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第8話「砲火」

前回からの、あらすじ。

転生バーン!、周囲との軋轢ドーン!、家出バーン!、試験ドーン!、合格バーン!、再会ドーン!、

衝撃ドーン!、辞令バーン!

以上!

 ハインツの訓示から一ヶ月後、

 第三等級魔境「テッラ・モルディス」

境界戦線にて。


 爆音と共に、砲弾が大気を切り裂く。

魔導刻印が蒼く煌めき、8.8cm魔導砲弾がオークジェネラルの周辺に弾着。

それを見届けるか、見届けないかの内に、第186砲兵小隊の面々は、次弾の装填を急いでいた。


 第77砲兵中隊の観測班により、弾着観測が行われると、暫くして、修正された座標が計算尺により算出され、無線を介して、アデリナ曹長により、砲兵陣地に告げられる。


 「第三分隊、左へ修正、8ミル。マイナス75、

ヴィルクザムカイツシーセン(効力射撃)!」


 次弾の装填が完了した第三分隊は、前線司令部の指示に従い、調整射撃を行う。

けたたましい砲声と共に、蒼く煌めいた砲弾が、オークジェネラルに弾着。

観測班が確認した内容が、再び、無線を介して砲兵陣地に伝えられる。

 それを確認した、アデリナ曹長は、声を張り上げる。


 「フォル・トレファー(直撃)!オークジェネラルに対して、命中を確認!」


 それを聞いたハインツは、即座に口を開く。


 「全分隊、射角及び方位を第三分隊に合わせろ!」


 直ぐに第三分隊に合わせて、第186砲兵小隊に所属する、全4門からなる8.8cm野戦魔導砲が、一斉にオークジェネラルに照準を合わせ、指揮官たるハインツの号令を待つ。

ハインツは口を開き、周囲の砲声に負けないように叫ぶ。


 「フォイヤーユーバーファル(全力射撃)!」


 オークジェネラルに、8.8cm魔導砲弾が次々と命中し、爆裂術式が作動、それと同時に、新式の貫徹術式が作動し、オークジェネラルの障壁を剥ぎ取る。

 オークジェネラルは、単体では脅威度が第四等級まで落ちる。

8.8cm野戦魔導砲4門の射撃には、とてもではないが耐えられない。

 最初に、ジェネラルの左足が吹き飛ぶ。

そのまま倒れ伏した所に、次弾が次々と弾着、上半身が吹き飛ぶと、オークジェネラルは絶命した。


 オークの群れの士気は崩壊し、第186小隊は、逃げ惑うオーク達に対して、分隊毎に分かれて射撃を開始、騎兵部隊も突撃し、この戦線の、一先ずの終結は明らかとなった。


 ハインツは、他の部隊と比べても、遜色無く砲撃を行う、第186砲兵小隊の面々を眺めつつ、これまでの苦労を思い出し、しばし、物思いにふけっていた。


 初めて小隊に配置されて以来、ハインツは、一ヶ月という短期間で、新兵同然の砲兵小隊を、しっかりとした砲兵部隊に練成しなければならないという、難問に直面していた。


 ハインツは、一先ず、隊員の一人一人と話をすることにした。

個室で、30分程度の話し合いであったが、思いの外話しは弾み、充実した時間を過ごす事で、個々人との連帯感が遥かに増した。


 更には、小隊の面々と信頼関係を築くことで、ハインツを中心とした、トップダウンでの指揮系統が、名実ともに完成。


 信頼関係を築くことが出来たハインツは、残りの時間を、1日10時間にも及ぶ、訓練に費やすことになる。


 結果として、紆余曲折ありつつも、アデリナ曹長とも円滑な関係を構築でき、その才能を如何無く発揮し始めたことで、部隊の運営や訓練が効率化され、無事に前線配備と相成ったのである。


 物思いにふけっていたハインツに対して、後ろから声がかかる。


 「ハインツ少尉、ご苦労であった。

貴官の献身と協力に感謝する。」


 そこに居たのは、にこやかに笑い、敬礼をしつつその場に立つ、ミハイル中尉の姿であった。

 ハインツは、特段慌てる様子もなく、即座に答礼し、口を開く。


 「ハッ、ありがとうございます。ミハイル中尉。

なにか、御用でしょうか?」


 ミハイルは、敬礼を解きつつ答える。


 「いや、何。この後、第77砲兵中隊の面々で宴会があってね。君も誘おうと、声を掛けたのだよ。」


 「いえ、私は、そういう席は苦手………ハァ、分かりましたよ。

是非、ご相伴に預からせて頂きます。

勿論、中尉の奢りですよね?」


 ハインツは、顔を顰めつつ、断ろうとするも、アデリナ曹長ら、小隊の面々の期待の眼差しに抗い切れず、ため息をつきつつ承諾し、意地悪気に微笑みつつ、問い掛ける。


 「勿論だ、幾らでも、飲んで食って良いぞ。

宴会は、『レイエン・オーパー』を貸し切って行う。

では、明日の14時頃に会おう。」


 ミハイル中尉は、顔色一つ変えずに頷き、笑いながら答えると、もう一度緩やかに敬礼し、戦場の泥濘の中を、堂々と歩き去っていった。


 ハインツは、もう一度ため息をつくと、小隊の面々に向けて振り返り、告げる。


 「諸君、そのままで聞いてくれ。

慈悲深きミハイル中尉が、我等が第77砲兵中隊の面々で、宴会を開くそうだ。

 喜べ、なんと、奢りだそうだ。何を飲んで食っても良い。

 場所は、『レイエン・オーパー』、明日の1350に現地に集合とする。


 ミハイル中尉の財布を干上がらせるぞ!」


 「「「フラァァァァ!!!」」」


 小隊の面々は歓喜し、雄叫びを挙げる。

そこには、嘗ての、自信無さげな新兵の姿は、何処にもなかった。


 そして、ハインツも又、自身の変化に驚いていた。

実際に戦場に出て、命を奪えば、何かが変わるのではないか、と。そう漠然と思っていたのだ。


 だが、実際はどうだったのだろうか?

何も変わらない。何も変わる事無く、平静を保っていられた。

部下たちも、普段と何一つ変わる様子が無い。


 更には、楽しげに宴会に向けた、雑談をする始末。

 ハインツは、自身に驚愕するとともに、困惑し、葛藤していた。


 このままで良いのだろうか。このまま、この世界に順応し、適応してしまえば、人として何か大事なものを失うのではないか。

 ハインツには、そう思えてならなかったのである。

本日も、ご読了頂きありがとうございます。初めましての方は初めまして。チャデンシスと申します。大体週一ペースで投稿しているので、よろしくお願いします。

一先ずの、実戦です。全く詳しくないので、所々に突っ込みどころがあるでしょうが、どうか、大目に見て頂きたくお願いします。

なので、ちょくちょく加筆修正することがあると思うので、そこら辺も含めて、よろしくお願いします。

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