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だるまさんが転んだ――誰が残れるのか  作者: マーたん


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4/7

次の話



前書き


――この扉を開けてはならぬ


ここから先は、

知らなくてもよかったことです。


読まなければ、

気づかずに済んだかもしれません。


けれど、

この扉の前に立ってしまった以上、

あなたはもう

「外側」には戻れません。


止まってください。

振り向かないでください。


――この扉を、

開けてはならぬ。


それでも開いたなら、

聞こえてしまうでしょう。


「だるまさんが転んだ」



次の話


走れない場所


 新幹線は、止まらない。


 本来なら。


 車内は静かだった。

 静かすぎて、空調の風が動いているのかどうかも分からない。


 誰も喋らない。

 スマートフォンを操作する指も、画面をスクロールする癖も、すでに消えていた。


 俺は座席に深く腰を下ろし、前を見ていた。

 前を見るしかなかった。


 車内放送が流れたのは、トンネルに入る直前だった。


「……次は、」


 そこで、声が途切れた。


 代わりに、別の言葉が、はっきりと響いた。


「だるまさんが転んだ」


 誰かが言ったわけじゃない。

 スピーカーでもない。

 車内全体が、そう思い出したみたいに、同時だった。


 新幹線は、止まらない。


 止まれない。


 それを理解した瞬間、

 車内に、目に見えない緊張が走った。


 止まれなかったら、どうなる。


 誰も答えを知らない。

 でも、知ってしまった気がした。


 前の座席の男が、ほんの少しだけ、肩を動かした。


 それだけだった。


 次の瞬間、

 車両の前方が消えた。


 爆発音はなかった。

 揺れも、衝撃もない。


 ただ、線路の上を走っていたはずの“先”が、存在しなくなった。


 空が、あった。


 進行方向に、何もない。


 新幹線は、走り続けている。

 走り続けながら、前を失っている。


 悲鳴は上がらなかった。

 上げられなかった。


 恐怖より先に、理解が追いついてしまったからだ。


 ――止まれない場所は、許されない。


 後方車両では、何も起きていない。

 誰も動いていないからだ。


 だが、走っているという事実そのものが、

 もう「動き」だった。


 俺は、目を閉じた。


 前を見るのを、やめた。

 後ろを想像するのも、やめた。


 考えるのを、やめた。


 頭の奥で、あの声がする。


 だるまさんが転んだ。


 それは確認だ。

 選別だ。


 新幹線が、いつまで走っていたのかは、分からない。


 気づいたとき、

 窓の外は真っ白だった。


 止まっているのか、

 消えているのか。


 俺には、もう区別がつかなかった。


 ただ一つだけ、確かなことがある。


 ここは、

 最初から

 逃げ場じゃなかった。



後書き


――扉の向こう側


ここまで来てしまいましたね。


扉は、

開けた瞬間に消えます。

閉めることは、できません。


だからこの先、

あなたが感じる違和感や静けさは、

すべて正常です。


助けを呼ばなかったのも、

確かめなかったのも、

正しい判断でした。


――本当は、

最初から

誰も助けに来ない場所だったのですから。


「だるまさんが転んだ」


もし今、

背後に何も感じないなら、

それは幸運です。


まだ、

選ばれていないだけ…。

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