都での生活 実践編 後編
Sideポチ
特訓の成果は、あったといえばあったし、なかったといえばなかった。
少なくとも、ポチは風にのるということがへたくそであるということがわかった。ポチのあまりのみそっかすぶりに、青い竜は同情を禁じえないでいた。
「お前の親竜は、どのような竜なのであろうな」
親の教育が悪いのか、はたまた親もポチに劣らず不器用な性質なのか。ポチがコニーと一緒にいるようになったいきさつを聞くと、後者のような気がする青い竜であった。
「そろそろ帰るか、コニーが心配するゆえ」
「・・・腹が空いたのである」
がんばりすぎてエネルギー不足を起こしたために一歩も動けないポチを、仕方がないので青い竜がくわえて飛んでいくのであった。
Sideコニー
ポチが帰ってきた。
最初はポチがどこにいるのか分からなかったが、青い竜がくわえている灰色毛玉がポチだと気付いたのは、毛玉が腹の虫を鳴らしたからである。
「またばっちくなったね、ポチ」
灰色毛玉となったポチを、つんつんとつつくコニー。
「何度も崖から落ちたゆえな」
話す元気もないポチの代わりに、青い竜が説明する。ピクニックで崖から落ちるなんて、途中で遭難でもしたのだろうか。それはさぞサバイバルなピクニックであっただろう。
「ポチ、ご飯の前にお風呂に入ろうね」
ポチは答える代わりに尻尾をふりふりしていた。
「ところでコニー、後ろの白い竜はどなたかな」
青い竜は、コニーの後ろにずっといたポチの父親のことを尋ねた。ポチの父親は、何かにひどくショックを受けている様子であった。
「お待たせ。これがポチだよ」
「・・・丸い。姿のよさで定評のある我が一族の子が」
デカイ図体でよよよ、と泣き崩れるポチの父親。背後で泣かれると非常に鬱陶しかった。
「えー、これくらいがぽちゃっとしてて可愛いのに」
コニーの好みの体型を維持しているポチのことを、ポチの父親はお気に召さなかったらしい。
「文句を言うな、そもそも落として気付かなかったお主が悪いのだ」
青い竜も鬱陶しかったらしい。白い竜をしかりつけてくれた。
「今日は竜の子も疲れているゆえ、こやつは我が連れて行こう」
「ほんと?助かっちゃった」
「我が子よ~」
めそめそしているポチの父を、青い竜が蹴飛ばしながら飛んでいった。
その様子をコニーはしばらく眺めていたが。
「帰ろうかポチ」
「腹が減ったのである・・・」
灰色毛玉なポチを風呂に入れるべく、コニーはよいしょと抱えておじさんの家に帰っていくのであった。
Sideポチ
特訓明け、ポチは父親とようやく対面した。
「息子よ~!!」
食べられそうな勢いで突進してくる父親を、とりあえずポチは避けた。
どしーん!
結構な地響きを起こして、父親は正面の森に突進してこけた。
「どうして避ける!?」
「つぶされるのは嫌であるゆえ」
木の葉を体中につけた父親に、冷めた返事をするポチ。
ちなみにコニーは立会竜である青い竜と一緒に離れた場所で見物していた。
「父との再会がうれしくないのか我が子よ!?」
体中木の葉まみれの姿の白い竜が、涙で目をウルウルさせてもドン引きするばかりである。
だが、ポチはここで大切な決意を思い出した。
「ああそうだ、父よちょっと伏せるといい」
ポチがお願いすると、父親はしゅたっと伏せた。その姿はまさしく犬であった。
ちょうど目の前にきた父親の顔の、鼻っ面目掛けて、ポチは思いっきり火を吹いた。
「あちぃっ!こげる!!」
父親はきゃんきゃん騒いで、ちょっとだけ燃えた鼻先の毛に息をふーふー吹きかける。
「何をする我が子よ、一族でも見目良いと評判の私の顔に!」
父親はちょっとナルシストが入っているらしい。
しかしそんな父親を、ポチはジト目で睨む。
「よくも我を落としたばかりか、誰も助けにこなかったな」
落とした方は忘れても、落とされた方はあのときの恨みは忘れなかった。
「おお、成功したな」
上手に火を吹けたポチを、青い竜が褒めていた。
その後、すごすごと帰っていくポチの父親を眺めながら、結局何をしにきたのであろうかと首を傾げるコニーなのであった。
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