木枯らし
「吹、きのう最新話見た?」
「、、、」
「ん?吹?何その顔、聞いてんの?見た?」
「、、、えっと、誰ですか」
僕は隣の席から吹のそのセリフを聞いて、鳥肌が立つ
そして即座に2人の会話に割って入った
「吹、昨日は映画に付き合ってくれてありがとね。すごく楽しい1日になったよ」
僕はそう言って吹たちの会話を無理やりに断ち切った
「うん、全然いいよ」
吹は悲しげな表情を僕の方へと向けて返してくれる
「ちょっと、急にのろけ話やめてよぉ〜」
先程まで吹と会話をしていた梨奈は僕と吹の会話を見て言ってくる
そこでホームルームが始まるチャイムが鳴り、救われる
梨奈は同じ教室の自分の席へと戻っていく
そして吹はその彼女が席に着くまでの様子を見届けて、悲しみの表情を机へと向ける
『大丈夫?』
僕は授業中、ノートの切れ端にそう書いて隣の席の吹の机に置く
吹はそれを手にして、自身もノートの切れ端に何かを書き始めた
吹はそれを僕の机へと置く
僕はそれを手にする
『うん、大丈夫。悠希くん、さっきはありがとう。助かったよ
まさか同じクラスの人にもなんて、、怖くなってきた。
こんなの申し訳ないよ。
どうしよう、これから。』
僕の幼馴染の宮本吹は特定記憶欠損症なのである
特定の物、人との記憶がなくなってしまう病気
それはまるで木に実ったものたちが吹きさわれて何もなくなってしまう木枯らしのようなもの
僕はその日休み時間のたびに吹の相手をして、他の人が話しかける暇を与えないようにし、昼休みを迎えた
吹と2人で誰もいない階段へと移動して、お昼を食べながら情報共有をした
どうやら吹は梨奈との記憶だけを忘れているだけで、他の人は全員覚えているようだった
「ちなみに、なんで忘れたかわかる?」
僕は以前の経験から何かトリガーがあって忘れたはずと推測して聞いてみる
「ごめん、それすらも覚えてない」
「それもそうかぁ。」
僕は俯き、考え込む
そして僕自身が抱く不安から悩んでもいた
そこに吹は申し訳ないようにもう一度「ごめん」と呟く
「全然、それは大丈夫だから。もうこうなってしまったらしょうがないから、これから梨奈とどう関わっていくか考えよ」
「うん、ありがと」
結局、昼休みの時間だけでは解決策は思いつかずで、学校が終わってから考えようとなった
♡
「吹、ここで待っててね。すぐに終わらせるから」
「うん、わかった」
私はそう言って、職員室の前で悠希くんを待つ
私は一人になって不安を感じる
「ねぇ吹」
私は誰かに話しかけられ振り向く
そこには私が今日の朝、忘れてしまった梨奈という人物がいた
「えっと、今はごめんなさい。人を待っているので」
私はそう言って誤魔化すことにした
しかし、それは何の効力もない言葉だった
「ねぇ、私何かした?」
梨奈さんは少し語気が強いように感じる声を出す
私の言葉は波風を立てるようなものだったのかもと後悔する
そして梨奈さんは呟く
「私たち友達だよね」
「えっと、、ごめんなさい」
私はそう言って小走りでその場を離れることにした
梨奈さん、今はごめんなさい
「待って!吹、本当に大丈夫?
今日はずっと何か思いつめているような感じだったから、私心配なの!」
その言葉を聞いて、私は足を止める
私がなぜ梨奈さんのことを忘れてしまったのかはわからない
でも、梨奈さんはやさしい人だとわかった
私はそんな人にこんな態度をするのはダメだと思った
嘘でもいいから、やさしさにはやさしさで返してあげないといけないと思い、私は振り返る
「、、梨奈、ごめんね、、今日は、なんだか調子が悪くて、、私たち友達だから、とりあえず今日は、またね」




