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三題噺もどき4

シャワー

作者: 狐彪

三題噺もどき―ななひゃくろくじゅうなな。

 




 きゅ、と蛇口をひねる。

 勢いよく飛び出す水をよけながら、お湯が出るまで待つ。

 冷えた浴室の床は、水でさらに冷たくなっていく。

「……」

 端の方に寄せて置いた風呂椅子を、お行儀悪く足で寄せる。

 徐々に暖かくなるお湯を足の先にかけると、麻酔にでもかかったように痺れが広がっていく。じわじわと広がる熱は、少し熱すぎるくらいにあつい。

「……」

 それに合わせて、床も少しずつ暖かくなっていくが。

 端の方は変わらず冷たい。

 別に問題はないのだけど、なんとなくそこまでお湯をかけていく。あまり意味はないが。

「……」

 足先が徐々に暖かくなり、シャワーをあてる位置を、少しずつ上げていく。

 いきなりかけるとよくないらしいからな……この身でヒートショックなんて笑えないからな。なる事あるかどうかも分からないけれど。

「……」

 ホントは、浴槽にお湯をためて入りたいところではあったが、生憎風呂掃除をするのを忘れていたので、諦めた。

 それに、少し進めたい仕事もあるので、あまり長風呂は出来ない。明日してもいいのだけど、まぁ、それなりに急ぎで且つ量がある仕事なので、進めるときに進めておきたいのだ。

「……」

 風呂に入る時くらい仕事の事は忘れたいものだな……。

「……」

 風呂に浸かればそれなりの時間を要するが、シャワーだけだと烏の行水もいいところだからな。特にこだわりもないからなのだろうけど、普通どれくらいはいるものなのだろうか。

 やることと言えば、頭を洗って体も洗って、流すくらいだろう。

「……」

 冷たくなっていた風呂椅子にも、シャワーをかけて、気持ち温かくしておく。

 座ってしまえば気にならなくなるが、その前に冷たいとさすがに身が冷える。

 あれだ、冬のトイレとかと同じような感じだ。

 初めて座ったときは寿命が縮んだかと思ったな……縮む寿命もないが。

「……」

 軽く体を流しながら、頭も流していく。

 ジワジワと広がる温かさに混じって、液体が流れていく感覚が背中を伝っていく。

 冷えていたせいか、余計にその感覚が強く帰ってきて少しぞわりとしてしまった。

 お湯を浴びているのに鳥肌が立つとは思いもしなかったな。

「……」

 水にぬれて重くなった前髪をかき上げながら、視界を良好にする。

 とは言え、冷えた空気の中でお湯を使ったのだ。

 湯気で白くなり、多少は見づらい。

「……」

 備え付けの棚の上に置かれているシャンプーを手のひらに取り出す。

 毎度思うが、使っているシャンプーが黄色いので、目玉焼きの黄身みたいで面白いと思う。これでコンディショナーが白ければ、確実に狙っていそうだが、そんなことはないのでたまたまだろう。

 しかしこう、なんでシャンプーやコンディショナーってこんな色がついているんだろうか。

「……」

 まぁ、取りとめもないことを考えても意味もないので、さっさと風呂を済ませてしまおう。

 取り出したシャンプーで頭を洗いながら、仕事のことを考える。

 残りはアレとこれをして、追加であれもしておきたいし……あぁ、何か連絡が来ていたはずだ。それも確認しないといけない。

「……」

 出しっぱなしになっていたシャワーを頭にかけ、泡が目に入らないように目を閉じる。

 水と共に流れていく泡が、体を這う。

 流すたびに軽くなっているのか重くなっているのか……。

「……」

 もう一度髪をかき上げながら、今度はボディタオルを手に取る。

 軽く濡らした後に、その上にボディソープを取り出す、

 以前は固形石鹸を使ったりしていたのだけど、これの方が楽だしまぁ、肌にも良いだろうということでいつからか液体になっていた。

「……」

 わしゃわしゃと泡立て、適当に体を洗っていく。

 少し粗目のボディタオルを使っているから、肌に言いも何もない気がしてきたが、まぁ今更だ。それにそもそも気にするようなことでもない。基本的に勝手に回復する。肌なんて特に。内臓はまぁ、そう簡単には行かないが。

「……」

 全身を泡まみれにした後に、シャワーでまた流していく。

 ついでにボディタオルの泡も流し、綺麗にしたうえで元の場所に戻しておく。

 後は顔を軽く洗って、再度全身を流して。

「……ふぅ」

 さて、さっさと上がって、仕事を進めるとするか。





「……ご主人」

「ん……」

「まだ寝ないんですか」

「いや……もう寝る」














 お題:目玉焼き・麻酔・明日

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