丈夫か………」


ネクサスがネアスを担ぎながら

フェイルの頭に手を乗せてやる


「…レイヴィル…が…レイヴィルが」


「…………」


フェイルが泣き出す

ネクサスはただ黙り込むしか無く

時間だけが過ぎ去る………


「…泣いても…仕方ないよね

僕の家行こう?

ネアスの治癒も…しなきゃだしね!」


フェイルは涙を拭いて

無理矢理笑顔を浮かべる

必死に言葉を探して並べる

自分の状況より最優先すべきだと

思ったものがあったから


弟は生きていた…

記憶はどうだか分からないが

レイヴィルは生きている………

それだけで安心出来た…


フェイルは自分の家に向かい

ネクサスはネアスをベッドに横たわらせる

フェイルは集中を始めて

懸命に治癒魔法を掛けていく

見る内にネアスの傷は無くなり

あとは意識回復を待つのみとなる


「オレは最低だ…………」


ネアスの手を握り締めながら

ネクサスは呟く

フェイルはネクサスの肩にしがみつく


「ネクサスは最低じゃない

最低なんかじゃ無いよ

僕が保証するもん…!」


「……っ…フェイル!」


いつもの凛としたネクサスと違い

今は弱々しくて

とても守りたいほどに

その手が…その瞳が小さく見える…


「に………いさ……」


ネアスがネクサスの手を握り返す

弱々しいけど強く 強く握り返す

ネクサスが笑みを浮かべる


「ネアス……ゆっくり…今は…」


「兄さんは…ずっと…ずっと

オレの憧れの兄さんだよ……

だから……だから…

自分を最低だなんて言わないで…」


ゆっくりとゆっくりと

ネアスが言葉を紡いでいく

ネクサスがハッとする


「………ネアス…悪かった本当に…」


ネクサスの言葉を聞いたのか否か

再びネアスは規則正しい呼吸をしながら

眠りへと落ち始める


その間フェイルは考えて居た

安心出来る発言があったとはいえ

弟は……レイヴィルは

自分を忘れきっているかもしれないから


忘れて……しまっている

考えるだけで何かが痛む

痛い 痛い 痛い 痛い 痛い……………

レイヴィルには王の…神の器があった?

聞いたことが無い単語

王の 神の器って何?

どうして どうして レイヴィルなの?

自分とレイヴィルは同じのはずだ


一緒に生まれて 一緒に生きて

一緒に育った…………

でも……両親は知らない

もしかして自分とレイヴィルは

兄弟ですら無い?

血すら繋がってない??


よく考えてみる

自分は龍族って言っているが

龍になんかなれやしない

そんな気配も無い

でもレイヴィルは違う 違った

龍にだってなれた

それに龍の力だって持っている


もしかして兄弟じゃない?

龍族の誰かが兄弟として育てた…?

そうとしか浮かばない

自分とレイヴィルには

見た目にだって差が有りすぎる


自分は背も低くて貧弱で…

髪は茶髪だし瞳は銀だ…

レイヴィルは自分なんかより

いや一族の皆を抜いて背が高い

いや一族は皆背が高いんだけどね

そして気になるのは髪の色や瞳の色だ…

レイヴィルは赤髪で金目


違い過ぎやしないか?

ずっと疑問に感じていた

自分はレイヴィルが大好きだし

レイヴィルもそう言ってくれてる

その気持ちに嘘なんか無い

絶対に嘘なんか無い


でも―――――――…


考えはパッと途切れる

肩に手を置かれたから

暖かな手 懸命な表情……

一気に引き戻される


「フェイル……!大丈夫か!フェイル」


「………ネクサス…」


「声…掛けても返事ねぇから…

少しだけ焦った………」


「……あ……ごめん…ね」


「レイヴィルの事か?」


ネクサスは言葉を続ける

フェイルは再び俯く………


「……父さんの言葉……

オレは嘘だと思うから……

お前と彼奴の糸は切れちゃいねぇよ」


「…………っ…でも」


「……諦めんな…」


ネクサスはフェイルの頭に手を乗せる

大きくて暖かい手……

安心仕切れるような…

そんな そんな優しい手

ポロポロとフェイルは泣き出す


「ちょ………泣くなって…」


どう 慰めたらいいか分からなくて

とにかく抱き締める 目一杯抱き締める

離したくはない 離さない

離したら 消えそうで 無くなりそうで

怖かったのもある…

だから だから 誓いながら

フェイルの肩に触れる


「ネクサス………ネアス大丈夫かな」


「よく眠ってるし大丈夫だろ」


短い会話………

後は目と目で会話

誰も言葉は発さない………


沈黙だけが 付きまとう………


「………フェイル様…ネクサス様

そしてネアス様……運命の子……

今………揃いつつありますわね」


「あぁ……我等も…そしてお前も」


「ずぅっと待ち望んだよねぇ!」


「…でも…今1つ………

星が……消えようとしてる…

気を付けろ皆…………」


「当たり前ですよ……

今…彼等を見守れるのは僕達しか居ない

……きっと守りますよ…」


「では今日は…」


『解散だな』


声が消え 気配も消え去る…

コトリ………カップを置く音だけが

その場に響き渡る…………


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ