都での生活 実践編 中編
Sideポチ
ポチは青い竜と一緒に近くの山まで来ていた。近くといってもそれは竜の感覚で、人間では往復一ヶ月の旅になるであろう。
なにゆえこの山まで来たのかというと、ポチの飛行訓練につきあっていた青い竜が、
「ここではなく、もっと風の強い場所でした方がよいやもしれん」
とアドバイスをしてくれたからだ。
そんなわけでポチは青い竜の背に乗って、特訓場まで移動した。引越し途中に親の背中から落ちたのは未だ新しい記憶である。なので今度は落ちないように、ポチはしっかりと青い竜の背中に爪を立ててしがみついていた。
特訓場で、ポチは青い竜から高く飛ぶコツを教えてもらった。
「よいか、高い場所を飛ぶには強い風がいる。お前は他の竜の子に比べて少々丸いゆえ、より強い風がいるのだ」
どうやら高ければ高いほど、強い風で飛ばねばならないらしい。この特訓場は最初から強い風が吹いているので、ポチでも飛べるだろうということであった。
「万が一落ちたとしても、竜は頑丈にできている。どうということはあるまい」
自分ではないと思って、勝手なことを言う青い竜であった。
「よし!ではやるぞ!」
少々高い崖の上から、ポチは思い切って飛び出した。
「おお!いいカンジである!」
ポチは上手い具合に風にのれたようである。しかし。
くるくるくるくる
ポチは強い風にのれたのはいいが、その風の渦の中で回りはじめてしまった。
「お前、風に遊ばれているぞ」
特訓の道のりは、けっこう遠いようである。
Sideコニー
コニーが学校についたとき、学校は大騒ぎになっていた。
なにやら白くて大きいものが学校を目指して歩いてくれば、騒ぎにもなるだろう。
しかし、白くて大きいものをつれてきた当の本人は、その騒ぎの原因が全くわかっていなかった。
「コニー!その、いや、そちらの竜はなんなのだ!?」
見知った先生が、すごく遠くから問いかけてくる。なんで近くまで来ないのだろうかと不思議に思いつつも、コニーは先生まで届くように大きな声で答えた。
「せんせー、こっちの白いふさふささんは、ポチのとーちゃんです!」
そう、通学途中で遭遇した白い大きなふさふさの生き物は、ポチの父親だったのだ。ポチに会いにきたらしいのだが、あいにくとポチは友達の青い竜とピクニックにでかけている。そう伝えると、ポチの父親はすれ違ってしまったことがショックでしょんぼりしてしまった。その姿はあんまり可哀相で、コニーはうっかりおやつを落として食べれなくしてしまったポチの姿とダブった。コニーと一緒にいればそのうち会えると伝えると、一緒に待つとポチの父親が言ったので、学校で一緒に待っていることにしたのだ。
ちなみに今コニーがどこにいるのかといえば、ポチの父親の背中の上である。コニーは背中の白い毛に埋もれそうになっていた。
ポチの父親は学校という場所に興味津々である。
「うちの坊やはいつもここにきているのかい?」
「そうだよ、俺と毎日学校にくるの」
父親は子供の生活ぶりが気になるらしい。コニーはせっかくなので今日一日ポチの父親と一緒に行動して、ポチの一日を体験してもらおうと考えていた。
「邪魔はしないから、一日よろしくたのむよ」
「今日は一緒にお勉強するんだー」
「・・・はぁ」
ポチの父親の言葉を通訳したコニーに、先生はひきつった笑みを浮かべた。