都での生活 基礎編
Sideポチ
都とは、かくも美味なる誘惑の多い地なのか。ポチは通りを行き交う通行人に踏まれないために、コニーに抱え上げられていた。その腕のなかで、フンフンと鼻をならす。
「コニー、あちらからよいにおいがするぞ!」
キュー!と鳴いてある方向を示すポチにコニーも、
「そっちに美味しいのがありそう?」
とそちらに歩き出す。言葉が通じなくとも、なんとも息のあう一人と一匹である。
「おお、これはメロンというのか!?南国の果物とな!」
「おいしいねぇポチ」
美味しそうに食べる子供となにやら丸い生き物に、店のおばさんも愛想が良かった。
「こんなことばかりしているから太るのだ」
というコニーのおじさんの呟きも、ポチの耳はシャットアウトしていた。
都での生活で、ポチの趣味は食べ歩きであった。
Sideコニー
都はめずらしいものばかりである。
都は夜も明るい。魔術師が魔法のあかりを灯してるのだそうだ。月のあかりじゃ足りないとは、都の人は目が悪いに違いないとコニーは思った。都に住む人々の格好も、なんだか毎日お祭りみたいに派手派手しい。きっと毎日なにか楽しいことがあるんだろう。そんなあまりに住んでいた村と違う光景に、コニーがちょっぴりホームシックにかかってしまったことはポチとの秘密である。
でもそんなことにも一ヶ月もすれば慣れてきた。休みの時間にポチと美味しいものめぐりをするのが、コニーの目下の楽しみである。
しかし、どうしても慣れることのできないこともある。一つは、どうして都の人は歩くのが速いのかということだ。ただ普通に歩いているだけなのに、「ちんたらすんな!」と怒られたり、「邪魔よ!」と突き飛ばされたりする。都の人はそんなに急いでどこへ行っているのだろうか?一秒でも遅れると、すごく怒られるのだろうか?だとしたら都の人は短気な人が多いのであろう。
もう一つは、都の人はどうして早口で喋るのであろうか。コニーにとって、都の人の会話は、難解な早口言葉であった。そんな状態であるから、コニーと都の人との会話が成り立つはずもなく、端から自ら努力して会話をする気もないのであった。
こうやって、コニーは周りの空気が読めない人間になっていくのであった。
Sideポチ
都のえらい魔術師が、大人の竜と会わせてくれることになった。別に頼んだわけではないのだが、ぜひ会ってくれと頭を下げて頼まれれば、会ってやらないこともないポチであった。
大きな広場で待っていると、空の向こうからばっさばっさと飛んでくる青い影がある。
「ふわー、おっきいね」
一緒についてきたコニーが、マヌケ面で口を開けて見上げている。太陽の光を反射してピカピカ青い鱗を光らせている竜が、どしんと地面に着地したときにコニーとポチの振動で体が揺れた。
地面に着地してもなお大きい。そばに建っている塔よりも大きい。正直見上げていると首が痛い。だが見にくいのはあちらも同じだったようで、竜は腹ばいに伏せて、顔をぐっとコニーとポチに近づけた。
「丸いな、おまえ」
青い竜の一言目が、これだった。
「鱗の竜と違って毛深いせいで、丸く見えるだけである」
ポチは言い張った。自分は太っているのではない、毛深いだけだ。そんなことよりも、ポチには大人の竜に尋ねたいことがあった。魔術師と会ってから、ずっと気になって仕方がない疑問が。
「魔術師の血は胃腸に良いというのは本当であるか?」
背後で、魔術師がずっこけている。
ポチの疑問に青い竜が答えた。
「滋養強壮に効くらしいぞ」
魔術師の効能で、確かめなければならない項目が一つ増えたのであった。
Sideコニー
大人の青い竜は大きかった。ポチとは違った鱗の竜で、ピカピカだった。あんまり犬っぽくない。でも登ったら楽しそうだった。でも鱗でつるつるして登りにくいかもしれない。
ポチは相手とおしゃべりできるみたいだ。「ガオー」「キュー」「グルグル」「キュエー」とよく分からない会話をしていた。なんて言ってたのか一緒にいた魔術師の人に聞いてみたけど、教えてくれなかった。ケチだ。
「あれが本来の竜の姿です、どうですか?」
そう魔術師の人が聞いてきた。ピカピカつるつるで、楽しそうだったけど、ポチの方が可愛い。そう正直に言うと、魔術師の人はがっくりきていた。疲れているのかと思い、ポチのお尻を撫でて癒してもらおうとコニーは考えた。
「ぷにぷにで気持ちいいよ?」
さあ癒されろとばかりに、コニーはポチを持ち上げてお尻を見せた。
魔術師はポチの尻を顔に突きつけられて、ただじっと見つめているしかなかった。
ユニーク200越えていました!みなさまありがとうございます!